集団行動ができないADHD児への指導例。

2001.7.18

小学校一年時の、私の次男に対する指導の実践報告です。といっても、現在小学校二年生なので、まだまだ終わりではありません。必要に応じて、加筆します。 

これらの対応が出来たのは、ひとえにK小学校の教職員の理解と協力の賜です。この場を借りて、感謝いたします。   

ADHD児が集団行動できないのは、「不注意」症状と不可分です。ただ、ここに今から書くのは、DSM−4の「注意欠陥多動性障害」の診断基準で、「多動性−衝動性」の症状とされている項目に関することです。

[多動性] a.しばしば手足をそわそわと動かし、またはいすの上でもじもじする。
b.しばしば教室や、その他、座っていることを要求される状況で席を離れる。
c.しばしば、不適切な状況で、余計に走り回ったり高い所へ上ったりする。
d.しばしば静かに遊んだり余暇活動につくことができない。
e.しばしば“じっとしていない”またはまるで“エンジンで動かされるように”行動する。
f .しばしばしゃべりすぎる。
[衝動性] g.しばしば質問が終わる前にだし抜けに答えてしまう。
h.しばしば順番を待つことが困難である。
i .しばしば他人を妨害し、邪魔する(例えば、会話やゲームに干渉する)。

ADHD児にもいろいろあるので、まず次男のプロフィールをざっと説明します。

幼児期に見られた特徴。


小学校一年時の様子。

本児の様子 原因 対処法
登校班に入らない。 列に入れない。 一番最後にしてもらう。離れたところを歩いても、ついて行っていればよいことにしてもらう。
教室に入らず、一日中職員室にいる。 授業内容が分からない。
  1. 私が本人と交渉して、「教室前の廊下で、お絵かき」ならばいいということになった。早速、担任の先生が廊下に机と椅子を置いてくれたので、しばらくそこにいて絵を書いていた。
  2. その絵がオモシロイということで、一年生の子どもたちが集まって来たのをきっかけに、教室に入れるようになった。
  3. 始めは、いつでも出られるようにとの配慮から、廊下の近くの席にしてくれた。教室を飛び出さなくなってからは、先生のまん前の席にして、始終監視できるようにした。
  4. 一年時の目標を、「教室内にいること」「他の児童の妨害をしない」に定め、授業についていくことを強要しなかった。
人がたくさんいる。
ちょっとしたことで、すぐけんかする。 「注意」の障害の為に、人の動きに気づかない。 本人に、「注意」の障害のために気づいていないけれど、人の動線の中に入っていっていることを教える。
自分自身が、常に動いているので、知らないうちに他児にぶつかってしまう。 ほとんどの原因は自分が作っていて、それに対して他児が反応していることが分からず、自分が一方的に被害に遭っているように勘違いして怒っていたので、そのことを教える。
授業中、先生の言った事に逐一反応する。 表面的な「言葉の音遊び」をしてしまう。 先生が、あっさりと無視。要所要所では、黙るように指示。
他児の給食袋のヒモを切ってしまった。 ヒモを探していた時に、たまたま目についたので、瞬間的に切ってしまった。 このような無意識の内の「衝動的な行動」をして、本人が気づいた時には取り返しがつかなくなっていたことは、しょっちゅうあった。この時は、先生が相手の児童に、「悪気のないこと」を告げたら納得してくれた。(備品のヒモで、応急処置もしてくれた。)
授業に参加せず、工作ばかりしている。 授業内容が分からない。 人に迷惑をかけたり、授業を妨害しなければ良いことにする。
やりたいと思ったら、我慢できない。

これらのことができたのは、ひとえに、担任の先生がクラス全体に「次男が"こういう子"であること」と、「特別の課題があって"それをできればいい"こと」を周知徹底させてくれたことによります。たいへん、感謝しています。

また、学習の方は、「読字障害」のためのステップ学習を家庭でやりました。

  1. 市販の幼児用教材〜小学校一年生向けの問題集を、目次順ではなく「もじ」→「ことば」→「文」ごとに、本人の到達度に合わせて利用。
  2. 曲線が多く識別しにくい「ひらがな」よりも、漢字やカタカナの方が楽ということを利用しました。「音」の判別ができていないうちは、勉強は4・5才向けの幼児用教材の「ひらがな」だけをやり、カタカナと漢字は一切やらせなかった(楽な方に流れるのは、目に見えていたので…)。「音」の判別ができるようになったら、「楽しく字を書く」ことを最優先にし、書きやすい方を書いてもいいことにしました。
  3. 「算数障害」はなかったけれど、「数字が書けないこと」と「問題の日本語が分からない」ことが障害になっていたので、計算だけをすればいいようにお膳立てをし、計算が合っていればいいことにしました。

こういう「行動障害」をする子どもは、物事の「理解」が悪いことがよくあります。その原因の一つに、「読字障害」があることもあります。


小学校二年生、一学期(現在)の様子。

  1. 一年の春休み終了時には、ゆっくりだけれど字の読み書きができるようになっていたので、二年生の「第一目標」を、「毎日、予定を書いてくること」にしました。→初日から、難なくクリアー。
  2. 新しい担任の先生とは、「席についていること・・・工作してても良い」「授業の邪魔をしないこと」から始める、という約束を取り交わしました。→行動が落ち着いてきたので、授業中に工作をしなかったら(「せめて、お絵かきにしなさい」とも言いましたが…)、先生にハナマルをもらうことにしました。ハナマルをもらって帰ると、家での待遇がぐ〜んと良くなるようにしました。
  3. 各授業時間ごとに"課題"を設け、それができればいいことにしました。→まずは、できると分かっている「漢字」や「計算」のプリントを用意してもらいました。体育は、本人に今からやることを見てもらって、自分でやることを決めさせるという方法をとっています。(プールを嫌がったのですが、原因は「着がえ」だと分かったので、そこのところを上手く誘導してもらって、現在はちゃんとやっています。)

現在、あることをキッカケに、いろんなことができるようになっています。

←キッカケになった絵は、これです。

現在進行形なので、まだまだ続きます。


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