極楽トンボの仕様書
そもそも≪極楽トンボ≫は、IQだけ高くて感覚と運動と共感性にほんの少しの不備のある≪人型アンドロイド≫の[幼年期]でした。しかし、≪ヤゴ≫と呼ばれていた[成長期]のまま変態せずに迎えてしまった[成熟期]には、一時、隠遁生活を余儀なくされておりました。が、どういうわけか、≪人型アンドロイド≫として[完全体]になり、日常生活に復帰いたしております。そして、その最終進化形態である[究極体]は、ワープ進化というウラ技を使って、[完全体]との間を行ったり来たりして暮らしております。
(注)進化の過程を整理します。
[幼年期]→[成長期]→[成熟期]→[完全体]⇔[究極体]
この≪人型アンドロイド≫は、その実体が≪極楽トンボ≫であるが故に、変わった特徴を持っています。以下に、その仕様を述べます。但し、その効果効能については、発見者を幸せにも不幸にもするということぐらいしか、分かっていません。尚、たいへん用心深いために、生息地は限られている反面、どツボで指をグルグル回すと容易に目を回すので、目撃者はかなりいると思われます。しかし、捕獲に成功したというウワサは、聞いたことがありません。(いや、その前に、誰も捕獲しようなどと思っていないでしょうけれど…。)
- こだわり・決まり事・予定が邪魔されない限り、とっても安定した生活が送れます。(そんなことはありえない!?)
- 部分的なものに注意が向きやすく、執着します。特に、好みの音・形・色・光さえ与えておけば、とっても幸せな気分になれます。
- 性能はバツグンなのに、容量のとっても小さいコンピューターを搭載しています。そのため、一度に出来る仕事量は限られています。
- 特定の話題にのみ反応し、くどくどと繰り返し喋り続けます。
- そのコンピューターは、2000年問題を待たずとも、たびたび誤作動を起こして電源が切れます。
- ファイルはすべてデジタル化されているので、現実的な場面においてストックは常に行方不明です。しかし、設置場所の条件が良く、適度に刺激されると自動的に再生されて喋り始め、止まらなくなってしまうことがよくあります。
- 人型を維持する為に人工的に作られた一部の思考回路は、最近ショートしてしまったので機能していません。また、本人にその気がないので、復旧の見通しはありません。
- 人間に関する観察能力は、大変優れているのですが、実行力がないので、たいへんぎこちない動きをしています。
- 運動機能が劣っている為に、輸送コストがたいへん高くつきます。
- 武器として、言葉を使うことがあります。
- だいたい、いつも・何かに怒っています。
- 本機は、同型のサブタイプとしては、もっとも数の少ない種類に属し、しかも失敗作です。しかし、同じサブタイプの成功例に、ヴィトゲンシュタインがいます。
- オイルの代わりに薬物を使用すると、進化が円滑に進みます。
- 人型でありながらアンドロイドなので、なかなか人と会話が出来ません。当たり障りのないことを言うのが最も難しい上に、めったに人と打ち解けないので、特定の個人との接触を好みます。
- 下手に甘えを許してしまうと、勘違いして親しくなりすぎ、つきまとわれます。ご注意下さい。
- 人に関するとりとめのない噂話には応じません。学術的・専門的な話題が得意で、現実味のない分析に終始する発言が目立ちます。使い様によっては、たいへん重宝されます。が、うっとうしがられることがほとんどです。
- 他人について話す時は、自分に対して好意的か悪意的かを論じています。その人についての情報をキャッチしたり、情報交換する能力のあるアンテナとスピーカーは備わっていません。
- 人としての務めは果たしていますが、人としての存在することをかたくなに拒み続けています。
- 他のアンドロイドたちの役に立てるかもしれないという思い込みが強く、猪突猛進してどんなことでもしてしまう傾向があります。しかし、その現実は、アンドロイドの存在そのものと同じく孤立していると言えるでしょう。
- 人型の外見から本体である≪極楽トンボ≫の姿を見破れる人は、限られています。その実態は、地球上の特定の場所でしか明らかにされていません。
- 色んな意味で、ある日突然、姿を消してしまう可能性があります。
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