短編フラッシュ8
夜桜
闇の夜に さくらが 開く
彼岸の彼方から
三日月のカーブから
老木の根元から
かつて ここに生きていたものたちが 集まってくる
わたしはさくらを見上げる
煙草のけむりは
行き場を知らぬ 真実のように 宙に舞う
いろんなことを のぞむよ
まちがったことも のぞむ
傷つけることも 仕方のないことと
やはり どこかで のぞむ
それも また 生きること と
死者たちが 笑った
生きることは 悦ぶことと 小さな子供が走るのも
生きることは 惑うことと わたしがさくらを 見上げるのも
すべてを 赦すと 死者たちが 笑った
こがゆき