23b 竹箆圏チクヒケンの人々と竹〈竹の諺コトワザ〉
た行
倒された竹は起き上がり,倒した雪はあとかたもなし:障害はすぐ消えて,輝かしい
光が必ず来るということでしょう。
竹植える日は蓑と笠:竹は移植時に根が白く乾燥しますと活着が難しいですので,雨
の日に植えること,その後の生育もよいです。
竹笹は四十年に一度開花結実する:山口県でいわれています。
竹裂き三年:竹裂きは笊,篭を編むより以前の準備操作で,竹ごしらえともいい,こ
の方が編むことより難しく,3年もかからないと一人前に上手に割れないとの意で
す。
竹笊で溶いだ米はうまい:糖をはじめ夾雑物がよく選別されるのでうまいのか,竹に
含まれる成分のためでしょうか。
竹と木の箸を一緒に使うと不具の子が生まれる:伝説にすぎません(長崎,神奈川,
大分,島根,佐賀,岐阜,静岡,三重,宮城,兵庫など)。
竹と竹編んでしっかり強い岸:川岸に竹が生え,地下茎が土手を保護しますと川岸を
守ります。
竹と人の心の直なものは少ない:竹は伐り倒してみると直なものは案外少ないもので
す。
竹に油を塗ったようだ:若々しいつやつやした美しさをいいます。
竹に鴬:兵庫県などで,気狂いしたことをいいます。
竹に木を接ぐ:不調和のことです。なお,竹細工における継ぎ竿の場合は,ホテイチ
ク,次いでコウヤチク(スズダケ),ヤダケ,マダケの順に組み合わせるなど,各
竹の特性を考慮します。
竹に雀:「竹に雀は品よく止まる。止めてとまらぬが恋の道」の後略で,縁起がまこ
とによいです。
また,観修寺家,伊達家などの紋所で,笹竹の丸の内にスズメを向き合わせた図
柄はその取り合わせがいいです。
竹になりたや:竹は元から先(竹の皮,筍,実,地下茎,稈,枝葉)まですべて利用
されます。従って昔から人口に膾炙カイシャされてきたものです。
竹に花が咲くと家に不吉なことがある:秋田でいわれています。
竹に花が咲くと凶作:昔は竹の開花は豊年の印といわれていましたが,1700年代から
凶作の印だといいだしました。この果実は虫がつかず,乾燥して天井などに吊るし
ておき,凶年に出して食糧としたことから,花が咲くと凶作だといいだしたもので
しょう。
「竹や笹に実のなる年は飢饉」参照
竹に花が咲くと国に一大事がある:東アジア一円でいわれています。
竹に花が咲けば,流行ハヤリ病がはやる:山梨県でいわれる単なる迷信です。
竹に花が咲けば世の中が悪い:景気が悪くなることで,青森県五戸でいわれる単なる
迷信でしょう。
竹の皮を焚くと火に祟る:昔は竹の皮でもいろいろ利用できますので,焼いてはもっ
たいないとの意で,石川県でいいます。
竹の管から天のぞく:見識の頗る狭いことの喩で,「針の孔から天をのぞく」に同じ
です。
筍が網を張れば田植時となる:大分県竹田付近の諺で,網を張るとは若枝を伸ばすこ
とです。
筍が育つよう:ぐんぐん調子よく育つことです。
筍で損をしたよう:目にみえる損をいいます。早生筍は,次々と多く出るので値が下
がり,同時に前日のものは品質が低下して買い手さえなくなります。
筍とクマの肝イは胃病を起こす:秋田では,胃が絶えず悪くてクマの肝を呑んでいる
ような人は,筍のような不消化のものを食ってはなりませんとの意です。
筍博徒トバクで出ればとられる:道端の筍は出ると採られます。すなわち出ると負け,
いつも負けてばかりいる博打ちをいいます。
筍の親まさり:竹はどこから眺めても親竹より筍が長く伸びるとの諺です。
@竹は2年生以後のものは葉がよく茂り,重くなって枝先が垂れますが,1年生の
竹は枝葉が軽いのでまっすぐ伸びて,いかにも背が高く見えます。
A太さでは,竹の子が伸びたままの若竹が最も太いです。マダケでは1年生の胴廻
り30pのものは3年後には27〜28.5pに細くなります。
B竹薮は手入れさえよくしていますと,細いものが枯死していき,だんだん太い竹
林となっていきます。
筍の親まさりの年は嵐がない:茨城,愛知でいわれます諺です。
筍の田楽デンガクで節に味噌がつく:歌が下手で,節廻しをしくじることにかけたしゃ
れです。
筍の隣トナリ遊び:子供と筍は遊び場に遠慮しません。すなわち筍は隣家の地面でも構
わず生えます。
筍の番をするよう:やぶにらみの人をいいます。
筍の虫に食われたものを食うと癩病になる:秋田でいわれています。
筍の夢をみると人が死ぬ:滋賀県でいいます(竹を植えると死ぬの転でしょう)。
筍を指すと筍が腐る:鹿児島県などでいいます。「筍の夢をみると人が死ぬ」より民
主的なものです。
筍を指すと手(指)が腐る:若い筍は折れやすいので,子供に手を触れさせないよう
に言った筍の保護策です。長崎県壱岐島ではもしあやまって指したら,その指を噛
む真似をすればよいといわれています。
竹の切り株の水は毒がある:竹の切り株の水には蚊が発生するので嫌うなど,山口県
でいいます。
竹の先で蛇をはねる:高知県で軽率にものを処理してしまうことをいいます。
竹の先に鈴をつけたよう:多弁なことの形容,構わず何んでもしゃべってしまう人の
喩です。「笹の葉に鈴」,「笹の先へ鈴」,「笹葉に火のついたよう」,「竿の先
の鈴」などの類語があります。
竹の胴乱で来るに及ばぬ:動乱は薬・印などを入れる小さいものです。それをあまり
入れ物の大き過ぎる喩に高知県などでいいます。
竹の苗は西南方の株をとって東北方へ植える:竹の地下茎は決まって西南方に伸びま
すので,西南方の地下茎が最も若いことになりますので,これを苗として植えると
きに東北方へ植えますとよく繁るということです。
はじめて植える場合については,花傭月令にもでていますが迷信に過ぎないでし
ょう。
竹の根が高処より出ると風害あり:全く関係ありません。
竹の葉から露が落ちると晴:快晴の朝は空気中の温度は下がりますが,地中の温度は
急には下がりませんので,根圧が高くなって水分を押し上げるためです。
竹の柱に萱の屋根,ともに白髪の生えるまで:めでたい喩です。
竹の花は根が触れると咲く(花傭月令):竹は久しくたって根が触れ合うと花が咲く
ということですが,滅多に花が咲かないからの喩でしょう。
竹の花は六十年目に咲く:竹の開花周期は50〜120年,笹は30〜40年といわれていま
すので,化学的根拠は全くありません。なお中国では,十干十二支の思想に基づき
滅多に起こらない出来事を,すべて60年としたことによります。
竹の葉に掛けし衣:畜類にまで及ぶ深い慈悲の喩です。
竹の火の土瓶をかけると割れる:竹稈を焚くと,火力が強過ぎて鍋底がすぐ傷ついて
しまいます。そのため笹葉は燃料として適当でありません。
竹の二又,世の不思議:二又の竹は極く稀ですので,無いものの喩です。
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