鉛筆とクマ カニカン岳 (1998年 7月 5日 ・ 曇り)


その1. 満員御礼、山開き!

 シャッ! AM5:00、眠気まなこでカーテンを開けると、空は一層白く厚い雲で覆われていました。 天気は誠に残念ですが、私達は前日コンビニで買っておいたオニギリとパンで朝食を摂り、クアプラザピリカを出発(朝食抜き一人8000円は高すぎるぞ〜)、カニカン岳登山口へと向かいました。

 登山口に着くと既に2〜3台の車が止まっていました。 私達は車を降り 「さぁて、取りあえず支度をしてバスを待ちますか。」と準備を始めました。
 ・・するとすると、どうでしょう! 乗用車が1台 2台 3台、4台 5台・・と、次々にやってきます。バスはまだ来ていないと言うのに、駐車場はもう少しで満杯になりそうな勢いです。

  「こりゃあ、バス一台どころか、結構な人数になりそうだぞーー 」

 正直言って、私達は山開きがどんなものなのか良く分かってはいませんでした。 想像以上の人数に目をクリクリしていると、山開きの人達とは別の、一組の御夫婦が出発しはじめました。 父と叔父が「 これだけ人がいれば熊も近寄ってこないだろうから、よし、私達も先に出発しよう!」という事になり、その御夫婦のあとに続き出発したのです。 今思えばこれは的確な判断でした。

 さて、最初は登山口から広い林道をたどり、ほどなく本格的な登山道へと入っていきます。この山は湿気が多いのか、土が軟らかく、まるでクッションのようでとても歩きやすいのです。そして心配していた熊の気配も登山道からは全く感じませんでした。

 晴れていれば二合目からカニカン岳が拝めるはずなのですが、もちろんガスっていて何ーーんにも見えません。でも、登山道脇には葉緑素を持たない半透明の不思議な花 「ギンリョウソウ」や、分布の北限が黒松内という事で初めて目にした立派な 「ブナ林」に感激し、そしてそして、遥か昔ゴールドラッシュでわいたという人一人がギリギリ入れるくらいの 「金鉱の坑道跡」に人間の欲を感じたりと、退屈はしません。


ギンリョウソウ、ブナ林、金鉱跡と迷リーダー


 途中、霧雨も降ってきましたが気になるほどではなく、七合目からの急な登りをゼェゼェ言いながら登り切り、さらに登り詰めて行くとそこはカニカン岳山頂です。
 山頂に着くと、ちょうど先に登られたご夫婦が下りられるところでした。 はやいなー
「奥に標識がありますよ 」と教えていただき、ガスで真っ白な山頂で大休止です。

 「この山なら熊の心配はいらなかったみたいだねー 」 「そう言えば、山開きの人達はどうしたのかなぁ?」

 今回は叔父バージョンでゆっくり目に登りましたが、山開きの人達が後から登ってくる気配はありませんでした。


カニカン岳地図



その2. カニカンあいさつ合戦

 AM11時50分に下山開始し、少しすると、数人の男女のグループが登山道の急登にロープを掛けていました。見たところ山開きの先発隊かな? という感じです。 普通に挨拶を交わし何事もなく擦れ違おうとしたところ、なんと!最後尾の男性から、「今日は山開きです。全員で100人いますから、よろしくお願いしまーす 」という思いがけないビックリ言葉が返ってきたのです。

   なぬなぬなぬ〜? 「ひゃひゃひゃ、100人ですとーーー!?」

 こりゃあ立ち止まってすれ違うだけでも、かなりの時間がかかりそうです。 その100人が来るまで、なるべく下の方に下りていようと進んで行きましたが、 「あっ、あれ見て!」

100人大行進! 下の方を見ると・・おお〜っ!います、います。
さすが三桁の100人です、数グループに分かれてはいますが、黒いアリさんのようにズラーーっと一列になって登ってきていました。 もちろん山であんな大大大グループを見たのは初めてです。 「うわ〜、凄いねー 」

 その大グループとすれ違ったのは、急登を過ぎた金鉱跡の所でした。メンバーは年配の方から小学生の子供達まで老若男女、何でもござれです。

 さぁさぁさぁ、いよいよ挨拶合戦のはじまりですよ〜っ! おたちあい!

 「こんにちは 」「こんにちは 」「こんにちは 」「こんにちは 」 「もう下りられるんですか?いいですねぇ 」 「こんにちは 」「こんにちは 」「こんにちは 」

 「こんにちは 」「こんにちは 」「こんにちは 」「こんにちはー 」・・・・

 とにかく挨拶だけでも大変です。お手抜き作戦実行中!
最初のうちはまだ良いのですが、さすがに後半になると口も乾いてくるし、徐々に辛くなってきます。 でも偉い叔父は元気な声で皆さんと挨拶を交わし、さらに、子供達が通ると必ず 「頑張ってー!」と声をかけています。

 そこで私達はその叔父の声に便乗して 「ちはー 」だの 「ってー 」だのと語尾だけで、あたかも挨拶をしているように見せかける お手抜き作戦に打って出ました。
 ・・しめしめ、これなら言葉数も少ないしグッと楽になります。 手抜き作戦大成功! 叔父は社交性があるので大変助かりました。

 「これで最後です、どうもありがとうございました!」
ようやく全員とすれ違った時には、先頭グループは山頂へ向け急登を登り始めていました。

 それを見た父が、「100人も一気に登ったら、山頂崩れちゃうんじゃないのかねぇ 」 「あはは、そうだ。本当にそうだねー 」「一緒に登らなくてホント良かったよ 」と、私達はまた登山口へと向かって歩き始めたのです。



その3. 山開きのおくりもの

 登山道から広い林道に出ると登山口は目前です。
下りはとにかく、人、人、人の嵐でした。 山開きとしては標準的な人数なのかも知れませんが、私達にとっては想像を遥かに越える人数です。もし一緒に登っていたら大変な目に合っていたはずだと、改めてホッと胸を撫で下ろしていました。

 しかし、そんな私達の目に飛び込んできたのは・・・

こ、これは・・!


