目次 (二分割しました。 本文は後半です。)
第一部 動作原理および総論 (前半です。クリック願います)
1 始めに
1.1 超三結アンプ事始め
1.2 本文の記述および改訂経過
1.3 超三結 V1 の定義 rev4.0 改訂部分
1.4 回路動作の詳細 rev4.3 改訂部分
1.5 ストッピング・ダイオードとリニアライザ
1.6 超三結アンプのバリエーションとスピーカ対応
1.7 超三結アンプの再現性および信頼性の課題 rev4.3 改訂部分
第二部 実装と調整 (本文です)
2 実験の過程、結果および考察
2.1 製作・実験例 (Rev 3.10 追加)
2.2 結果の評価
2.3 多極管への適用
2.4 三極管への適用
3 調整法と課題
3.1 終段のバイアス調整法
3.2 回路上の問題点
3.3 バイアスが深い場合の前段への配慮
3.4 初段回路〜電圧帰還管回路の組み合わせ rev4.4 改訂部分
3.5 三極管超三結アンプの再検討と工夫余地 rev4.1 改訂部分
筆者が実装上の課題として最初に気が付いた点は、初段に電圧増幅五極管を利用し、そのスクリーングリッド供給 DC 源を、終段出力段のカソード電圧にて賄う場合、その電圧を充分に確保しないと、初段の良好な動作が確保できず、従って総合ゲインが確保できないことでした。
すなわち、超三結 V1 アンプを実装するにあたり、課題の中心は
(1) 前段の五極管部のスクリーングリッドに供給する電圧の発生
= 終段のカソードに挿入する自己バイアス電圧+ 直結カサアゲ電圧のための抵抗値 Rk の設定、
(2) 上記の条件を満たすに必要な B 電源電圧の確保、
(3) 初段の性能と動作点、
(4) 電圧帰還管のカソードに挿入する負荷兼バイアス発生用の抵抗値の設定、
と言うことになります。 上記四点の関連について何方から質問を戴き、その解答を含めて追加しました。(2001/01〜Rev 3.10)
まず、原典である上條氏の 6EJ7 - 6BM8 超三結 V1 アンプの例では、 6BM8 の五極管部のバイアス兼前段直結調整用のカソード挿入抵抗の値は1200Ωで、動作時のカソード電圧は 42V 同電流は 35mAとなっています。 これから類推すると、少なくとも初段の五極管スクリーングリッドには 40V 以上を印加する必要がある・・・という条件が求められます。
次に筆者が 6V6G/GT 超三結 V1 アンプの製作に掛かったのですが、6V6G/GT を 250V 近辺の B 電源電圧 (以下 B 電圧または Ebb) で動作させるには、 6BM8 超三結 V1 アンプに比べてもう少し B 電圧全体が高めの 300V 程度は必要であり、さらに初段五極管の動作を楽にするため、初段スクリーングリッドに 60V 程度を供給しようと考えました。 一方 6V6G/GT の 250V での動作は規格表の指示に従い Ip + Isg = 50mA までなら安全です。
結局、初段スクリーングリッド電圧=自己バイアス電圧+直結のための嵩上げ電圧という関係になり、50mA x 60V = 1200Ω と求めた訳ですが、60V の内訳は 6V6G/GT の自己バイアス電圧12.5V + 嵩上げ電圧 47.5V と言うことです。
ここまでの条件を積み上げると、動作に必要な B 電圧は 250V+60V=310V ということになります。
以後製作した殆どの超三結 V1 アンプでは 60V 近辺に設定していますが、終段がバイアスの極めて浅い映像増幅出力管 (6CL6 等) の場合は 50V 近辺でも何とかなる一方、終段がバイアスの 深い水平偏向出力管 (EL509 等) の場合は 80V から 90V 近辺まで上げないと、初段〜電圧帰還管の組み合わせによっては、または B 電源電圧によっては十分に終段をドライブできない〜パワーが出にくい場合があります。
● 6AS6 - 12AT7 ・・・・・・・・・・但し250V程度まで
● 6AK5 - 6AT6 (6BM8 の三極管部) ・・但し250V程度まで
● 6U8/6BL8 - 12AT7 ・・・・・・・・但し250V程度まで
● 6AU6 - 電圧増幅三極管何でも ・・・スクリーングリッド電圧は 50V 程度以上欲しい
● 一応何でも - 12AX7 ・・・・・・・・但し250V以上なら
●初段の性能および電圧帰還管の動作点に係わる要素
上記「2.1.3 初段の性能と動作点」にて説明したとおりです。
●電圧帰還管の性能に係わる要素
一般にハイμ三極管は動作点での直流抵抗が大きく、初段への供給電圧が不足しがちです。 その逆にメディアムμ三極管では初段への供給電圧が過剰になりがちです。
●電圧配分に係わる要素
十分な B 電圧が供給されている場合は電圧帰還管の Rk を大きく取って電圧帰還管による電圧降下による初段との電圧配分を行います。 その逆に低い B 電圧にて動作する終段管の場合には電圧帰還管の Rk を小さく取って電圧帰還管による電圧降下を少なく抑える必要があります。
