20c 園芸植物用語解説その2
 
[は]
葉ハ:高等植物の基本的な栄養器官の一つ。茎に着く扁平な器官で,普通の葉は葉身,葉
 柄,托葉の3部からなるが,往々托葉や葉柄を欠くことがある。本来葉は炭酸同化作
 用,発散作用を行い,併せて呼吸作用のためのガス交換の通路となるものであるが,
 包葉,鱗片葉,花葉など,ほかの役割に変わっているものもある。
胚ハイ:種子の本体。胚珠の中で卵細胞の受精によってできた植物の幼体で,胚軸,子葉,
 幼葉,幼根の4部からなる。
配偶体ハイグウタイ:胞子体に対する語。世代交代をする植物において,精子と卵子とを生じ
 て有性的に生殖を行う世代の植物体。シダ類では前葉体がこれに当たる。
胚珠ハイシュ(卵子とも):子房の中にある小さな粒。受精後は生長して種子となるもので,
 頂上に花粉管の入る珠孔と称する孔がある。形により直生胚珠,倒生胚珠,湾生胚珠
 がある。
倍数体バイスウタイ育種イクシュ:コルヒチン液で処理して,染色体の数が2倍,3倍,4倍の個
 体を育てること。
胚乳ハイニュウ:種子の中に含まれた発芽のための貯蔵養分で,澱粉,蛋白質,脂肪などを含
 む。胚乳のない植物もある。
培養土バイヨウド(用土・植土とも):植物を培養するために用いる栄養分のある土。
箱接ぎハコツギ:接木の一方法。台木の幹が接穂より太い場合に応用する。台木に箱形の四
 角い孔を空けて,其処に箱形に切り取った接穂を差し込む方法。
葉挿しハザシ:挿木の一方法。葉を挿して殖やすことで,その挿し方に次の方法がある。
 @葉の全部を挿す。A葉を縦又は横に切断して挿す。B葉脈を切断して挿す。C葉柄
 を着けて挿す。D葉腋の芽を着けて挿す。
波状ハジョウ取木法トリキホウ:取木の一方法。長い蔓枝のあるものに応用する。蔓枝を横に寝
 せて,上下に波状に曲げて下方の湾曲部を地中に埋め,上方を地上に出して置く方法。
鉢巻きハチマキ:樹木を移植するとき,根株の土を落とさないよう,また根と土との密着を
 図るため,藁ワラや菰コモを巻き,縄で堅く巻き締めて保護すること。
鉢物ハチモノ:鉢作りにしたもの。ただし盆栽は含まれない。
白化ハッカ:緑色植物に葉緑素の形成が見られず,白色になる現象。ただし植物を暗所に置
 いて生ずる斑入りとは別である。
花ハナ:種子植物の生殖器官。被子植物の模式的な花は,葉の変形とみられる萼ガク,花
 冠,雄蘂オシベ,雌蘂メシベの4要素からなり,これに花床や色などが付属する。雄蘂と
 雌蘂とは生殖に不可欠の器官,萼と花冠はその保護器官である。花冠を欠くもの,ま
 た萼,花冠共に欠くものもある。雌蘂は子房を作って中に胚珠を入れ,受精後は種子
 となる。1花中において雄蘂又は雌蘂の一方が退化すれば,それぞれ雄花又は雌花と
 なる。裸子植物の花は萼,花冠を欠き,初めから雄花,雌花が別々の花として発生す
 る。雌蘂は子房を作らず,胚珠は剥き出しである。
花芽ハナメ:葉芽に対して花だけを発生する芽。
バーナリゼーション(vernalization,ヤロビゼーション・春化処理とも):初め旧ソ連
 のルイセンコが唱えた説。秋蒔きコムギを春蒔きにすると,普通は出穂しないか,又
 は出穂が著しく遅れるものであるが,予め幼植物のうちに,ある期間低温に遭わせる
 と,出穂するようになる。このことを実地に応用して作物の開花,結実を調節する処
 理のこと。
パピリオ咲き(papilio):花弁の縁が縮れて,花弁が捩れている咲き方。例:カンナ。
葉芽ハメ:葉だけを発生する芽。
葉芽挿しハメザシ:挿木の一方法。成葉に腋芽及びその基部の茎を少し着けて挿す方法。
