「Ｎさんの手記」より
99．３．８ 私のいじめ体験
最近、自分もＡＳなのでは？って思ったりします。だって、友達から変わっているってよく言われました。でも自分が変わっていることがイヤだって事はなかったです。だってこれが自分なんだもの！ 確かに他の女の子のように群れることが嫌いだったし、割と冷たく見られたりということはありました。一応周囲の人達に合わせることを学習したので、ほんとはイヤだけど付き合っておくかみたいな‥。小学校の時と中学の時にいじめにあったので、いやって言う程学習しました。
小学、中学の９年間は良い事がなかった。自分にとってトラウマですね。思い出すと苦しいです。頭の中にその時の事が鮮やかに再生されます。「やめて！！！」って耳を塞ぎたくなる衝動が心の中から噴出します。自分が悪いところももちろんあったんでしょうけどね。でも‥‥。算数が出来なくって、判らなくって、先生に「なんでできないの？」と頭をたたかれた。だって判らないんだもの。本当に自分でも何故だか判らないけど‥‥。よくグループの男子に「お前のせいで遊びに行けない、ばかじゃね！」と言われたりしました。
実は私は未熟児だったのですが小１の時に自分の生い立ちを調べてくるという宿題がでて発表しました。その時は良かったのですが、小１から小６まで同じクラスだった男子がいて、5年の時か６年の時にいいふらされいじめられました。「お前は未熟児！！ じゅくじゅく人」って‥。性格は暗いほうではなかったけど、暗くなりました。友達はいたけど、でも辛くて居場所がなくて今だったら登校拒否していたかも。親が熱もないのに学校休むなんていけない！って。親も怖いし、仕方なく行っていた。一番いやだったのはグループ分けと修学旅行でした。まあ色々ありました。でも、高校になったら環境が変わったので、自分も変わらなければと思った次第です。
今でも、大人数で群れるのが嫌いなので井戸端会議に参加しません。（用事のある時だけは参加しますが） これからはびくびくせずに堂々としていくことにします。そうですよね？ 引け目を感じていたけど、そんなこと感じなくっていいんですよね？
99．３．９ みんな違う人間なのに‥。
書くことで自分の今までの色々な思いを吐露することは自分自身にとっての癒しだと思います。この気持ちを判ってほしい！ 誰でもいい「辛かったんだね。」って一言でいいから言ってもらいたいんです。自分の親でさえ「辛い思いをさせたね。辛かったんだね。」って言ってもらっていないんです。今現在。「昔は‥‥だったから。」みたいに言われるだけです。
確かに私は妊娠７箇月で生まれました。それはとても心配で不安で大変だったと思います。そして私を心配するあまり私をかばった。かばいすぎて、私は重荷だった。小学校の時にもう重荷だからやめてほしいみたいなことを母に言いました。（泣きながら殆ど支離滅裂状態で話したのでよく覚えていません。）母はショックを受けたようです。二人で泣きながら話をしたことを覚えています。それから少し距離をおいて接してくれるようになりましたが‥‥。この件については、よかったのかな？ って思っています。
私が一番今でも許せないのは、未熟児と言う意味を正しく皆に話さなかった先生です。先生がちゃんと話してくれていればこんなこと言われなかったって今でも思っています。（そんなに劣った存在になってしまうの？ 未熟児というだけで！）それからいじめた人達です。子供は自分たちと違う異質なものに対して攻撃します。皆、同じな訳ないのにみんな違う個々の人間なのに。同じだと何故かほっとする。ちょっとでもその枠からはみ出したりすると「変な人」とか言う。なにが普通なんだろう？ なにが基準？って最近思います。
私自身も型にはまるのが嫌い。好きなことはめちゃくちゃ集中するけれど、嫌いなことに関してはもう絶対にイヤ！っていう人だったので、波がすごくあったみたい。当時、習字をならっていたのですが習字の先生に字に表れるって言われた（気乗りしないときと乗っている時の差がすごい判るって）嫌いでない習字でさえもこんなです。嫌いな算数なんかもう最初つまずいたのでずっーと判らなかったし、本人なりにやんなきゃって思っているんだけど‥‥。でも説明されても本当に理解できなかったのは事実です。数学がだめなことはいまでも自分にとってコンプレックスです。
−（中略）−
そうそうこの間、私もＡＳなのかな？ ＬＤだったりするかもって母に言ったら「学校の就学時検診で何も言われなかったし、ほんとだったら３月に生まれる筈だったんだから‥。理解力に差があっても不思議じゃない。」って。でも、３月生まれの人は皆が皆理解力が劣っているってことはないと思うんだけどね。これは３月に生まれたからとかそういう問題ではないような気がします。ひとそれぞれですよね‥。