実際には、低い方は4.7kΩから高い方は12kΩまで取り替えてバイアス調整しながら、出力と終段の安全とを確認します。 筆者の実験では好ましい音質が得られる値を探った結果、6.8kΩ〜7.5kΩ〜8.2kΩ 辺りが適当と判定しました。 この値は、12AT7/2〜6AQ8/2〜6DJ8/2 を使う場合の標準としています。
このような設定法にて「2.3.2 多極出力管の動作例」に示すほか、個別の製作例ページに示したシャープカットオフ五極管および電圧帰還管の組み合わせは例外なく動作しました。
上記の四点を注意すれば、配線間違いが無い限り、殆どの場合は初段のバイアス調整抵抗を最小にして、バイアスを浅く〜帰還管のカソード電位を低くした状態にてパワーオンして直ちに動作試験が開始でき、終段のカソード電圧、すなわちカソード電流を点検・調整した後に直ちに試聴試験が開始できるほど、ピッタリと適合します。
筆者が行った、上記の設定法は 6BM8 では上條氏の記事の値通りにて OK でしたが、二例目の 6BQ5 では 6BM8 の例に従って求め旨く行きました。 三例目の 6V6G/GT では終段のカソード抵抗を少し上げ下げ調整し、四例目の 6LR8 では規格表が示す値に従った設定値どおりで直ちに OK となりました。
以後に試作した超三結 V1 アンプでは確信を持って事前設定するに至りました。
ただし、FET を初段に使用した場合には、供給電圧によって相当に音質と歪が変化するので、電圧帰還管の交換またはカソード抵抗の調整が必要となります。
● 電圧増幅五極管 (定電流源) 〜電圧帰還管の組み合わせ、または
● バイポーラ Tr/FET (定電流源) 〜電圧帰還管の組み合わせ
電圧帰還管からの直接接続 (直結) にて、ゲインの確保およびドライブ電圧確保、直流電圧配分については殆ど問題は発生しません。 また B 電源電圧の誤差に対しても、若干の音質の変化はあるものの、かなりの幅の許容度があります。
● Eg1 は規格表の値で参照用とお考えください。
●各動作例の電圧値・電流値は、必ずしも新品ではない筆者の手持ち球によるものです。
●動作環境は特に設定したものではなく、既設の B 電源電圧にて行いました。
●いずれの例も、調整時の余裕と出力管の寿命を考慮した、控え目な動作点に設定してあります。
従って、決して模範動作例ではなく限定的な一例であり、動作点検に際して参照する目安としてお考え下さい。
STC operation Sample of most pentode/beam (1)
FB tube |
(mA) |
|||||||
6AN5 | 2SK68A | 5965/2 | 120/120 | -6.7 | 40 | 34 | 1200 | |
6AQ5 | 2SK68A | 12AX7/2 | 240/200 | -12.5 | 60 | 30 | 1560 | 6DS5 amp |
6AR5 | 2SK68A | 12AX7/2 | 235/195 | -18 | 65 | 33 | 1560 | 6DS5 amp |
6AS5 | 2SK68A | 12AT7/2 | 110/110 | -8.5 | 40 | 40 | 1000 | |
6AU5GT | 6U8A-p | 12AX7/2 | 220/150 | -20.0? | 60 | 45 | 1320 | |
6AV5GA | 6U8A-p | 12AX7/2 | 220/145 | -22.5 | 50 | 61 | 820 | |
6AW8A-p | 6AS6 | 12AT7/2 | 210/165 | 180Ω | 55 | 14 | 3660 | |
6BK5 | 6AK5 | 12AT7/2 | 290/280 | -5 | 58 | 38 | 1500 | |
6BM8-p No.1 | 6AK5 | 6BM8-t | 210/210 | -16 | 44 | 37 | 1200 | |
6BM8-p No.2 | 2SC1775A | 6BM8-t | 220/190 | -16 | 42 | 34 | 1200+47** | 47Ω for Tr |
6BQ5 | 6GH8A-p | 6GH8A-t | 260/230 | -7.3 | 50 | 42 | 1200 | |
6CL6/6197 | 6AS6 | 12AT7/2 | 200/150 | -2 | 44 | 37 | 1200 | →6AG7 |
6CW5 | 6BX6 | 12AX7/2 | 140/140 | -12.5 | 60 | 68 | 880 | |
6DQ6A/B | 6U8A-p | 12AX7/2 | 240/140 | -22.5 | 51 | 62 | 820 | |
6DS5 | 2SK68A | 12AX7/2 | 250/210 | -8.5 | 50 | 32 | 1560 | |
6F6G/GT/42 | 6GH8A-p | 12AX7/2 | 250/210 | -16.5 | 60 | 38 | 390+1200* | 46V→SG |
6G-B7 | 6BL8-p | 12AT7/2 | 215/120 | -22.5 | 55 | 50 | 1100 | |
6GW8-p | 6AK5 | 6GW8-t | 245/230 | -7 | 50 | 42 | 1200 | =ECL86 |
