福田昌範の吹奏楽講座

第2章 曲の性質を考える

 現代は、多種多様な音楽が演奏されています。そのジャンルはとても数えることが出来ないほど多く、
中には、現代音楽のような、なかなか理解しがたい?音楽もあり、音楽愛好者などは
いったいどのような音楽が良い音楽なのか、判断するにも困ってしまいます。

 しかし、多くの楽曲は曲の中のフレーズで各々の判断をすることも可能です。
フレーズは大きく分けて、4つの性質に分類することが出来ます。それは、

「明るい」  「暗い」  「はっきり(固い)」  「やわらかい」
 フレーズの中で、このような性質を自分自身(ソロ)や仲間たち(アンサンブル)が
どのように考えるのか? によって、楽曲の雰囲気が大きく変わってきます。
(もちろん、すこし明るい、輝かしい、という感じもあれば、その逆で少し暗い、とっても暗い、
というような感覚もあるでしょう。)

 それでは、簡単に例を説明します。(状況によっても違いますが)たとえば、太陽、雲、月、星を例に取って、
そのジャンル分けをすると、

                       

明るくてはっきりしている 太陽
明るくてやわらかい
暗さの中にはっきりしている
暗さの中にやわらかい

↑と、こうなる訳で

明るくてはっきりしている
明るくてやわらかい
暗さの中にはっきりしている
暗さの中にやわらかい 太陽

↑こうではない感じがします。

 クラッシック音楽の場合は、これらのジャンルの要素が一つの曲の中にたくさん盛り込まれています。
(たとえば、[A]〜の部分ははっきりしていて、明るく、[B]〜の部分はやわらかく少し暗めに、
といった具合です。)

 これらのジャンルをより的確に捉え、演奏者(全員)が同じ感覚で、フレーズを演奏しようとすれば、
それは、より聞き手に伝わりやすい音楽となります。

 例を挙げれば、「マーチ」などは演奏者が「はっきり演奏しよう」と思うことが必要ですし、
「カバレリアルスティカーナの間奏曲」はやわらかく物悲しげに、「エルザの大聖堂への行列」の
エンディングなどは、明るく演奏しようとするなど、フレーズを生かした意思の統一を図る必要があります。

 ビブラート奏法も時には適切な有効手段となります。「やわらかいフレーズを、よりやわらかく」
「エスプレッシーヴォのフレーズを、より激しく」といった具合です。
(しかし、逆の不適切な例もあります。例えば、マーチのはっきりしているフレーズにビブラートをかける!
これは、きっと気持ちが悪いでしょう?(笑))

 もっとも、ここで述べたことは、こと、メロディと伴奏との関係について言えば、
まだまだ考える余地が多く残されていますので、ここでは、個々の(場面場面の)メロディの性質を述べるに
留めておきます。

 作曲者は、自分の作品を「こうして欲しい、ああして欲しい。」という願いから、
多くの表現の記号を楽曲上に記載します。
 しかし、何も、自由で豊かな発想は、作曲者のみに限られた特権というべき物ではないのです。

ここでお話した、いろいろなジャンル(性質)を、どのようにフレーズにあてはめ、解釈し、演奏するのかは
演奏者や指揮者(指導者)に科せられた、「豊かな発想」というべきものなのかもしれません。

 

(C)2017 Masanori Fukuda

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