福田昌範の吹奏楽講座

第6章 テンポについて考える

 

 吹奏楽を指導するに当たってテンポは重要な課題です。

 指揮者の考えによってテンポはさばざまに変化します。、奏者の考えによってもテンポは変わりますが、
中学生や高校生などのアマチュアの演奏者を指導する場合、曲(フレーズ)の難易度によって、
奏者が無意識のうちに、テンポを変えていることも多く見受けられます。

 ここでは、吹奏楽の合理的なテンポの練習の仕方についてお話します。

 


レッスンその1

メトロノームを使おう

 

                     〜練習方法〜

1 メトロノームを指揮台の横にセットします。

できるだけ、高い場所にセットしましょう。(遠くからでも見えるように。)

*曲の練習は、最大で倍速(例:4分音符=80の曲だったら、8分音符=80)から
 練習しましょう。
(その際に、遅いテンポの時(例えば、倍速遅い場合)は、当然音の長さも長く(倍の長さ)になる
 ことも忘れないようにしましょう。)

2 メトロノームを見て合奏しましょう。

*練習の際には、指揮者(メトロノーム)を見て合奏する習慣をつけましょう。

 よく、キーボードをアンプにつないで「カッカッカッ」と大音量で練習している風景を見ますが、
(リズムの練習には有効ですが、)できるだけ指揮者(メトロノーム)をよく見て練習する習慣をつけましょう。
また、スピーカーやアンプを使用する事はトレーニングの一環としては有効ですが、
最前列のFlやClaなどから、「難聴」などの病人?が続出しないように配慮しましょう。
また、指揮台を棒(指揮棒など)で叩いての練習は、臨機応変に行うと有効です。
(指揮者は、左手の練習にもなります。)

 また、この「見る」練習は、奏者の暗譜の練習にも役に立ちます。是非試してみてください。
(指導者は、メトロノームに合わせて指揮を振ってみるのも、指揮の練習にも有効です。)

 

               *ワンポイントアドヴァイス

*メトロノームは大きいジャンボメトロノームをお薦めします。

 これは、遠くから見えるようにする配慮なのですが、メトロノームの振り子のおもりの部分に
募金などの羽をつけて見易くするのも、良い方法です。

 

 


レッスンその2

練習のテンポを設定しよう

 

          〜練習方法〜

1 練習のテンポにあわせて、合奏します。

*練習のテンポは、曲の難易度によって指導者が決めます。
(その際に、倍速以上にはおとさないようにしましょう。)

*習熟度に応じて、徐々にメトロノームのテンポを上げていきましょう。

2 テンポ設定表を作ろう。

*目安の表を作って、コンサートやコンクールの2〜3週間前くらいには、
 インテンポになるようにしましょう。
(テンポを上げる際には、急に速い速度には、あげないようにしましょう。)

3 曲の分析をし、音楽を感じよう。

*ゆっくりなテンポの中で、音楽(フレーズ)やハーモニーの分析を行いましょう。
ゆっくりな練習は、演奏者にフレーズを意考える時間を与えることができます。
また、ロングトーンや和音の練習にもなりますので、有効的な練習方法です。

 

 

              *ワンポイントアドヴァイス

*メトロノームは一人1台をお薦めします。

 これは、練習の際に個々の目標を立てて練習するのが目的です。パートで1台では
個人差はなかなか埋まりづらくなってしまいます。

 また、メトロノームはできるだけ、針式の物をお薦めします。個人練習は電子音の
メトロノームでも仕方がないとしても、パート練習は必ず振り子式の物にしましょう。

 

 


レッスンその3

インテンポで合奏しよう

 

1 インテンポ練習でもメトロノームでがっちりテンポを固めよう。

*インテンポになると、とたんにメトロノームを外して、指揮を振りたくなるのが指導者の性(さが)?

 しかし、意外に演奏者は吹けていなかったり、テンポにのれていなかったりするものです。
インテンポにテンポが上がっても、2〜3日はメトロノームからあまり離れず練習してみましょう。

2 メトロノームと指揮を併用しよう。

 バンドのサウンドやテンポがしっかり固まってきたら、「指揮とメトロノームを併用」して練習し、
来るべき本番に備えましょう。
(アゴーギクなどをつけるときも、この「指揮でアゴーギク」「メトロノームで基本形」という
 2つの方法を併用して練習しましょう。基礎に立ち返るということも重要な練習です。)

 

 

                      *ワンポイントアドヴァイス

*自分の指揮を過信しないようにしましょう。

 「どんなに有能な指揮者でも、いつも同じテンポで演奏する事は不可能です。」
というのは、本番の流れを指揮者は大切にしているからなのです。
 本番の雰囲気やステージ・会場の雰囲気が絡み合い、微妙なテンポを醸し出してゆき、
感動できる本番のテンポを指揮者はバンドと一体となって作り出してゆくのですが、
それは「プロのバンド」の話!
 こと、アマチュア、しかもコンクールとあっては、その法則はなかなか成り立ちません。

 アマチュアのバンドの指揮する際に、指揮者が練習と違うテンポで本番を振り、演奏が崩壊
してしまったり、さらにはバンドのメンバーがら酷評がでたりするのはよくあることです。
 その時、指揮者が「本番のテンポは、あの会場の雰囲気では最高の設定だった。」
などと、プロまがいの発言?をしたところで、力が発揮できなかったメンバーには
なかなか理解してもらえません。(そこが、指揮者のつらいところです。)
 最後の最後まで、指揮者(指導者)は、演奏者がきちんとしたテンポ(練習どおりのテンポ)で
本番で演奏できるように最大の配慮を払わなくてはならないのです。

 そして「練習どおりの力を、コンクールの7〜12分間で発揮できるようにする。」
この経験が、やがては長いコンサートでのバンドの活力や集中力になり、
最終的には、指揮者との融合につながってきます。

指揮者の力とバンドの力が高い次元で均衡する事こそが、感動の演奏への第一歩なのです。

 

(C)2017 Masanori Fukuda

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