18d 植物の見方2
 
●花序
 花は茎の先端や葉腋ヨウエキに1個または多数付きますが,その付き方にはある規律があ
り,これを花序カジョといいます。茎又は枝の先端に咲くものを頂生チョウセイ,葉腋に咲くも
のを腋生エキセイ,葉のない古い枝又は幹に付き咲くものを茎生ケイセイ,地下茎チカケイから直接
伸びて咲くものを根生コンセイといいます。花序を付ける柄を花柄カヘイ又は花梗カコウ,花に柄
があれば小花柄ショウカヘイ又は小柄ショウヘイといいます。特に葉を付けない花柄が根生し,先に
花を付けるものを花茎カケイと呼び,タンポポ類,スイセン,ヒガンバナなどに見られま
す。花序は二つに大別できます。その一つは花序の花が下部から上方へと,又は周辺部
から中心部へと咲く一群で,これを無限ムゲン花序といいます。もう一つは花序の花は上
部から下方へと,又は中心から周辺部へと咲いて行く一群で,これを有限ユウゲン花序とい
います。
@無限花序
 穂状スイジョウ花序:細長く伸長する主軸シュジクに柄のない花を付けるもので,イノコヅ
チ,オオバコ,キンミズヒキ,クマツヅラ,コムギなどがあります。
 総状ソウジョウ花序:最も普通に見られる花序で,主軸は無限に伸長し,対生タイセイ又は互
生ゴセイに柄を出し,その先に花をつけるもので,ナズナ,アブラナ,ミズヒキ,フジ,
ドクウツギ,クガイソウ,イチヤクソウなどがあります。
 散房サンボウ花序:主軸より出る側生ソクセイの花柄の上面が一様に平坦をなすか,或いは多
少凸面をなすもので,オミナエシ,セイヨウフウチョウソウなどがあります。その構造
は総状花序と基本的には同じです。アブラナやナズナなどアブラナ科の花序は,咲き始
めの頃は下方の柄が早く伸びるため花序は平坦となり散房花序的ですが,果実期には総
状花序となります。
 散形サンケイ花序:花序の茎が短縮し,1か所より殆ど同長の柄を放射状に伸ばし,先に
花を付けるもので,セリ科,ウコギ科,サクラソウなどがあります。花序の形が唐傘カラ
カサに似ています。
 複散形フクサンケイ花序:散形花序の柄の先端にもう一つの散形花序が重複したもので,セ
リ科に見られます(セリ科の単散形花序を小散形花序として区別することもあります)。
 頭状トウジョウ花序:大きな花床カショウ面に柄のない花が密集して頭状をなすもので,シロ
ツメクサ,キク科,マツムシソウ,ホシクサ科などがあります。
 円錐エンスイ花序:複合花序の一つで,枝は何回も分枝ブンシしますが,下方の枝ほど分枝
が著しく,外形が円錐状の輪郭をなすものです。分枝した枝の花序は穂状,散形,頭状
などがあり,イネ科,ネズミモチ,ナンテン,ウド,セイタカアワダチソウ,ヌルデな
どです。
 尾状ビジョウ花序:穂状花序の一型で細長い花軸カジクに多数の花弁のない単性花を密集
するもので多くは下垂します。ヤマモモ科,ヤナギ科,クルミ科,カバノキ科,ブナ科
などに見られます。
 肉穂ニクスイ花序:穂状花序の一型で,花序の軸が多肉となり,小さな花が表面に密集す
るもので,サトイモ科に普通に見られ,ミズバショウやザゼンソウに良い例が見られま
す。
A有限花序
 複二枝集散フクニシシュウサン花序:岐散キサン花序とも呼び,花軸の頂端の花が咲き終わるとそ
の下から両側へ枝を出してそれぞれの先に花を付け,分かれたそれぞれの枝は更に2個
の側枝を伸ばして先に花を付けることを繰り返していく花序です。ノミノツヅリやオオ
ヤマハコベなどナデシコ科に普通で,マユミやガクアジサイなどにも見られます。花軸
の頂端に花が1個付くほか,側方に1個の枝を分けるのを単一集散花序,両側へ出すも
のを単二枝集散花序といいますが,これらはおよそ連続してしまう花序です。
 巻散ケンサン花序:蝸牛カタツムリ形花序ともいい,花軸の頂に花が付き,次にその下から主軸
とほぼ直角に枝を出して花を付けます。これを順次繰り返し枝を出し花を付けていくも
ので,一方の側だけが発達し,螺旋ラセン状をなしていく花序です。モウセンゴケに良い例
が見られます。
 鎌形カマガタ花序:花軸の頂に花が付き,次にその基部の枝が伸びて花を付けます。これ
を順次繰り返し一方にのみ枝が伸び,渦巻き状となるもので,ヒレハリソウなどムラサ
キ科に見られます。
 互散ゴサン花序:蠍サソリ形花序ともいい,まず花軸の頂に花が付き,次にその下から左右
交互に枝分かれを繰り返して,ジグザグになって咲く花序です。グラジオラス,ヒナノ
ウスツボなどに見られます。
 扇形オウギケイ花序:互散花序に似ていますが,花序の下方の枝が高く伸びて花序の先端
は平坦面をなすもので,ヒオウギ,ゴクラクチョウカなどに見られます。
 杯状ハイジョウ花序:トウダイグサ科に見られます花序です。花軸と苞葉ホウヨウが変態して
杯状となり,中に数個の退化した雄花オバナがあり,杯の底に1個の雌花メバナがあります。
 
 花や花序には普通苞ホウ又は葉状ヨウジョウの形をしたものを苞葉ホウヨウと呼ぶ小型の鱗片葉
リンペンヨウが付いています。何個かの苞が輪生状リンセイジョウに花序の外側又は下部にあって花
序を保護するものを総苞ソウホウといい,キク科やホシクサ科などに見られます。ブナ科の
どんぐりの周囲に付く殻斗カクトと呼ばれるものも総苞の一つで,硬いお椀形の殻を作って
います。サトイモ科やヤシ科には1枚の大きな総苞が管状カンジョウをなし,上は広がって
花序を包む仏炎苞ブツエンホウという特殊なものを作ります。イネ科植物では小穂ショウスイの基
部に穎エイと呼ばれる苞が2個あります。ドクダミ,ヤマボウシ,ポインセチアのように
大きな花弁状の苞が付く花もあります。
 萼片ガクヘンや花が蕾ツボミのときの重なり方は種類によって一定していますので,分類上
の重要な形質として用いられます。
 敷石状シキイシジョウは各片の縁辺エンペンが接しているだけで重なり合わないもので,キキョ
ウ科,アカバナ科などに見られます。
 回旋状カイセンジョウは各片の1辺の縁辺が次の縁辺を覆い,反対側の縁辺は後の縁辺に覆
われもので,ヒルガオ科,リンドウ科に見られますように蕾は渦巻き形をしています。
 覆瓦状フクガジョウは外側のものが内側のものの上に互い違いに重なるもので,ナデシコ
科,クマツヅラ科などに見られます。
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