しかし、何故私の母は３月生まれに対して、「３月生まれだからしょうがない」って言うのでしょう。たしかに３月生まれの人は４月生まれの人と比べて一才近くの年齢差がある訳ですから、小さい時は体力等に差があるというのは分かるんだけど、３月生まれでも頭がいい人はいますよね？ いくら３月に生まれても（といっても私の場合、実際は３ヶ月早く生まれたので１２月に生まれたのに）、育児雑誌なんかに書いてあるのを以前読んだのですが、学校に入学するころには十分に挽回できるって書いてありました。
99．３．１８ 今、「変光星」を読んでいます。
今、やっと数日前に手に入れた「変光星」を読んでいます。読んでいて涙が出ます。だって自分に重なってくるんです。いじめの内容が…。
悪意も故意にやった訳でもない事が相手にしてみたら「わざとした！」「いじわるされた！」と思ったらしく、急に仲良くしていた友人が無視しだしたのです。「どうしたの？」と聞いても「自分の胸に手を当てて考えてみなさいよ！！！」と言われて、私は何のことだか全然分からなくて「全然分からないんだけど…。」って言ったら、「ＯＯさんにしたことを思い出しなさいよ！」って言われてやっと私も分かった。
中学1年生のスキー教室の時の事を相手は非常に怒っているようなんです。スキー板とストックを持ってバスに乗り込むときに、ちょうど前にいた同じクラスだった子の襟あしの所に、スキー板とストックに付いていた雪が入ってしまって、それも、一度だけでなく2度か3度くらい。でも、私はわざとした訳でも意地悪した訳でもなかったんです。スキー板とストックがずり落ちそうになるので持ちなおしたら、たまたま入ってしまって、その度に「ごめんなさい！」って謝りました。けれどその子は許してくれていなかった。私に直接「あの時、わざとやったんでしょ！」って言ってくれればいいのに、そうではなく皆に言いふらしたんだと思います。（仲良くしていた友人に「ＯＯさんに聞いたけど、ひどい事するのね！」って言われたから‥。私は分からなかったんです。ちゃんと謝ったし、許してくれているものと思っていたのに、直接でなく間接的にああいう形で私にしてきた彼女の行動が分からなかったんです。本人にどう説明しても完全に無視なんです。もう何を言っても言い訳だって感じで、「聞く耳持たないわ！」って感じでした。私も「もう何を言っても駄目なんだ。」と思い、それ以上は彼女には言いませんでした。
それからクラスの男子とほとんどの女子に無視されだしました。−（中略）−担任に相談したら、「いじめられるお前にも問題がある」と言われて、特にその時に私を目のかたきにしていた男子と担任を交えて、お互いの思っている事を言い合って、一応、その時は決着という感じになって仲直りをしましたが、あんまり状況が変わらなかったかな？ その男子は、私が自慢ばかりしているとか言っていた。私はそんなつもりはないのにそう思われてしまったようです。他の人だって自分の自慢したりしているじゃない！、なのに目のかたきにされる差は何なんだろう？ と思いました。それから私は、自分で、自慢に思われてしまうかもしれない事は言わない事にしました。（自分では別に自慢しているつもりなんてさらさらないんですけどね。相手からすると「自慢！」って思うみたい。）その方が無難に過ごす事が出来るって。
今から思うと、相手の気持ちというものが分からなかった所があったのかな？ 理解が足りなかったのかな？ と思います。−（中略）−昔に比べれば随分と普通はこうなんだ、こういう行動をするんだ！ という勉強をさせてもらったから、今があるのかな？ って思えてきました。嫌いな自分も好きな自分もいて、過去の自分もいて、みんな私。今の自分がある。
９９．４．２７ 私は人をいじめて喜ぶという気持ちが分からない。
［アスペルガー症候群と診断を受けている]息子も小学生になり、少しほっとしています。−（中略）−以前だったら幼稚園での出来事は話してくれませんでしたけど、最近は色々話してくれます。こういう風に話してくれるようになったのも、理解できない、分からないと言う事が私にも理解できたからです。私も、理解できなくて学校の勉強は本当に苦労したから、分からないものは本当に分からないし、何故分からないんだって言われても分からないんだからしょうがない。怠けているからではなくて、自分なりに努力しているのに分からないと言うのはとても辛い事なんだって、私自身が理解できたからです。私は身の回りの自分のやるべき事はちゃんとできていました（不器用でしたが、それなりに）。人に対して多少の配慮のなさというか抜けているとこはあったけど、勉強面で苦労しました。そんな自分の過去を置き換えてあげればよかったんですよね。そう考えてあげれば容易に分かる事だったんです。息子の辛さが。何故分かってあげれなかったんだろう。