6HZ8-p | 6AS6 | 12AT7/2 | 200/150 | 100Ω | 52 | 30 | 1680 | |
6K6GT/41 | 6GH8A-p | 12AX7/2 | 250/170 | -18 | 60 | 38 | 390+1200* | 46V→SG |
6L6GB/GC | 6BL8-p | 6BL8-t | 290/270 | -14 | 60 | 73 | 820 | |
6LR8-p | 6BL8-p | 6LR8-t | 210/110 | -10 | 60 | 60 | 1000 | |
6R-HP3-p | 6AK5 | 6R-HP3-t | 175/125 | ? | 60 | 32 | 2000 |
STC operation Sample of most pentode/beam (2)
FB tube |
(mA) |
|||||||
6V6G/GT No.1 | 6EA8-p | 6EA8-t | 250/250 | -12.5 | 56 | 47 | 1200 | |
6V6G/GT No.2 | 6GH8A-p | 12AX7/2 | 250/210 | -12.5 | 60 | 38 | 390+1200* | 46V→SG |
6Y6G/GT | 6BX6 | 6SL7GT/2 | 190/135 | -14 | 60 | 60 | 1000 | |
12A6 | 6U8A-p | 12AT7/2 | 225/230 | -12.5 | 74 | 30 | 680+1800* | 54V→SG |
12BY7A | 6U8A-p | 12AX7/2 | 240/190 | -2.6 | 46 | 29 | 1600 | |
30A5 | 2SK30A-Y | 12AU7/2 | 100/100 | -4.7 | 38 | 38 | 1000 | |
38 | 6U8A-p | 12AT7/2 | 245/250 | -25 | 65 | 26 | 680+1800* | 48V→SG |
807/1625 | 6BL8- | 12AT7/2 | 250/245 | -14.5 | 65 | 80 | 820 | |
1619 | 6U8A-p | 12AX7/2 | 280/240 | -10 | 50 | 42 | 1200 | |
6146 | 6U8A-p | 12AX7/2 | 290/170 | ? | 60 | 52 | 1160 | =S2001/A/M |
6360 para | 6U8A-p | 12AT7/2 | 190/140 | -7.5 | 55 | 67 | 820 | parallel use |
6384 | 6U8A-p | 12AT7/2 | 235/215 | -22.5 | 65 | 74 | 880 | =6AR6 |
6550C/KT88 | 6U8A-p | 12AX7/2 | 290/270 | -14 | 65 | 79 | 820 | |
CV450 | 6U8A-p | 12AX7/2 | 240/140 | -22.5 | 50 | 61 | 820 | =6CU6 |
EL33 | 6EA8-p | 6EA8-t | 250/250 | -4 | 50 | 42 | 1200 | |
EL34/6CA7 | 6BL8-p | 6BL8-t | 290/270 | -14 | 60 | 73 | 820 | |
EL509 | 6U8A-p | 12AX7/2 | 315/185 | ? | 75 | 91 | 820 | =6KG6 |
WE350B | 2SK30A-Y | 6N7GT | 215/180 | ? | 35 | 70 | 500 | Mr. Yamada |
● 6AC5GT μ=58 UY56/UY76 併用の、ダイレクト・カップルド球、五極出力管なみの例外
● 6G-A4 μ=10 近代三極出力管の代表
● 6EM7 μ=5.4 水平出力管はほぼこの辺り
● 6AS7G μ=2.0 電圧調整管は一般に少ない (=6080)
一般的に、μの大きい球はバイアスが浅く内部抵抗が高く、またμの小さい球はバイアスが深く内部抵抗が低くなります。 例外的な球とその動作例として、6AC5GT のようにグリッドを+にしてカソフォロから直にグリッド電流を流してドライブするもの、また水平出力管等の G2 ドライブ回路、もっとタチの悪いマイナス側は流れずプラス側は流れる CV18 の A2 級動作等がありますが、これらの場合は、それぞれ低インピーダンスのドライブ対応が必要です。
● 一般にバイアスが深いのでドライブが大がかり
● ゲイン・マージンの確保が必要
● 低電圧動作の五極管〜三極電圧帰還管では振幅不足らしい
● 高電圧動作の五極管〜三極電圧帰還管では出力端 DC 電圧が高く直結が困難
強引に直結とするならば二階建ての複電源化、または初段のマイナス電源供給、入力信号のトランスによる直流隔離などの対策を要する、等・・・実装上の課題は多様です。
三極出力管を超三結 V1 アンプとして実装するに際しては、便法としてバイアス電圧から所要ドライブ電圧を概算してもよさそうです。例えば
