51_4a 鳥を詠める和歌
 
[仏法僧鳥・慈烏]
其ひとも君はつげしもせじ物を いかでか鳥のかねてしりけん
御返し
法を思ふ心しふかく成ぬれば 里にも鳥のみゆるなるらん(躬恒集)
 
松のおのみねしづかなるあけぼのに あふぎて聞ば仏法そうなく(新撰六帖 六)
 
わが国はみのりの道のひろければ 鳥もとなふる仏法僧哉(慈鎮和尚)
とりのねも三の御のりをきかす也 み山の庵の明がたの夢(家隆卿)
うき事をきかぬみ山の鳥だにも なくねにたつる三の御法を(寂蓮法師)
                         (夫木和歌抄 二十七仏法僧)
 
とにかくにかしこき君が御代なれば 三のたからの鳥もなく也(弁内侍日記)
 
[鵲カササギ]
かさゝぎの峯とびこえて鳴ゆけば 夏のよわたる月ぞかくるゝ
                      (後撰和歌集 四夏 よみ人しらず)
 
増鏡うら伝ひするかさゝぎに 心かろさの程をみるかな(散木葉謌集 八恋)
 
[杜鵑・霍公鳥ホトトギス・シデノタヲサ]
うぐひすの 生卵カヒコの中に 霍公鳥 独り生まれて 己シが父に 似ては鳴かず 己が
母に 似ては鳴かず うの花の さきたる野辺ゆ 飛びかへり 鳴きとよもし 橘の 
花をゐ散らし 終日ヒネモスに 喧ナけど聞きよし まひはせむ とほくなゆきそ 吾が屋戸
の 花橘に 住み渡し鳥
反歌
掻きゝらし 雨のふる夜を 霍公鳥 鳴きてゆくなり あはれその鳥
                              (萬葉集 九雑歌)
 
親のおやぞいまはゆかしき郭公 はや鴬のこは子也けり
鴬のこになりにける時鳥 いづれのねにかなかんとすらん(続世継 十敷島の打聞)
 
ほとゝぎすながなく里のあまたあれば なをうとまれぬおもふものから
名のみ立しでの田をさはけさぞなく いほりあまたとうとまれぬれば
庵おほきしでの田をさはなほたのむ わがすむ里に声したえずば(伊勢物語 上)
 
しでの山越てきつらん時鳥 恋しき人のうへかたらなむ(伊勢集 上)
 
をりからにいづれともなき鳥の音も いかゞさだめん時ならぬ身は
                       (拾遺和歌集 九雑 大納言朝光)
 
足引の山ほとゝぎす里なれて たそがれどきになのりすらしも(今昔物語 二十四)
 
ほとゝぎすなくねたづねに君ゆくと きかばこゝろをそへもしてまし(枕草子 五)
 
郭公おもひもかけぬ春なけば ことしぞまたで初音きゝつる
                      (後拾遺和歌集 二春 中納言定頼)
 
きく度にめづらしければ時鳥 いつもはつねの心ち社コソすれ(平家物語 六)
 
忍びねはひきのやつなる郭公 雲ゐにたかくいつかなのらん(十六夜日記)
 
しでの山をくりやきつる郭公 玉まつる夜の空に鳴なり(九州道の記 玄旨法印)
 
聞くたびに胸わろければ郭公 返吐とぎすとぞいふべかりける(宗長)
かしがましこの里過ぎよ郭公 都のうつけさぞやまつらん(山崎宗鑑)(傍廂 前編)
 
梅がえにさへづる春のあしたより なほめづらしきほとゝぎすかな
                            (四十二の物あらそひ)
 
古へに 恋ふる鳥かも 弓弦葉ユヅルハの 三井ミイの上より 鳴き渡りゆく
古へに 恋ふらむ鳥は 霍公鳥 蓋しや鳴きし 吾が恋ふるごと(萬葉集 二相聞)
 
高御座タカミクラ あまの日継ヒツギと すめろぎの かみのみことの きこしをす くにのま
ほらに 山をしも さはにおほみと 百鳥モモトリの きゐてなくこゑ 春されば きゝの
かなしも いづれをか わきてしぬばむ うの花の さく月たてば めづらしく 鳴く
ほとゝぎす あやめぐさ 珠ぬくまでに ひるくらし よわたしきけど きくごとに 
こゝろうごきて うちなげき あはれのとりと いはぬときなし(萬葉集 十八)
 
むかしべや今も恋しき時鳥 故郷にしも鳴てきつらん(古今和歌集 三夏 たゞみね)
 
いくばくのたをつくればか郭公 しでのたをさを朝な朝なよぶ
                    (古今和歌集 十九俳諧 藤原敏行朝臣)
 
[布穀鳥ツツドリ]
これも又さすがにものぞあはれなる かた山かげのつゝどりのこゑ
                    (夫木和歌抄 二十七都々鳥 寂蓮法師)
 
[菅鳥スガトリ]
白檀シラマユミ 斐太ヒダの細江ホソエの 菅鳥の 妹に恋ふれや いをねかねつる
                               (萬葉集 十二)
 
いづかたもおなじうきねをなにとかは うらわたりするさよのすがとり
                      (夫木和歌抄 十七水鳥 祐盛法師)
 
[猟子鳥アトリ]
くにめぐる あとりかまけり ゆきめぐり かひりくまでに いはひてまたね
                               (萬葉集 二十)
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