04a 植物の世界「世界一の植物たち」
〈最高樹高の木〉
一年中強い風が吹き通るような尾根などにおいては,木が生えていても幹は真っ直ぐ
に立つことなく,風下に傾き,樹高も低くなっています。
木は光を求めて上へ上へと伸長します。しかし無限に伸びることは出来ません。幹の
強度は勿論,幹を支える根張りの強さ,幹の上方まで水を送る通道システムは,風が弱
いところであっても,整わなければならないからです。
最高の樹高は,オーストラリアのヴィクトリア州のボーボー山にあったユーカリの一
種エウカリプトゥス・レグナンスであったらしい。1885年の報告書においては,143mと記
録されています。
現在の樹木では,アメリカのレッドウッド国立公園にあるセコイアメスギで,1991年
の測定では111.25mありました。
同じアメリカのセコイア国立公園の「ジェネラル・シャーマン」と呼ばれるセコイアオ
スギは,1989年の測定では樹高は83.82mで,地表から1.4mのところの周囲が25.3mもあり
ました。これは世界において最も巨大な木と云われています。この木からマッチ棒なら
50億本も作れると推定されます。
オーストラリアと北アメリカの太平洋側には,このほかにも100mを超す樹高を持つ木
が記録されています。オーストラリアにおいてはユーカリの仲間,北アメリカの太平洋
側においては針葉樹です。何故,この二地域にだけ100mを超える樹高を持つ木が集中し
ているのでしょうか。それは未だ謎です。
日本人は木の高さよりも,その太さに関心が強い。各地の巨木を訪ねても,周囲の大
きさだけで,樹高の記載があまりありません。
天然記念物に指定された木としては,宮崎県西諸県ニシモロガタ郡高原タカハル町の狭野サノ神社
境内にある「狭野の杉並木」は,樹高60mと記録されています。スギにはこのほかにも,
60mを超す樹高を持つ木があると推測されます。
イチョウ,クスノキ,ケヤキも巨木になりますが,60mを超えることはないようです。
わが国と同じ島国のイギリスにおいて最も高い木は,植栽された針葉樹のヨーロッパ
トウヒとアメリカトガサワラ(ダグラスモミ)で,60m程です。木の高さがどのような条
件によって決まるのか,興味ある問題です。
バンヤンジュ,即ちクワ科のベンガルボダイジュは,1本の木から森を造ることで名
高い。1本の木が森と云える程の広大な樹冠を作る訳で,世界最大の樹冠を持つ木です。
カルカッタ郊外にあるインド植物園のベンガルボダイジュは,1770年頃から生長を始め
たと推定され,今では樹冠から1000本以上の支根を垂らし,面積が1.6haにもなる森を形
成しています。
陸上とは異なる環境において生きる海藻はどうでしょうか。確かな記録としては,ジ
ャイアント・ケルプ(英名)と呼ばれるコンブの仲間のオオウキモが,長さ60mで最長で
す。かつて南アメリカのティエラ・デル・フエゴ島の海藻が,長さ300mにも達すると云わ
れたことがありますが,真偽の程は分かりません。わが国においては,北海道の太平洋
岸に分布するナガコンブが最長で15m以上,大きなものでは20mにも及びます。
〈最高樹齢の木〉
わが国においても,樹齢1000年を超す老樹は珍しくありません。人ヒトの寿命が延びた
とは云え,木の寿命とは比べものにはなりません。
木が長寿なのは,死んだ細胞の外側に,形成層と呼ばれる部分から新しい細胞を次々
と生み出すことが出来ることと関係しています。木の大半は死んだ細胞の集まりで,実
際に生きている細胞は少ない。木は,死んだ細胞を捨てずに共有し,これを活用してい
ると云って良い。
これまでに記録された最高樹齢は,アメリカのカリフォルニア州シエラネヴァダ山中
において発見されたマツの一種ピヌス・ロンガエウァの「WPN-114」と呼ばれた個体で,
樹齢5100年でした。現存の木では同じカリフォルニア州のホワイトマウンテンの標高
3050mに生える同種のマツの木で,樹齢4700年と推定されています。
わが国の屋久島ヤクシマのスギも,樹齢においては世界的です。屋久島においては樹齢
1000年を超すスギを屋久スギと呼びますが,その中には炭素同位体を用いた推定法によ
って,樹齢5200年とされた木もあります。
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