所要ドライブ電圧 Ed (peak to peak) =所要バイアス電圧 x 1.4 (or
平方根2=1.4) 程度 と概算してみます。
例えば、バイアス電圧が 45V の 2A3 ならば Ed2A3=63V と見通しをつける訳です。 この値は Ed より低い電圧で、しかもプレート電流が 1mA 程度にて動作させている電圧増幅五極管 (実際は電流変換機能の) の電流出力を、電圧帰還管回路で電圧変換し、増幅した出力振幅にて実現するのは結構きついようです。 しかし、フルパワーを期待せず、静かに聴くには十分な出力〜音量が得られることは 6EW7 超三結 V1 アンプにて確認しましたが。
(1) 実用回路によるならば、初段五極管〜電圧帰還管、全体の印加電圧を高く設定する。
◇出力段用の B 電源にさらに追加 B 電源を上積みする。
◇または初段五極管のカソード/G1 をマイナス電源にて引きさげる。
但しこの場合は、信号入力にライン入力トランスを使う必要がある。
(2) 動作原理回路を応用して、信号入力にはライン入力トランスを使い
(必要ならばゲインを稼いで) 電圧帰還管に入力する。
(3) 一般的な SRPP 回路を利用して、十分な終段入力振幅を得る。
(4) SRPP 回路または抵抗負荷の三極管または五極管増幅を利用して、終段入力
に必要な振幅を得て、
P-G NFB 併用のカソードフォロワ・ドライブにて解決する。(2001/7 rev4.1)
手持ちアンプの改造ベースでは上記 (3) SRPP 回路利用の構成が手とり速く、この方法から着手しました。 一部には (2) ライン入力トランスも試しましたが、一般化は困難と見て中断しました。 (Rev3.0)
その後 SRPP ドライブの振幅最大化の再検討を経て、P-G NFB 併用カソードフォロワ・ドライブの有効性に着目し、ドライブ振幅確保の方法と P-G NFB 回路を分離〜分業する方向に発展し、P-G NFB 併用カソードフォロワ・ドライブに突破口を見い出し、次々と試作試験しました。(2001/7 rev4.1)
三極出力管のカソード抵抗の途中から、その出力管のバイアス電圧程度に低い電圧・・・筆者が言う「嵩(カサ) 上げ電圧」・・・相当を取り出して、初段管のスクリーングリッドに供給してください。
この措置をとらないと、出力管の適正なバイアスが維持できず、バイアスが制御できない場合があります。 以前の筆者の実験では例外を除き、どの球にもこの方法を慎重に適用しておりました。 また多極出力管では、このようなことは一切ありません。
例外とは、極めてバイアスの浅い 6BQ5(T)(三結) と 6AC5GT (実際はドライバーの UY56/76 ですが) だけ、セーフなので手抜きしたものでした。 ところが、筆者はこの制限をスッカリ忘れており、最近何の気なしに#1 ピンに配線してない 6V6GT 超三結アンプに、そのまま 6G-A4 を挿し替え、カソード電圧を監視はしていましたが、ナント100mA 近くの大電流を一瞬流す失敗をしました。
三極出力管の超三結アンプを追試験される方が居られるとマズイ!と、俄に心配になってきたので、敢えて恥をさらして本件を書き加えました。(2000/5/8)
という伝統的な回路から、カソードフォロワ段を取り除き、自己バイアスとした回路です。 SRPP 回路ならば、特別の B 電源を用意せずにかなりの電圧出力振幅がとれます。 そこでこれに目をつけました。 この回路は、裸アンプとしてなら終段出力管をドライブするに有り余る十分な電圧ゲインがあります。
所が、筆者が念のため動作状態を点検した所、初段が電圧増幅三極管であり、定電流源の性格が弱く、本来の超三結 V1 回路には該当しないことが判明しました。 従って、後述の P-G NFB (プレート・グリッド間負帰還) 併用の「SRPP 回路」および「強力 SRPP 回路」も、超三結 V1 回路とは異り、経過的に派生した回路に相当します。
実装時の用法としては P-G NFB を併用するため、SRPP 回路の出力を、終段出力管のグリッドに C/R 結合とし、なおかつ終段出力管のプレートから SRPP 回路の直列カソードフォロワのプレートにNFB 信号および B 電源として供給するものです。
これで不完全であっても、形式的には一応 C/R 結合の超三結 V1 回路に類似な回路となるので、信号成分に関する P-G NFB の動作は支障はなく実用に耐えるものと推定されます。
上記の回路を実験した結果、若干量のP-G NFB が掛かり、超三結 V1 に似た音が得られました。 従って単に B 電源で釣った純粋の SRPP 回路と、P-G NFB 併用 SRPP 回路とでは動作が異なり、後者では終段出力管の動作に対して、出力電圧振幅の 1/2 が NFB された効果があると言うことです。
但し SRPP 回路は、直結とするには出力端に B 電圧の半分程度の DC 電圧が出て、なにかと不便です。 そのような場合は C/R 結合で逃げる方法もありますが、直結のメリットが失われます。
P-G NFB 併用 SRPP 回路では、裸の SRPP 回路よりはるかにゲインが不足します。これを簡単にリカバーする方法が必要です。
