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アスペルガー症候群とその家族についてのFAQ。
−よく聞かれる質問への回答事例集(試案)−
【よく聞かれる質問:全般について】
アスペルガー症候群とは?
- アスペルガー症候群は、自閉症グループの一つです。
- 言葉の遅れはありませんが、自閉症と同様の困難を持っています。
- 100〜200人に一人ぐらいいると言われている、発達障害です。
- 特に珍しい障害ではなく、ごく普通に生活している人や社会に貢献して活躍している人もいます。
- しかし、広範囲にわたる発達上の困難を抱えていることが多いため、特別な支援を必要としている人がたくさんます。
- 最近になって知られるようになった障害なので、医療・教育・福祉といった関連する各分野での支援体制が整っていません。
自閉症と共通して見られる特徴は?
- 物事の一部分に注意が集中しやすいので、全体の状況をつかむことに困難があります。
- 一度に一つのことしかできないことが、よくあります。
- 最初に覚えたことを、なかなか変更できません。
- パターン化した行動を取ることが、よくあります。
- 融通が利かないように、見えるかもしれません。
- 人とのかかわり方に、大きな特徴があります。
- 独特な言葉遣いや、しゃべり方をします。
- できることとできないことの差が、激しいことがよくあります。
- 過去の出来事を突然思い出して(フラッシュバック)、その場に全く関係のないことを言い出したりすることがあります。
【よく聞かれる質問:具体的なことについて】
人の気持ちが分からないと言われていますが…。
- 他人の表情やしぐさから感情を読み取ることが苦手で、他人が何をしようとしているのかわからないという困難を持っています。
- また、自分の感情を顔の表情やしぐさで表すことが苦手なので、他人の気持ちにうまくこたえられないことがあります。
- かかわり方が一方的で、人の気持ちを無視しているように見えることがあります。
- 他人に言われた通りのことしかできずに、気が利かないと言われることがあります。
- 自分の考えを強く持っているので、強い信念の持ち主と賞賛されることもあります。しかし、他人の好意にこたえないと思われてしまうこともあります。
人嫌いで、孤独を愛する人のことを言うのでしょうか?
- 自分の気持ちを話そうとしなかったり、1人で離れていることがありますが、人嫌いではありません。
- 逆に、積極的に人に話しかけて質問攻めにする子どももいますし、いつもおとなしく人の後についていく子どももいます。
- 顔の表情があまり変わらず、身振りなどで気持ちを表現することが少ないため、人がいても喜んでいないように見えることがあります。
- 触覚の過敏(後述)があって、人に触られたり抱きしめられることに苦痛を感じることがあります。しかし、人に触られるのは嫌いなのに、自分から人を触るのは好きで、ベタベタと触ってくる子どももいます。
- 一対一でなら人とかかわることができるのに、たくさんの人と同時にかかわることができない子どももいます。(一見すると、何の問題もなく複数の人と接しているようですが、よく見ると一対一のかかわりしか持っていないことがよくあります。)
- 信頼の置ける人としか話さなかったり、特定の人の言う事しか聞かなかったりすることもありますが、人懐っこくて、初対面の人なのに旧知の仲のように振る舞うこともあります。
- 他人の気持ちや人情にこたえることが苦手なのは成人後も変わりませんが、人とのかかわりや友人関係を、主に仕事や共通の趣味を通じて持っている人は数多くいます。(直接対面する形での人づきあいが苦手で、インターネットなどの通信機器を媒介した方が楽という人も多いようです。)
コミュニケーションが不足していると聞きましたが…。
- 言葉の遅れはなく、むしろおしゃべりなことがありますが、やりとりのある会話をすることができないという困難を持っています。
- 言葉はよく知っているのにコミュニケーションになっていないのは、生まれ持った障害によるものです。
- 親が話を聞いてくれないのでしゃべらなくなったとか、寂しくてよその人に話しかけているのではありません。
- 親子のコミュニケーションが不足しているので、他人と会話する方法を学習していないのでもありません。
- 気持ちを表すために人に話すのではなく、知識を並べているだけのことがよくあります。
ちょっとからかっただけなのに、本気にして怒りました。なぜでしょうか?
