袖の露
【解題】 愛し合って将来の約束までした男に疎遠にされ、それでもいつまでも男を待ち続けなくてはならない、いじらしい女心を歌ったもの。 【解析】 ○村雨 や、われ |のみ |濡るる|袖なら|じ 、 村雨が降る!| 私 一人|だけが| |袖を | |濡らし| |たくない、濡らすならあなたと二人でと思うと、 ○その |移り香を|忘れ も|やら で、二人 寝る夜は|をなご同士 。 そのあなたの袖の|移り香を|忘れることも|出来ないで、二人で寝る夜は、 女 同士|に限るほど| |気を使ったものだ。 ○比翼連理 と|契り しことも、仇し |枕 の| 憂き涙 。 比翼連理の夫婦になろうと|約束したことも、仮初に交わした|枕だと思うと|今は辛い涙が落ちるばかり。 ○ああ|辛気 な と、夕月の空 |冴えわたる 、 | ああ、憂うつなことよと、夕月の空を眺めると、冴えわたる空に、雁が飛んで来る。 ○あの雁がねの、 | 文 のたよりも|なき |あとに、 残るこの身| を| あの雁 の、あの人からの|手紙の消息 も|来なかったら、あとに|一人残るこの身|の寂しさを、 ┌─────────────┐ ○いかに|せ| ん|↓。 どう |し|たらよいのだろう|か。 【背景】 比翼連理 白楽天の「長恨歌」に、玄宗皇帝と楊貴妃が永遠の契りを誓い合ったことを叙した、次の一節がある。 117 在天願作比翼鳥 天 に|在りては|願は く は|比翼 の鳥と|作り 天上に|あっては、かなうことならば|翼のつながった鳥と|なり、 118 在地願為連理枝 地 に|在りては|願は く は|連理 の枝と|為らむと| 地上に|あっては、かなうことならば|枝のつながった木と|なろうと|誓い合った。 |
作詞:不詳 作曲:鶴山勾当 【語注】 比翼連理⇒背景。 雁がねの文のたより 漢の武将蘇武が北方の遊牧民匈奴に捕らえられた時、バイカル湖のほとりから、雁の足に手紙を付けて放し、それが漢の天子の手に入って消息が分かったという故事(漢書「蘇武伝」)による。雁の玉章、雁の便り、雁の使い、雁の文章などとも言う。 |