筆者は、測定にて確認しましたが、裸の強力 SRPP 回路をフル振幅で動作させると、初段の GG カスコード接続回路からの出力電流振幅は約 2mA となり、電圧増幅五極管〜電圧帰還管での 1mA 以下の動作電流から想定される電流信号出力よりは遥かに強力ですが、出力に占める電圧成分が余りにも大きく、相対的に電圧増幅の動作であると考えます。
下記「図6 強力 SRPP の実測回路および測定結果」に実測回路および測定結果(DCベース)を示します。
1 | 1.0 | 2 | 62 | 12 | 2.3 |
2 | 0.5 | 4 | 90 | 10 | 2.0 |
3 | 0.0 | 10 | 165 | 7 | 1.4 |
4 | -0.5 | 15 | 235 | 4 | 0.8 |
5 | -1.0 | 20 | 295 | 1 | 0.2 |
筆者は、このP-G NFB 併用強力 SRPP 回路は CV18 パラ, 1626, 2A3, 6EM7 各シングルアンプに適用しました。
この回路を多極出力管に併用しても動作上の問題ありませんが、大振幅を必要としないので、その必要もなくあまり意味はないでしょう。 また SRPP 回路と同様、出力端の DC 電圧が B 電圧の半分程度と高く直結とするには不便です。
FB tube |
(V/mA) |
|||||||
6BQ5(T) | -10 | 19 | 6U8A-p | 12AX7/2 | 220/38 | 46 | 1200 | |
76-6AC5GT** | -13.5=76 | 58# | 6U8A-p | 12AX7/2 | 250/36 | 54 | 1500 | #μ=6AC5GT's |
6G-A4 | -19 | 10 | 6U8A-p | 12AX7/2 | 250/40/TD> | 62 | 390+1200* | 46V→SG |
6R-A8 | -19 | 9.7 | 6U8A-p | 12AX7/2 | 235/41 | 65 | 390+1200* | 46V→SG |
12B4A | -22 | 6.5 | 6AS6 | 12AT7/2 | 200/22 | 65 | 620+2700* | 47V→SG |
6AH4GT | -23 | 8 | 6U8A-p | 12AX7/2 | 250/24 | 60 | 820+1640* | 40V→SG |
EL34(T) | -26 | 11 | 6U8A-p | 12AX7/2 | 250/50 | 60 | 390+820* | 40V→SG |
6EW7*** | -40 | 6 | 6U8A-p | 12AX7/2 | 200/36 | 80 | 1000+1200* | 45V→SG |
(A) SRPP の出力条件:C/R 結合にせざるを得ません。
(B) SRPP のプレートへの NFB 兼 DC 電圧供給条件:クリアーできます。
このシングルアンプから他の超三結 V1 アンプにかなり似た音が得られました。
後日、直結化の可能性を追及した結果、遂に強引に前段 SG 電圧カサ上げ用の自己バイアス装備により直結化した 6AC5GT 超三結 V1 アンプとして解決しました。 回路図等詳しい内容は 6AC5GT 超三結アンプの項をご参照ください。
(A) 強力 SRPP の出力条件:C/R 結合にせざるを得ません。
(B) 強力 SRPP のプレートへの NFB 兼 DC 電圧供給条件:合致しません。
A2 級アンプの場合は P (プレート供給) 電圧が 150V〜180Vと低過ぎて、そのまま強力 SRPP の プレートに供給しても動作しません。 そこで、6AS7G/6080 の強力 SRPP への P-G NFB は C/R 結合回路 ??としました。
CV18 をドライブするカソードフォロワ出力は、抵抗負荷によるクローフ結合とし、グリッドチョークを併用したので、結局信号経路に三箇の音質を左右する受動素子が加わり NFB 信号経路にもキャパシタが入ってしまいました。 それでも、出てきた音は他の超三結アンプに一応近いものでした。 回路図等詳しい内容は CV18 各種アンプの項の後半をご参照ください。
超三結 V1 の前段の電圧増幅五極管 (またはTr/FET) と電圧帰還管で構成された回路では、終段出力管への出力部分での直流電位があまり高くならない〜精々50V 近辺に落ち着くので、電圧帰還管の出力を終段出力管に直結しても、単一の B 電源にて簡単に回路構成ができます。 このような回路を基準にして、その動作点の調整法を以下に説明します。
終段出力管の自己バイアス電圧の調整は、前記の「1.2 超三結 V1 の定義」項で示した、標準的と考えられる回路図を基準にして、下記のようなステップで調整します。
(1) 初段五極管 (またはTr/FET) のバイアスを予め浅い側に・・・可変抵抗値のゼロまたは少ない側にセットしておくと動作点が低いプレート電圧(Ep) でもプレート電流(Ip) が流れやすい状態になり、直流抵抗が少なくなっているので、上の電圧帰還管で殆ど B 電圧を背負う状態になります。