葉物ハモノ → 観葉植物
春枝ハルエダ:発育枝の生長が一度止まり,その後再び生育を始めた枝。特にミカン類では
 初期に伸びた枝のこと。その後に伸びたものは夏枝,秋枝と呼ぶ。
春挿しハルザシ:挿木の一方法。3月上旬〜4月下旬に挿すこと。
春接ぎハルツギ:接木の一方法。大体発芽の2〜3週間前を標準として行う接木。
バルブ(bulb) → 偽球茎・鱗茎
春蒔一年草ハルマキイチネンソウ:一年草で春に種子を蒔くもの。例:アサガオ・コスモス。
攀縁茎ハンエンケイ:巻き鬚ヒゲ,気根,葉柄,吸盤などで岩壁や支柱などに攀ヨじ登る茎。例
 :キズタ・ブドウ。
半寄生植物ハンキセイショクブツ:寄生植物であるが,葉緑を持ち,自身でも炭酸同化を行う植物
 をいう。例:ヤドリギ。
半懸崖ハンケンガイ:懸崖よりは梢端の下り方が少なく,通常は根とほぼ同一の水平面位まで
 下がっているもの。例:キク。
半常緑ハンジョウリョク(半落葉とも):秋に半ば葉を落とし,一部分の葉が冬を越すもの。例
 :スイカズラ・ヤマツツジ。
半促成栽培ハンソクセイサイバイ:球根を露地に植えて自然の低温に晒した後促成する方法。
半地中植物ハンチチュウショクブツ:ラウンケルの生活形の一つで,冬芽が地表面に密着し形成さ
 れるものをいう。例:タンポポ・ナズナ。
 
[ひ]
蘖ヒコバエ(根吹きとも):根元や太い幹から不規則に伸び出す小枝。
鬚根ヒゲネ:ネギやムギなどのように多数の細い根が束生して鬚状になった根。胚の幼根
 から出る主根は間もなく生長が止まり,茎の下部から多数の根が出るためにこのよう
 になる。
被子植物ヒシショクブツ:種子植物の中の一分類群で,裸子植物と対立する。多くは花に花被
 があり,心皮は子房を作り,胚珠はその中に包まれる。従って種子は果実の中に包ま
 れる。木部には道管が発達する。双子葉植物と単子葉植物の2群に分けられる。
左巻きヒダリマキ:アサガオ,フジなどのように蔓性の茎が支柱に巻き付くときの巻き方。
 支柱を真上から見たとき,茎の先端が時計回りと反対に巻くこと。
一重咲きヒトエザキ:花冠の裂片や花弁が一重になって咲く花。
一芽挿しヒトメザシ:挿木の一方法。充実した芽を中心にして,その上下に茎を着けて切り
 取って挿す方法。
ビニールハウス栽培(vinyl house):ビニールハウスを利用して,生育期間中の温度を
 高めて熟期を促進する栽培法。
肥培木ヒバイギ:主要樹木の育成に当たり,根瘤バクテリアの作用により窒素を地中に固
 定する木を,共に植付けて置くと,その窒素が主要樹木の肥料に利用される。マメ科
 の植物に多い。例:ハギ・レンゲ。
被覆作物ヒフクサクモツ:果樹園の間作として栽培する緑肥作物を特に被覆作物と呼んでいる。
 肥料の補給を図り,土壌の浸蝕を防ぐことが目的である。例:ゲンゲ。
微毛ビモウ:肉眼では殆ど認められないような細かい毛。例:ヌスビトハギやフジカンゾ
 ウの果実の表面に圧着する鉤状の毛や,ハギの葉の裏の毛など。
皮目ヒモク:樹木の小枝の表面に現れる隆起した小点のことで,枝が肥大生長するに従って
 横又は縦に広がり,呼吸の働きをする。例:サクラ・シラカバ。
品種ヒンシュ:植物分類学上の最も下の階級で,種又は変種とは僅かの形質の差で区別され
 る。品種は一般に園芸(栽培)品種を指す。
品種改良ヒンシュカイリョウ(育種とも):園芸(栽培)植物を改良して,一段と利用価値の高い
 新品種や新雑種を育成すること。
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