よくある質問への杉山先生からの回答

(「静岡アスペの会」資料より。先生の了解を得て掲載します。)

小学校低学年

○学校の勉強についていけない。

まず、学校の成績のレベルについてきちんと把握することが肝要です。学校の教師は、成績が悪いということに対してびっくりするくらい平気です。行動上の問題が大きく扱われるのと好対照をなしております。どの科目がどの程度にできないのか、どこから教えて行けば良いのかをまず明確にしてください。小学校低学年の課題は、不可欠な学習の課題が大半です。このレベルで大きな遅れをとる場合には、通常学級にがくばらせることはあまり意味がありません。本人のカリキュラムを保証してくれる学習の形を選択するべきです。

○興味に執着し過ぎて、日常生活に影響を及ぼしている。どうしたらいいか。

一般に、興味の固執は非常に大切なことであるので大目に見ることが大事です。迷惑をかけないこと、危険でないこと、人手を要しないことであれば、本人にやらせていて良いのではないでしょうか。日常生活に影響を与えるほどの固執であれば、影響のない範囲で固執を活かす方法を考えるのが原則です。ゆめゆめ取り上げようなどと考えないことです。

○興味や、本人がやりたい事がなく、余暇が上手く使えない。

趣味は大切な課題です。課題として本人と一緒にやるところからはじめてください。ご両親がやってみたいものであれば何でも良いと思います。一人でこそこそやれるものが理想です。ただし、普通LDやアスペのお子さんたちは放っておいても自分でいろいろな趣味を作り出すものです。興味がないということは、今までの接し方を見直してみるべきなのではないでしょうか?

○パニック場面の納め方。

原則は、治るまで放っておくことです。治まって後働きかけをするようにしましょう。普通放っておくとパニックはひどくなります。15回ぐらい放っておく経験をつむと、それからパニックの治まりが良くなってきます。

 

小学校高学年

○社会で自立するために伸ばすべき面とやめさせるべき面は何か。

非常に常識的に考えていただいて結構です。社会的な行動を伸ばし、非社会的な行動を減らして行きましょう。それから、本人が得意とするところをぜひ伸ばすようにしてください。

○障害者手帳はとった方がいいのか。

普通、LDやアスペのお子さんには、障害者手帳はほしくてもくれません。

○興味がない事でも、やらなければならないと覚えさせるにはどうしたらいいか。

がんばってやらせることに尽きます。

○勉強についていくことが困難になり、興味もなくなってきたので、家庭ではどのように対処したらいいか。

小学校低学年と同じで、まず、学力の吟味が必要です。次に、それが小学校中学年の前か後かで違ってきます。いわゆる読み書きそろばんは、小学校4年生程度までに終える学習に含まれており、自立した社会生活を行う上で不可欠な学力となります。言い換えるとこのレベルまで公教育のうちに習得が必要なので、不足の場合には個人的な補いもしくは本人に合わせたカリキュラムの選択を要し、すでにこのレベルまで達しているのであるとすれば、成績は不良でもあまり慌てる必要はないということになります。

 

★中学生

○障害の告知について

私はきちんと告げるべきと考えております。己を知り、敵を知れば百戦危うからずの名言のようにも己を知ることこそが解決の第一歩と考えるからです。

○特異な行動をやめさせる方法。

どんな特異な行動なのかで変わってきますが…。一般的には、社会的に迷惑をかけない行動は大目に見て、社会的に迷惑になる行動はきちんと取り締まるということでしょうか。ペナルティーもかまわないと思っていますが、ペナルティーとは、特権を取り上げるのです。生存権に抵触するもの(食事を抜くなど)はいけません。

○適切な対人関係を築かせるには。

まず、水平の立場で付き合える友人を作ることです。同じ障害を持った子どもたちの集まりが必要なのは、そのためです。

○ファンタジーはどこまで許したらいいか。

ほとんど放置してかまわないと思います。中学生を過ぎてまで没頭している例はアスペではほとんどありません。

○物事への取り掛かりと切り替えをスムーズにさせるには。

予告をきちんとし、スケジュールを与えて見通しを与えることです。この際に、二つのことを一度に処理する内容を含まないこと。あくまでもラインを一つにすることがコツです。

○ぶっそうな言葉への対応について。

美しい言葉を使おう、と奨励してください。

○現実を受け入れずに意地を張っているときにはどのように接したらいいのか。

原則的には放置して良いと思いますが。

○いじめを受けていることについて。

いじめはきちんと保護を計る必要があります。担任→主任→教頭→校長→教育委員会と、埒があかないときには事を構える覚悟をしてください。

証拠をきちんと残すこと。写真・メモ・診断書など。

本人がトラブルを起こすことはいじめを受けても良いことになりません。特に、自分も我慢をしている子が、「なぜあいつだけ勝手なことを許されるのだ」と、ことごとく足を引っ張りにくるという現象が、中学高校では良くあります。このような天敵には、担任を通して介入をお願いする必要があります。

○勉強が難しくなってきた時、無理をさせない方がいいのか。

中学生であれば苦手の克服はあまり課題ではありません。むしろ、得意なことをしっかり伸ばすように発想を変えてください。

○こだわりは諦めるしかないのか。

そうです。しかし、人を巻き込んだこだわりにはきちんと対決すること。

○余暇を有意義に過ごせないことについて。

どんな無意味に思えることでも、大切にする姿勢が必要です。


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