残月
【解題】 作曲者峯崎勾当の門下であった松屋某の息女が亡くなり、その追悼のために作曲されたと伝えられる。鎮魂の曲で、前 歌は重く沈んだ節付けだが、五段にわたる手事は技巧の限りを尽くし、華やかな調べとなる。これは死者に手向ける献花 の意味であると言われる。 【解析】 ○磯辺の松に|葉 隠れて、沖の方(かた)へと|入(い)る| 月 |の、光| や 磯辺の松の|葉に隠れて、沖の方 へ |沈んでゆく| 月 |の 光|だろうか、 |亡くなった|あの方|は、 ○夢の 世 を早(はや)う、 覚めて |真如 |の明らけき、 夢のようなこの世の迷いから、とっくに 目覚めて、もう|悟りの世界|の澄み切った、 ┌───────┐ ○月の都 |に住む | | |や|(あ)らん||。 月の都 | ↓ 極楽浄土|に住んでいる|の|で| | あ ろう|か。 ○今は|伝(つ)て |だに|朧夜の 、月日 |ばかりは |廻(めぐ)り|来て 。 今は|伝 言 の行方|さえ|おぼろになり、 |朧夜の |月 が| |廻るにつれて、 |月日 | だけ は |廻り 、 |忌日 | はまた|廻って |来たが。 |
作詞: 作曲:峰崎勾当 【語注】 葉隠れて 草や木の葉の陰に隠れることから、死を暗示する。 |