- 人づきあいの経験が足りなくて、傷つきやすいのではありません。言葉(主に、言語の使用法)の理解の問題と考えてください。
- 言われたことを真に受けてしまったり、言葉の表面的な意味しか分からないことがあります。からかいや冗談は、禁物です。
- 「ちょっとしたことで泣いたり怒ったりして大袈裟だ!」と思われてしまうかもしれませんが、そのような時は、字面の意味と実際の意味との違いや、その言葉の持っている含み(言外の意味)を、きちんと説明してあげてください。(「そんなつもりで言ったんじゃないのに。」と言ってもわかりません。)
- 独特の感性を持っているので、普通ならなんでもないと思うようなことに怒ってしまうこともあります。しかし、本人なりの理由が必ずあります。そのような時は、何に対して・どうして怒ったのか聞いてみてください。(もし、本人が答えられないようでしたら、家族の人に聞いてください。)
- ささいなことに腹を立てていると思われるかもしれませんが、本人にとっては重大なことです。頭から否定するようなことはしないようにお願いします。
注意したのに聞いてくれません。どうすればいいのでしょうか?
- 具体的に指示しないと、分からないことがあります。(例えば、「列に並んでください」と言うのではなく、「○○さんと△△さんの間に入ってください」というように。)
- 日常的な何でもない表現の方が分かりにくく、難しい言葉(専門用語など)や標語などを用いて指示した方がよく分かることがあります。(例えば、「電車が来る」よりも「電車が到着する」というように。)
- 物知りでよくしゃべる割には、言葉の意味がよく分かっていないことがあります。
- 自分に向かって話しかけていることが、分からないことがあります。その場合は、話しかける前に合図をしたり、気を引いてから話すようにすると良いでしょう。
- 耳から聞く、「聞き言葉」の意味が伝わりにくい子どもでは、絵や文字で指示すると良いでしょう。
- 周囲の状況がよく分かっていないために、注意された内容が理解できないことがあります。本人がどこまで理解しているか確認しながら、丁寧に状況の説明をすれば分かることも多いものです。
- 怒鳴り声や甲高い声、抑揚のある話し方、ちょっと変わったイントネーションをしていたりすると、言葉の「音」にとらわれて内容が頭に入っていかないことがあります。
- 自分独自のルールを持っている子どもでは、周囲の状況に合わせて行動を変えられないことがあります。はじめから無理やり変えようとせずに、周囲の人たちの方が合わせるようにしながら、徐々にいろいろな場面に対応できるようにするための専門的なトレーニングする必要があることもあります。
友だちがいないのは、家に閉じこもっているからでしょうか?
- 家に閉じこもって1人遊びばかりしていたり、ゲームばかりしているから、友だちができないのではありません。
- 適切なやり方で人とかかわれない、やりとりのある会話ができないという困難を持っていることが多くあります。そのようなケースでは、本人が不利益を被らないように、人とかかわるための専門的なトレーニング(ソーシャルスキルトレーニング)などを行う必要があるでしょう。
- 適切な対人関係を持つための機会を増やすことも大切ですが、やみくもに同年代の子どもと交友させることにも、問題があります。いじめられたり、本人が自信をなくしてしまう恐れがあるからです。
- 集団行動に向いておらず、個別指導を主にした方が良いケースもあります。
- 集団活動ができる子どもでも、仲介役の人(大人・子ども)をつけて保護しながら、時間をかけ、様々な場面での人とのかかわり方を教える必要のある子どももいます。
- あまり一般的でないものに強い興味関心を持っている場合は、気の合う(共通の話題がある)友人を、意識して探す必要があります。
おかしなことをしているのに、なぜ親は叱らないのでしょうか?