自分の過去を直視して自分も苦しかった。けれど最近軽くなったんです。息子を担当している心理の先生に私の過去を知ってほしかったから手紙を書きました。それから朝日新聞のＨＰに投稿したり。自分の出生の事でいじめにあって体験した様々な思い（差別された事、侮辱を受けた辛さや悔しさ）を相談できる場所があったらどんなにかよかったかと、過去を振り返ると思う。話しを聞いてくれる場所が必要だと言う事や母親だけでなく子のケアもとても大切であること。これは小学校高学年になったら特に気をつけてあげて欲しい事なんですが心配しすぎて必要以上に手を出さない事。とか、自分の経験が少しでも多くの人に読んでもらって、悩んでいる人達の力になったらいいなと思った。
きっと息子に障害がなかったら、きっとずっと自分の過去を直視できずにいたと思う。それを逃げずにちゃんと見つめられたのは息子のお陰だし、今まで見えなかったものが見えた。
そうそうＨＰを見ましたよ！ 印象的だったのは自分がされたことは人にしないという事です。こんな単純な事さえできずにいまだに嫁いびりとか会社でいじめがある。大人の社会が変わらなければ子供も又変わりません。この循環を断たなければ変わらないと思う。何故自分が嫌な事を人にするんだろう。もっと大人にならなければいけないのでは？ 年はとっていても中身は子供ではないですか！ これでは子供は変わりませんよね。私もずっと思っていました。何故かな？ 私は人をいじめて喜ぶという気持ちがわからない。何故？ そんなに嬉しい？ 相手の気持ち考えたらできないよ。自分がされたら嫌だし、いじめられたらどんなに辛いか知っているからできません。でもいじめて喜んで人の不幸を喜ぶ。なんて醜いんだろう。
−（中略）−
少しだけど息子に自分は小学校の時にいじめられてたとか勉強が分からなくて大変苦労した事を話しました。このあいだ、ＷＯＲＤで色々な過去の思い出を書き連ねていたら、息子が側に来て読んでいて「お母さん、死んじゃったらいなくなっちゃうんだよ！ 死のうと思ったの？」って言った。「そうだよ。でも、死ねなかったの。いじめられてねとっても辛かったの。でも死ななかったから、今ここにいるんだよ。」って息子と喋った。息子はどう感じたのかな。少しでも何かを感じてくれたらいいんだけれど。全てを分かれなんて言わないけれど、一つ一つの積み重ねが大事。何でもそうですよね。
99．４．２８ 父のこと。
私もやっと自分自身が落ち着いてきました。この間、療養センターの心理の先生から電話をもらいました。小学校に入ってからの息子の様子を聞きたいと言う事で先週行ってきました。先生も心配していたようで「お母さんが元気そうなので、安心しました。」と言っていました。先生に今までの自分の過去を知ってもらってよかったと思います。
それから、最近父との電話で自分の過去が清算されていなかったことを話しました。父は私が女だからどう扱ったらいいか分からなかったから、私のことは母に任せていたと言っていました。私には上に兄がいるんですが、兄の事は同性と言う事もあってか男の子は自分が！と思っていたみたいで面談に行ったり、盗みの疑いをかけられた時も、学校へ乗りこんで行ったりしたんです。
でも私が「いじめられている時、知っている筈なのに、学校へ来てくれたことなんてなかったじゃない！ 私の事なんてどうでもいいんだって思ったよ。」と言いました。父は「そんなことはない！ 心配していた。心配しない訳ないだろ！」と言っていました。でも「子供からしたらそれは親の気持ちであって、親の気持ちなんてわからないんだよ。」「自分がそうされたらどんな気持ち？ 兄にはやって、私にはしてくれなかった。分かる？ 辛かった。だからずっと苦しんでたんだって、息子の事でも悩んだけど、それだけじゃなくて自分の過去でも悩んだんだ。｣って事を、途中何度も話しを遮られても、「最後まで聞かなきゃ、分からないでしょ！」と話しつづけました。そしてやっと「そんなに悩んでたとは思っていなかった。悪かった。」って言ってくれました。私はその言葉をずっと待っていたんだと思う。また、１つ心が軽くなった。
−（中略）−
ＮＨＫラジオで教育相談をやっていて、いつも聴いていますが、いつも思うのは「何故子供の事をもっと理解してあげないのか？」という事です。自分だって子供だった筈です。それを忘れています。親の顔で接する前に、子供だった自分にノックしてみるべきです。親に言われて嫌だった言葉とか態度とか、クラスメートに意地悪されたり多かれ少なかれある筈です。その時どんな気持ちだったとか、親はどう接してくれたか、その時親に対してどんな気持ちを持ったか。思い出してほしいです。そして親にされて嫌だったことはもうそこで断ち切るべきです。自分の子供にしないことです。最近そう思えて仕方ありません。嫁いびりじゃないけど、自分がされて嫌なことを人に繰り返しして何が生まれるのかな。なんにも生まれませんよね。（以下略）