福田昌範の吹奏楽講座
第20章 アンサンブルの向上について考える(その2)
豊かな音と大きい音の違いについて |
プロのソロやアンサンブル(合奏を含む)を聴いて、アマチュアの方から よく聴かれる言葉が、「大きい音」と言う言葉、でもプロは「豊かな音」で 吹こうと思っているだけで、決して「大きい音」で吹いているわけではないのです。 その実態をわかりやすく説明してみたいと思います。 |
考察1:習熟度によるバンドの内情 |
中高生の場合、楽器を練習している経験年数にはさほど差はないものの、
習熟度や体の発達状況に応じて良い音で演奏できる人とそうでない人との差が、
わずかながらバンドの中にあると思われます。
大学生や一般バンドの場合は、それぞれが育った環境も違い、楽器を経験している年数もまばらなため、
いろいろな観点で個々の習熟度はあまり均整がとれていない可能性があります。
特に一般バンドに於いては、そのメンバーの中に音楽を専門に勉強している人とそうでない人が
点在している場合は、ますます音質の均整がとりづらくなる可能性があります。
考察2:プロとアマチュアとの最大の違い |
プロとアマチュアとの違いの一番大きな違いは、ズバリ「音」です。私もそうですが、
プロはテクニックを磨くのはもちろんのこと、音を重視して、「常に良い音で吹く。」事を
自然と心がけているものです。
この「自然と」という事も、プロとアマチュアとの意識の大きな違いであると言えます。
アマチュアは常に良い音で吹くよう心がけなくてはいけませんし、プロはいつでも良い音で吹けるように
常日頃から努力と準備を怠ってはいけません。
また、「良い音=豊かな音」という図式は常に成り立つもので、
プロのソロやアンサンブルや合奏の演奏を聴いて「大きい音だなぁ・・・・。」と感じた方は、
この「豊かな音」を感じとっているのでしょう。
考察3:音の均整化によるバンドの弱体化 |
考察1で述べた、一般バンドを例にとって、ここで音の均整化によるバンドの弱体化について
述べてみたいと思います。
「一般バンドに於いては、そのメンバーの中に音楽を専門に勉強している人が点在していると、
ますます他の人と音は均整がとれなくなります。」
この一節を用います。
<弱体化例:その1>
あるパートで右のような
5人の奏者がいたとします。 ○ ▲ □ ◎ ☆
この中で最も音が豊かなのは ○ ▲ □ ◎ ☆
◎さんで、他の4人はあまり良い音で
演奏できません。(悪い音)
考察2で述べたとおり
「良い音=豊かな音=大きく聞こえる(倍音が豊か)」
と言うことにつながるのですが・・・・、
このバンド指導者は「バランスをとりたい」為に、
しかたなく,豊かな音で演奏している◎さんの音量を抑え、
他のあまり良い音で演奏できない4人(悪い音)の響きに
揃えてしまいました。
○ ▲ □ ◎ ×
確かに、バランスは良くなったように感じるかもしれませんが、
「全体の音の響きは負の方向」へ向かってしまいました。
<弱体化例:その2>
先ほどと同じくこの中で最も音が豊かなのは ○ ▲ □ ◎ ×
◎さんで、他の4人はあまり良い音で
演奏できません。(悪い音)
考察2で述べたとおり
「良い音=豊かな音=大きく聞こえる(倍音が豊か)」
と言うことにつながるのですが・・・・、
このバンド指導者は「バランスをとりたい」為に、
しかたなく、他のあまり良い音で演奏できない4人(悪い音)の音量を
上げることを指示し、豊かな音で演奏している◎さんの音量
に合わせるよう指示しました。
しかしここで、音の良くない×さんを例にとって、音の良くない×さんの音量を上げてみます。
すると・・・・。
× → × → × → ×
そうなのです。音の良くない×さんは、音量を上げても結局音が悪いまま、
つまり「大きい音=良い音」にはならないのです。
という訳で、全員の音量を上げたところで、
○ ▲ □ ◎ ×
確かに、バランスは良くなったように感じるかもしれませんが、
良い音◎さんの音は、悪い音のほかの4人に囲まれてしまい
「全体の音の響きは負の方向」へ向かってしまいました。
これらの問題は、大人数の合奏になればなるほど、
深刻な問題へと発展していきます。
これらの問題(バンドの弱体化)を解決するためには、
「全員で豊かな音で吹けるように努力する。」事が大切なのです。
「疲れた〜ッ!」って何が?? |
最後に一言・・・・・・。
よくアマチュアの人から合奏の練習終了後「疲れた〜ッ!」と言う言葉をよく聞きます。
話を聞いてみると「体力が・・・・・。もう、へとへと・・・・・・。」等と、体力的なことを中心に
言っている人が多いようですが、
プロは「精神的に疲れる。」事がほとんどなのです。
プロは、豊かな音で吹くことはもちろんのこと、アンサンブル(周りの演奏者)について、
音程について、音色について、フレージングについてなどなど、ありとあらゆることを瞬時に感じ取って
演奏しているのです。’(少なくとも、自分のことばかり考えて演奏しているプロは一人もいません。)
このページを見ているアマチュアの皆さんも、練習(演奏)中にこのようないろいろな事を考えられる
演奏者になってくださいね。
(C)2017 Masanori Fukuda
このページをダウンロードする際には、必ずメールでご連絡ください。 (無断転用禁止)