- アスペルガー症候群の子どもにも、自閉症と同様のこだわり行動があり、奇妙なことをしているように見えることがあります。
- こだわり行動にもいろいろあり、本人の精神的な安定のために必要な行動であるものもあります。
- しかし、社会的に不適切なものに関しては、社会的に妥当な行動(他人に迷惑をかけない・他人を巻き込まない・TPOをわきまえた行動)に置き換えていく必要があります。
人と目を合わせなかったり、へんな目つきをすることがあるのは、どうしてでしょうか?
- 他人と目を合わさないのは、自閉症によく見られる特徴の一つです。
- 自閉症児には、自閉症特有の目つきがあったり、何かをじっと見つめるといった自閉的視行動をすることが、よくあります。
- 相手の目を見て話さないのは、自分に話しかけたり何かを要求してかかわってくる他人の意図が分からず、どう答え・どう振る舞って良いか分からないという困難によることが多くあります。
- 特に、本人に対処し切れない過剰な要求を多くされ続けると、どうしていいかわからない不安や、できないことを要求される恐怖が強くなり、意識して視線をそらすようになる傾向が強くなります。
- 「人の目を見て話しなさい」と指導すると、逆に相手をにらみつけるようになってしまうこともあります。自閉症の特徴を踏まえた上で、ソーシャルスキルの一つとして、失礼のないように相手の方を見るように指導します。
ちょっとした音で大騒ぎします。我慢が足りないのでは?
- 我慢が足りないのではなく、音に敏感なのです。聴覚の過敏は、自閉症に伴って非常によく見られるものです。
- このように、特定の感覚(視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚・前庭覚)が過敏だったり、鈍感だったりすることが、よくあります。神経学的なものなので、我慢させると強いストレスになります。
- 成長と共に穏やかになっていくこともあるし、状況(いつ・どのような時に起こるか)が分かれば過剰な反応をしなくなることもあります。
- 個人差が大きいので、一人一人個別に把握しておく必要があります。
情緒不安定に見えるのですが…。
- 「思った通りに進行しなかった」「思ったような結果にならなかった」という予定外のことに対応できないのは、よくみられます。
- パニック状態に陥った時は、本人自身もどうしていいかわからないものです。
- まずは、その場から離し、落ち着くのを待ちます。(パニック状態の時に話しかけたり、無理に押さえつけようとすると、逆効果になります。)
- 本人自身もどうしていいか分からず不安なのですから、本人が落ち着いたら、なるべく間をおかずに、本人の不安を解消するための説明を、簡潔に行います。(時間が長く経ってしまった後では、何のことを言われているのか分かりません。また、くどくどと説明すると効果が半減します。)
- 社会的な学習の一環として「いつもいつも予定通りに事が運ぶとは限らない」と事前に教えたり、「我慢できたこと」を誉めると同時に、混乱した際に行動をコントロールできるように粘り強く指導する必要もあります。
時々、人をたたいたりするのは、どうしてでしょうか?