今日がその山開きゆえの、嬉しく思いがけないプレゼントでした。


カメラマンは誰?
「登山口いっぱいに張られていた垂れ幕」



 垂れ幕のそばには机が置いてあって、安全祈願をした形跡も残っていました。登山道の草刈りも綺麗に済んでいたし、私達は知らず知らずの内に、山開きの皆さんから沢山の恩恵を受けていたのですね、誠にありがたい事です。
 せっかくの道南ツアーは天候に恵まれずかなり悔しい思いをしましたが、お陰で何かと印象に残る楽しい登山となりました。

 さて、また再びこの山を訪れる日はやって来るのでしょうか・・? うむむむむ〜




  チューリップ おまけの話  「叔父のピンチ」

 2日間の道南ツアーから無事帰宅後、あれは4〜5日経った頃でしょうか。 突然、叔父 Kの弟叔父 N から我が家に一本の電話が入りました。

 「兄さんがずっと仕事を休んでいるみたいなんだけど、山での様子はどうだったの?」と――

 ななな、なんですと!? ずっと休んでる〜!? ま、まさか・・お陀仏してしまったんじゃ・・。 チーン! 慌てて、すぐ叔父に電話しましたが、電話に出た叔父はいつもと変わらず元気そうでした。 (生きてて良かったぁー!) あったりまえじゃ! とにかくホッと一安心です。

 詳しく話を聞くと、帰宅した翌日は筋肉痛も体のダルさもなく 「こりゃいいわー 」と、いつも通り仕事に出掛けたそうなのですが、2日目から足が重たくなり、体がダルくなり、そしてとうとうダウンしてしまったそうなんです。

 じつは私達は知りませんでしたが、叔父は道南ツアーの前日まで地方に出張していたらしく、きっとダブルで溜まっていた疲れが一気に出てしまったんでしょうね。小さい山と言っても連日の登山でしたし・・。 今は寝て、一汗かいたおかげで、体もかなり楽になったそうです。

 叔父が元気になってくれて私達も大変嬉しいのですが、しかーし・・こりゃちょっと困った事になりそうですゾ。 どうしよ〜

 じつは、前々から 「今年は雄阿寒・雌阿寒岳に行きますよー!」と宣言していて、まだ登っていない叔父も 「行く行く、オレも連れてって!」と、とても楽しみにしていました。
 そしてそして、来週末は年に数回あるかないかの連日のピーカン予報が出ていたのです。これは遠出の連泊には絶好のチャンスです!

 叔父は元気になったと言っても一週間後の山行、しかもまた連日で山登りです。 もしまた行って具合でも悪くなれば、マジで親戚に合わせる顔がありません。これは我が家のピンチでもあります。
 でも天気はピーカン・・、一方、叔父も連れて行ってあげたいし・・うーん、うーん、うーん。

 ・・悩んだあげく、私達は結論を出しました。
さぁはたして、私達は天気をとったのでしょうか?それとも、叔父をとって先延ばししたのでしょうか? お馴染みの皆さんなら結果は明らかですよね・・?

       バイキン・・じゃなくて小悪魔です


  チューリップ おまけのおまけの話  「YOSHIOさんの北海道山情報」

 この年の5月に初めてパソコンを買い、ネットで最初に見つけたお気に入りのページは「YOSHIOの北海道山情報」でした。 YOSHIOさんのページはとても見やすく、大変参考になります。
 それ以来、山行前後には必ず拝見していました。

 今回は山行後でしたが、何気なく「カニカン岳」のページを開いてみると、なんと!登った日付が同じだし、コメントには「100人の・・・」と書いてあります。

 「うそー!同じ日にYOSHIOさんが登っていたんだー!」 私達は大興奮です。

 じつはこの時、このHPを作り始めていて、まだ完成はしていませんでしたが、つねづね「YOSHIOさんの所にリンク貼ってもらえたら最高に嬉しいねー。」と何度も何度も話していたのです。
 でも初めての人にメールを出すのはかなり勇気が要りました。 リンクを貼ってもらいたくても、きっかけがなければ、おそらく私達はメールを出していなかったでしょうね。

 しかし、嬉しい事に今回はその「きっかけ」を運良く見つけてしまったのです。 「よし!出来あがったらメールを出そうね!」と私達は固く固く決心したのでした。
 それにしても、偶然て本当にあるものなんですねぇ。ビックリ、クリクリです。

 あ、そうそう、YOSHIOさんのコメントには「熊の糞を数箇所で見る」とありました。 全く気付かなかった私達って、やっぱりお気楽!?


※ ところで、今回のカニカン岳を振り返ってみると、私達の前を歩いていたご夫婦がちょっと怪しいかな〜?と思うのですが・・・ハズレですかね?


くま 前のページへ戻る


超人SakagさんのHPも見たい!一人歩きの北海道百名山「カニカン岳編」へ


トップへ戻る