(2) この状態では、 終段出力管はカットオフまたてはそれに近く、初段に入力信号をいれても上の電圧帰還管回路からカスカに漏れる音とカットオフに近い歪んだ小さい音が両方出ます。この状態では終段出力管の カソード電圧は満足な値にはならないので、初段五極管 (またはTr/FET) のスクリーングリッド電圧も低く、動作も不全のままです。
(3) 次に可変抵抗値を徐々に上げていくと、ある点からスカッと奇麗な音に変わります。 これが初段が定電流源としての動作を始めたことの証です。
これでほぼ正しい動作状態に近いのですが、終段出力管が適正な動作点にあるか否かの判定は、終段出力管のカソード電圧をカソード抵抗値で割ってカソード電流(Ik)=プレート電流(Ip)+スクリーン電流(Isg)を求め、規格内に収まっていることで確認します。
(4) 規格の範囲内で、更に可変抵抗値を上げて、最も出力のとれる点または最も歪み感の少ない点 〜 普通はなかなか一致しないのですが 〜 いずれかまたは中間に設定して調整完了という訳です。
(5) 更に精密に調整する場合は、電圧帰還管のカソードに挿入のバイアス兼I/V 変換抵抗の値を加減して、適正な終段出力管のバイアスを維持するように、上記 (1)〜(4) を繰り返すことになります。
すなわち、初段五極管のバイアスを調整してそのプレート電流を変化させ、プレート電圧に反映させ、それを上に乗せた電圧帰還管の動作に反映させて、カソード電圧=終段出力管のグリッド電位として決めています。 初段五極管のプレート電圧が上がると、終段出力管のカソード電圧も上がって、補正を掛ける一種の緩いサーボ作用がかかっています。
初段を Tr/FET にて構成した場合は、上記のサーボ作用がないため調整がややクリチカルであると同時に、電圧増幅五極管による構成に比べて動作がやや不安定度ですが、一旦調整してしまえば実用上は問題ありません。
このようにして、簡便法ながら、初段五極管の動作点が特性図の最適点からひどく外れておらず、且つ電圧帰還管の動作点が同様に最適点からひどく外れていないことを確認さえできれば、まず実用上は差し支えありません。
筆者は殆どの場合、調整不能とか、余程出力が取れない場合とか、聴くに耐えられる音質が得られない場合以外は、最も好ましいと感じられる点に設定して、各ポイントの電圧チェックだけで、動作が規格内であることを確認したら調整完了としていますが、恐らく最大出力を絞り取る場合の70% 程度までは追い込んでいるものと考えています。
筆者はまだ十分に検討を経ておらず、中間的ですが、バイポーラトランジスタ、それも実験した 2SC1775A による初段に限れば、あまりコレクタ電圧に敏感ではないらしいので、電圧配分に関しては一応問題はありませんでした。
FET の場合はやや問題がありました。 FET の品種によっては供給するドレーン電圧/電流〜ソース電圧によって出てくる音質が〜すなわち、ドライブ波形に〜影響がかなりあり、終段出力管のカソード自己バイアス兼「嵩上げ」電圧そのものの調整が必要となる場合がありました。
知人の H 氏によると、色々な FET を試験した結果、好ましい音質が得られる供給ドレーン電圧に幅のある品種と、その幅がせまくクリティカルな品種とがあるそうです。 当然のことですが前者の方がベストポイントを探すのが楽とのことです。
筆者の実験では 2SK30A-Y - 12AU7 - 30A5 の超三結アンプでは、ドレーン電圧が 18V〜20V 位が最も聴きやすく最適でした。 それ以上あげると音が悪くなり、それ以下だとゲインが落ち、音が篭ってしまいました。 ということはクリティカルな部類のようです。比較的広いのが 2SK68A ですが、以前に生産打ち切りで、類似品として少し Idss の大きい 2SK163 があります。
FET の場合、さらにエンハンス・タイプとディプレッション・タイプの差、従ってバイアスの掛け方、P-K NFB の適用方法にもバリエーションがありそうですし、最適動作点を執拗に探り出す必要があるようです。
しかし、終段出力管のカソードバイアスが深く 20V 程度を超すものでは、初段五極電圧増幅管に供給する SG 電圧と P 電圧とのギャップが大きくなりすぎ、異常な動作となる可能性を考慮して、SG 電圧を下げる方策をとりました。
その回路は非常に簡単で、終段出力管の自己バイアス抵抗を分割して、初段五極電圧増幅管に供給する十分な
SG 電圧と、深い自己バイアスとを両立することです。「表1.2 三極管または三極管接続 Version 1 シングル・アンプの動作例」に示すように、自己バイアス抵抗にて電圧配分して、適正な SG 電圧を供給しています。
三極出力管を超三結 V1 で使用する場合は安全を期して、カソード抵抗の途中から、その出力管のバイアス電圧を差し引いた「嵩(カサ) 上げ電圧」相当を取り出して、初段管のスクリーングリッドに供給してください。(2000/5/8)
バイアスが深めの多極出力管の場合でも、このタップ出し形式を適用した方が良いでしょう。 「表1.1 超三極管接続 Version 1 シングル・アンプの動作例 (多極管) 」でも、UY38 など一部の管種に適用しています。 また挿し替え汎用アンプ等の場合には、動作の安全性を考慮してこの方式を適用すべきでしょう。