- 他人を攻撃する意図のない、反射的な行動であることがほとんどです。
- 視覚的な刺激(本人にとって不快なものが見えた)や触覚的な刺激(本人にとって不快な方法で触られた、または、人が近づいてきた)への過敏があるケースでは、それらの刺激にに対してとっさに反応して、結果として人をたたいてしまうことがあります。
- パニックや癇癪を起こしやすいケースでは、その際に他害行為をしてしまうことがあります。
- 周囲の人々の方が恐くなってしまうかもしれませんが、本人自身が混乱していることの現われです。
- 本人の負担をなるべく少なくするように環境を調整することで、問題となる行動を減らしていくことができます。
- 自分のやった行動に対して謝罪することも、必要なソーシャルスキルの一つです。しかし、単に「ごめんなさい」を言わせることを目的にするのではなく、前項のような対応やトレーニングを行う必要があります。
だらしないので、厳しく指導したいのですが…。
- 「はじめ」と「おわり」がよくわからないために、けじめがついていないように見えることがあります。今から何があり・何をすればいいのか予め告げておくとともに、その場では「はじめ」と「おわり」の合図をしっかりと出すようにすると良いでしょう。
- 空間的な配置や物事の順序がよく分からないために、整理整頓ができず乱雑に見える子どももいます。物の形を分けて置き場所を決めておいたり、準備から片づけまでの手順を紙に書いて示したりする必要があることがあります。(逆に、いつもきちんとしていて、ちょっとでも動かしたり変えたりすると怒る子どももいます。)
- いつも服の端を握っていたり、だらしない服の着方をしていることがあります。多くは、感覚(触覚)的なものですので、やみくもに叱らないようにしてください。
- 自閉症の特性を無視して厳しくしても、ほとんど意味がありません。無理やり抑えつけると、問題行動をひどくしてしまうことがあります。
- これらの様子から、他の子どもからいじめられることがあります。いじめを受けると、強い心的外傷になりますので、他の子どもへの監督と指導が必要なところです。
運動ができないのは、努力をさせなかったからでしょうか?
- 運動ができないのは、発達性協調運動障害という障害があるからです。
- 通常なら励ましになるはずの「がんばれ」という声援が、負担になってしまうことがあります。
- 本人の努力だけでは、どうしようもないものです。課題のレベルを下げるとともに、発達段階に合わせた指導をする必要があります。
親が過保護で、甘やかしすぎているのではないでしょうか?
- 発達の遅れがあって庇護的にならざるを得ないという特殊事情があるために、発達障害児にかかわったことのない人たちから、過保護・過干渉と見られてしまうことがあります。
- 他人とどのようにかかわったら良いか分からず、不安を感じることの多い自閉症児は、自分を守ってくれる人に依存してしまう傾向を持っていることもあります。
- 周囲の状況が分からない中で、どのように振る舞って良いか分からないという本人の強い不安を受け留めながら、自発性を育てる必要があります。
親が、厳しすぎるのではないでしょうか?
- アスペルガー症候群の子どもは、言葉の遅れがなく、物知りで賢そうに見えるため、障害があることに気付かれないことが多いものです。
- しかし、たいていの親は、我が子の抱えている困難に気づき、将来困らないようにしなければと思っているものです。
- 発達障害への無知から、「ちょっと変わった子を、安心して学校(幼稚園)や社会に送り出せない家族」と「情緒や行動の問題は、家庭環境としつけに原因があると考える社会の認識」の悪循環を断ち切らない限り、問題は解決できないと考えます。
問題がなくなって、だいぶ落ち着いてきました。治ったのでしょうか?
- 生まれつきのものなので、治るということはありません。
- 本人と周囲の人たちの双方が協力することで、障害と上手に付き合っていくことができます。
- 発達障害を持っていても、その状態は対応や環境によって大きく左右されます。
- 見かけ上の問題がなくなると放置されがちになりますが、本当は継続した支援が必要です。(後になって、他の様々な病気となって現われたり、適応障害を起こすことがあります。)
- 教育的な対応をするだけでなく、医学的診断が必要なところです。
【まとめと注意事項】
- 一見、全く普通に見えますが、上記のような特別な支援を必要としています。
- 就学・就労につまずいているケースでは、特に、早急な支援と理解が必要です。
ポイントを切り替えながら、たくさんのレールを乗り継いで移動していく電車の運転手を目指そう!
- 経験を積む事で柔軟性が高まっていくことを期待するよりも、知識と選択肢を増やしていくと考えて接していただければと思います。
※アスペルガー症候群の人たちは、個人差が非常に大きいことも特徴の一つです。
※ここに書かれていることは、比較的よくあることとその対処法です。
※実際には、一人一人の症状を個別に把握して対応する必要があります。
<2003.10.10:ペンギンくらぶ作成(文責:落合)>
http://www2u.biglobe.ne.jp/~pengin-c/index.htm
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