51_4b 鳥を詠める和歌
 
[鵯ヒヨドリ・ヒヘトリ]
ひよどりは其能毒はきはめねど いかさま気をば補やせむ(食物和歌草本 七)
 
ひへ鳥をむしりつゝみのはたかはら しりすゝにしてなほわたるなり
                         (古今著聞集 十六興言利口)
 
すゞしさはは山のかげもかはらねど なほふきをくれ萩のうはかぜ
これも又秋のこゝろぞたのまれぬ はやまにかはるおぎのうはかぜ
いかにせん山鳥のをもながき夜を おひのねざめに恋つゝぞなく
                         (古今著聞集 二十魚虫禽獣)
 
このうちにまだすみなれぬひえ鳥は 心ならでも世をすぐす哉(土御門院御集)
 
[鵐鳥シトト]
あめつゝ ちどりましとゝ などさけるとめ(萬葉集 中神武)
 
あめふればかきねのしとゞそぼぬれて さへづりくらすはるの山もと
                       (夫木和歌抄 二十七鵐 源仲正)
 
[鸚鵡アフム]
あはれともいはゞやいはんことのはを かへすあふむのおなじ心に
                     (夫木和歌抄 二十七鸚鵡 寂蓮法師)
 
[鷽ウソ]
うそは温つねに食せよ身を肥す 胸ふさがるに是を用る(食物和歌本草 四)
 
もゝぞのゝ花にまがへるてりうその むれ立をりは散心ちする(山家集 下)
 
[駒鳥]
駒鳥は冷なり淋病痰に吉 しはぶきをやめこゑいだすなり(食物和歌本草 五)
 
[橿鳥カシドリ・カケズ]
夏そひくうながみ山のしゐしばに かし鳥なきつ夕あさりして
                          (永久四年百首 冬 俊頼)
 
[増子鳥マシコ・テリマシコ]
ましこゐるゐのくつちはらうちはらひ みきはかたてし昔こひしも(源仲正)
時雨こし木ずゑの色を思へとや えだにもきゐるてりましこ哉(寂蓮法師)
冬がれのをかべに来ゐるてりましこ 紅葉にかへるこずゑ也けり(第三のみこ)
                         (夫木和歌抄 二十七増子鳥)
 
[鶸ヒハ・カハラハワ]
こゑせずと色こくなるとおもはまし 柳のめはむひはの村鳥(山家集 下)
 
[山雀ヤマガラ]
山雀は平に温也物わすれ 心をつよふし智恵をよくます(食物和歌本草 五)
 
もみぢ葉に衣の色はしみにけり 秋の山からめぐりこしまに
                        (拾遺和歌集 七物名 すけみ)
 
山がらのまはすくるみのとにかくに もちあつかふは心なりけり
                            (新撰六帖 六 光俊)
 
この内も猶うらやまし山がらの みのほどかくすゆふがほのやど
                    (夫木和歌抄 二十七山陵鳥 寂蓮法師)
 
山がらがさのみもどりをうつのみや 都に入て出もやらぬは(太平記 十七)
 
[四十雀シジウカラ]
四十雀平なり甘く気力まし 身をかろくして足を強す(食物和歌本草 六)
 
あさまだき四十からめぞたゝくなる 冬ごもりせるむしのすみかを
                    (夫木和歌抄 二十七四十唐 寂蓮法師)
 
[小雀コガラ]
冬野にはこがら山がらとびちりて また色々の草のはらかな(新撰六帖 二 行実)
 
ならびゐてともをはなれぬこがらめの ねぐらにたのむしひの下枝(山家集 下)
 
春きてもみよかし人の山ざとに こがらむれゐる梅のたちえを(拾玉集 四)
 
み山べの嵐にうつるこがらめは 時雨にのこる木のはとぞみる(土御門院御集)
 
[鶲ヒタキ]
百敷にすみかさだめよひたきどり なれがやどりも庭にみゆめり(源師光)
思ひかね柴とりくぶる山里を 猶さびしとやひたきなく也(寂蓮法師)
                         (夫木和歌抄 二十七火焼鳥)
 
[松菟マツムシリ・マツクグリ]
み山ぎの雪ふるすよりうかれきて 軒ばにつたふ松むしりかな(藻塩草 十鳥)

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