但し、分圧した場合は五極電圧増幅管に対する直流的なサーボ機能が若干弱まる筈ですが、クリップ領域に達した場合は別として、終段出力管のカソード電圧が浮動するような現象は見られませんでした。
むしろ筆者が経験した別の問題として、パワーオン立ち上げの際のノイズがあります。 ヒーターの熱容量が小さい前段が先に動作する場合には、終段出力管のグリッドにプラス電位が掛かり、グリッド電流が流れて一気に終段出力管のカソード回路に入っているバイパス・キャパシタに充電するらしいのです。
12B4A 超三結アンプや 6AC5GT 超三結アンプではパワーオン立ち上げ時に「ポッツン」ノイズが出ました。 電圧帰還管のヒートアップを遅く徐々に上げていけば、立ち上げは円滑になると思われますが、一瞬であり球を痛めるような時間ではなく、またスピーカを痛めるには程遠いミニパワーノイズなので、そのままにしてあります。
別の分圧方法として、終段出力管の自己バイアス抵抗の K 側から直列ドロッパを通して初段五極電圧増幅管の SG に電圧供給する回路も検討しましたが、SG 供給電圧の時定数が大きくなり、終段出力管の自己バイアス電圧変動に対する追随性の悪化を心配して採用しませんでした。
● 6AS6 - 12AT7 (6AQ8/5965)・・・・・・・・・・但し250V程度まで
● 6AK5 - 6AT6 (6BM8 の三極管部) ・・但し250V程度まで
● 6U8/6EA8/6GH8A - 12AT7 (6AQ8/5965)
● 6AU6/6BX6/6EJ7 - 電圧増幅三極管何でも ・・・但しスクリーングリッド電圧は 50V 程度以上欲しい
● 一応何でも - 12AX7 ・・・・・・・・但し 250V 以上ならベスト
● 一応何でも - 6AU6(T)
それに初段五極管のスクリーン電圧供給と、終段出力管の自己バイアスとを兼ねて、部品点数を少なく且つ
DC サーボ機能としていることも、複雑さを増している要素になっています。
本当の動作状態と出てくる音の関係を知るためには、変数が多くて大変ですが、終段出力管の仕様は固定し、電圧帰還管回路の出力を
C/R 結合としたうえ、
● 五極管(またはTr/FET)〜電圧帰還管の品種のいろいろな組み合わせについて、
● SRPP 回路 全体へ供給する B 電圧を変化させ、
● 五極管(またはTr/FET)〜電圧帰還管との電圧配分を変化させ、
● 〜電圧帰還管の負荷抵抗値の変化させ、
● 五極管のスクリーン電圧を加減する、
ことによって、出てくる音との関連を徹底的に調べる必要があるでしょう。
発振回避策または発振防止対策としては、下記が挙げられますが (1) が確実です。
(1) たとえば 6AU6 + 12AX7/2 など五極管および三極管を別のもので構成する。
(2) 三極部を別の電圧増幅三極管に移動する、または五極部を別の電圧増幅五極管に移動する。
(3) 三極部・五極部が隔離された管種 (例えば 6AW8-A 口金接続=9DX 等) に
ソケットはそのままで接続変更する。
(4) そのままの構成で発振防止対策をとる場合 (ただし試作例では抑制しきれない場合がありました。)
初段入力加減 VR の値を 5kΩなど少なく設定。 但し CD プレーヤ等は下限を 10kΩとしている。
初段管グリッド G1 を 50pF 程度のCで接地して、フェライトビーズを通して入力する。
終段管 G1 に〜1kΩ程度までのRを直列に挿入し、フェライトビーズを通して入力する。
終段管 P (プレート) に 20Ω程度までのRを直列に挿入し、フェライトビーズを通して出力する。
P-K NFB だけで構成し、かつ NFB 回路中に非直線素子を使用したのが 超三結V3 アンプですが、P-G NFB がなく、超三結 V1 アンプにくらべて制動が不足なためか、いま一つの感じでしたが、V1 アンプにはない別種の美しさがありました。
そこで筆者達は V1 アンプに P-K NFB を補う方法として、超三結 V1 回路の上に超三結 V3 の P-K NFB を適宜追加する「V1+V3 複合回路」を発想して変更しました。 その効果と再現性を確認して以後殆どの試作アンプに適用しています。
その回路は、初段カソード (ソース/エミッタ) の自己バイアス+バイパスC の並列の下、接地間に100Ω程度の抵抗を挿入し、終段出力管のプレートから数百kΩの高抵抗を介して、三極管 (接続) (原理的には バイポーラ/FET も) のグリッド (ゲート/ベース) を信号的に接地して、または二極管 (接続) でも〜いわゆる真空管負荷というプレート (またはドレイン/コレクタ) 特性をもつ素子を直列にして、出力管の出力信号を微かに NFB としてカソード (ソース/エミッタ) に掛けるものです。 この追加回路により、ゲインをあまり低下させずに期待通りの P-K NFB の効果が得られつつあります。
「図7 V1+V3 複合回路」に概要回路図を示します。
(1) ◆三極管 (接続) 出力管の (強力) SRPP ドライブ P-G NFB アンプ (前者グループ)
CV18 A2級パラ/A1級パラ/6AC5GT/1626/ 2A3/ 6EM7
(2) ◆超三結 V1 アンプ (後者グループ、P-G NFB 併用倒立μフォロワ・ドライブ))
6EW7/ 12B4A/ 6RA8/ 6GA4/ 6AH4GT/6AC5GT/ 6BQ5(T)/ EL34(T)
(3) ◆超三結 V1 アンプ (後者グループ、P-G NFB 併用カソードフォロワ・ドライブ)
2A3/ 45/ 300B/ 5998(A)/ 6BL7GT/ 6BX7GT/ 6SN7GT/ 6AH4GT/ 6RA8/ 12B4A/1626 (2001/07 Rev4.1)
前者グループの (1) では P-G NFB 併用「強力 SRPP」による NFB の絶対量が不足で、本来の超三結 V1 動作が得られず、終段出力管での電圧振幅抑制が十分働かないものと考えられます。
後者グループの (2) では、超三結 V1 回路の動作原理からすると差がないはずですが、三極管 (接続) では、本来、主に電圧増幅素子の性格を備えている上、もともとのμ値が少なく、NFB によって得られる見掛けの Rp/μ の値も大して低下しない訳です。
しかしながら、後者グループの (3) のカソードフォロワ・ドライバを P-G NFB 併用とした「超三結 V1 原形回路」にすれば、電圧配分の難しさとドライブ振幅の確保に種々の問題を残す「超三結 V1 実用回路」より遥かに手軽に「超三結効果」・・・超三結による特徴的な音質が得られること・・・を楽しむことができ、素直な三極管の音ながらオーバーオール NFB よりははるかに多極管の超三結 V1 に近い音になります。 この回路方式がうまく行ったので、一時諦め掛けていた三極管の超三結アンプを見直して、次々と試作実験に挑戦しました。(2001/07 Rev4.1)
●電圧振幅の残留課題
更にまた、何れのグループについても、バイアス電圧が深く、大入力振幅を必要とする三極管 (接続) では、出力にもその大入力振幅と同じ電圧成分が残ってしまうので、多極管の超三結 V1 のように電流成分が比率的に増えない、従って電流変換機能が多極管に比べて劣る、という本質的限界につきあたるものと考えます。
●応急処置は可能でも・・・
低音が緩い場合は、取り敢えずカソード負帰還 = CNF を併用して抑えましたが、あくまでも応急処置です。 O さんの実験には、出力トランスの一次側の適当に低いタップにプレートを接続し、最もインピーダンスの高いタップから電圧帰還管のプレートに戻して P-G NFB を少しでも増やそうとした例がありましたが、実際には巻線比がとれず飛躍的には NFB 量を増やせません。
筆者が行った、トランジスタ見たいな特性のハイμ出力管 6AC5GT の超三結 V1 (直結) では、例外的に多極管なみの音が得られましたが、実際問題としてはμ=10 以上の三極管 (接続) でなくてもある程度までは、効果が期待できます。
●P-G NFB 併用カソードフォロワ・ドライバ形式
筆者の分類では「準超三結回路」(Semi-STC circuit) となりますが、カソードフォロワ段 (実は純粋の電圧帰還管) の負荷に定電流源を入れるなどして、増幅機能を持たせないためか、五極管 (または BJT/FET) + 電圧帰還管の直列動作よりも、大振幅のドライブにも耐えられ、ローμの三極出力管であっても伝統的回路よりは、はるかに締まった音を引き出すことができます。 たとえ μ=3 の管種であっても深い P-G NFB によって μ=1 に近づけた効果は聴覚上でもハッキリ区別できます。(2001/07 Rev4.1)
実際に 2A3 および 300B について 12AU7/2 カソードフォロワによる準超三結構成を 12B4A カソードフォロワに変更したら大いに効果がありましたが、大抵のスピーカでは過制動に過ぎてもとに戻した経過があります。(2008/03 rev4.4)
そこで電圧帰還管にはタップリ電流が流せる品種を利用した超三結 V1 に挑戦することになります。 しかし、そのような球は概してμが低いから、μと電流値の掛け算で大きい値が得られるものを選択する必要がありましょう。 さしあたり水平出力系の 12B4A/ 6BL7GT/ 6BX7/ 6AH4GT/ 6EW7 あたりを利用することになります。
そのような電圧帰還管を使用する場合は、高いプレート電圧を要求しない 6AN5/ 6AS5〜30A5/ 6CL6/ 12BY7A 等の五極出力管または映像出力管を併用することになります。 そうなれば、電圧電流変換力の強力な定電流源が得られ、ドライブ力不足は一挙に解決しそうです。 但し終段出力の一部分が初段五極管および電圧帰還管に食われます。
しかし、このようなドライバーとすることにより、グリッド電流が大量に流れて低入力インピーダンスを要求する管種を、不完全ながらも別途の専用カソフォロドライバー段を用意せずに C/R 結合の二段アンプとして簡単に構成でき、完全ドライブによるフルパワーを条件としなければ、手軽なアンプとして一応の実験価値はあるでしょう。(Rev3.0)
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