週間報告(00年12月)

【12月13日(水)】

 さて今週は、10月9日アカデミーの時のことを書いてみましょう。「NSXオーナーズ・ミーティング・アカデミーコース」の特色は、なんといっても F-1で使われていたものと同じ機材で車体各所のGなどを計測して、各個人のドライビングを分析し、プロドライバーのデータと比較したり、Hondaの研究所の方にドライビングの特徴やクセを指摘してもらえる、というものです。この計測に使われる車両がNSX−Rだったため、僕としては<サーキットでNSX−Rに試乗できる最後のチャンス>という大きな魅力がありました。
 「最後の」というのは、今の形式での<アカデミー>は今年で最後との話が前回のアドバンスのときに稲田さんからあったからなんです。なんでも、計測機器が耐用年数を超えてしまうため来年からは使えないとのことで、来年からは また違った形での<アカデミーPart 2>を開催していく計画なんだそうです。

 ということで、とても貴重な最後の<アカデミーPart 1>の参加者は、定員いっぱいの15名。キャンセル待ちも出るほどの大盛況だったそうですので、参加できてラッキーでした。参加者の中には、某集まりでお仲間の、あべさん・イモラさん・Ryuuさん・同伴見学のKakepiさんや、NOM常連のTYGさん・FSさんがいましたし、インストラクターがいつもお世話になっている飯田さんでしたので、とてもリラックスした雰囲気の中で、まずはam9時からレクチャー&ブリーフィングが行われました。
稲田さんからのご挨拶と、研究所の白石さんはじめスタッフの方々による計測システムのレクチャーをしていただいた後に、清水特別講師のブリーフィングでした。今回は人数が多いため計測車両が2台ありました。NSX−Rと、もう一台はTypeS‐Zero!どちらか選んで良いとのことでしたので、僕は迷わず<R>を選びました。S-Zeroはまだまだこの先試乗のチャンスがありそうですからね。でも、他の方は意外と ばらけて選んでました。まあ、元々R乗りの人はR、Sとか6速の人はS-Zeroに最初に振り分けられちゃってた事もありますが、S‐Zeroの人気も高いんですね。僕にとってはS‐Zeroはまるっきり手の届かない車ですから、あまり現実的に見れないんですよね。新車価格なんてとてもだせないですからねぇ。あ、でもそれを言ったらRも無理か(^_^ゞ相場新車価格並も有。

 さて、ブリーフィングを終えて、早速午前の走行開始です。スケジュール的には、午前に2時間の東コースフリー走行で、その間に交代で計測車に乗って3周アタック。昼食後に午前中の計測結果を分析して、そのあとに午後1時間半の東コースフリー走行。そしてまたこの間に計測3ラップして、フリー終了後の閉講式で再度分析…となっていました。
 まあとりあえず、ほとんどの時間は自分の車でフリー走行です。もてぎ東コースはとっても攻めがいのあるコースですから楽しみですねぇ。130Rに高速S字、ダウンヒルストーレートエンドのブレーキングなんて冷や汗ものですし、ショートカット部分のブラインド状態からの切り返しなんてメチャクチャシビレますよねぇ。しかし、天候は雨!雨って苦手なんですよぉ。昔々の峠時代は雨だとおとなしく寝てましたし、走行会に行きだしてからもほとんど雨に降られたことなかったし…というのは後になって思い出したことですけどね。当日は雨が苦手だってすっかり忘れてました。(^^ゞ

フリー走行開始からしばらくの間はインストラクターの先導走行組に入ってYAS号の挙動を確かめました。フロントタイヤがかなり磨耗してしまっていてスリップサインが出始めてるほどだったので、立ち上がりでのアンダーが強く出ました。ブレーキングは余裕をもてば大丈夫ですが、立ち上がりでは工夫しないとだめですね。やっぱりタイヤが磨耗していると車本来の性能が出せないです。天気予報で次第に雨が上がっていくと言っていたのを期待してたのですが、一向にやみそうにありません。残念ですがウエットでの走り方を探すしかないですね。同伴参加で同乗していた7300さん(インテグラ乗り)をピットに降ろして、先導走行から離れて自分なりに少しずつペースアップしました。 

 1周目、各コーナーでの挙動を確認して、2周目に走り方を変えてみました。立ち上がりのアンダーを計算して小さく曲がっておいて、立ち上がりでフロントが逃げ出したら、それに応じてリヤを滑らせて帳尻を合わせる…そんな感じの走り方でした。なんとか上手くいったようでしたので、3周目でまた少しペースアップしました。しかし、この時雨が徐々に強くなっていました。後になって冷静に考えれば、天候の変化に合わせてペースダウンするべきだったんでしょうが、雨経験の浅い僕は、雨脚が強くなってきているのがわかっていながら「もうちょっと行けるハズ」と思ってしまいました。前の周の路面状況を思い出しての判断でしたが、すでに次の周の路面は変わってしまってました。

 130Rを立ち上がって4速に入れ、3速に落としてS字に進入。1個目の左をうまく抜けて2個目の右、予想どうり立ち上がりでフロントが逃げました。ラインにもどすべくアクセル調整に入った瞬間、フロントガラス越しにコース右のガードレールが見えました。オーバーステアです!すかさずカウンターをあてましたが…「ヤバいっ!回しちゃおう」危険を感じてフルブレ-キング。ミニサーキットだとスピードが低いので これでスピンしてコース内に止まるところですが、1回転したかしなかったか…今となってはよく分からなくなってしまいましたが、氷の上を滑っているかのようにスピードが落ちないまま右側にコースアウト。下は芝。止まりません。幸い車は前を向いていたので、最後までステアリングで向きを変えようと試みましたが、無駄でした。

 右側面からタイヤバリアに激突!

 まず衝撃が体に伝わってくる前に、右ドアウインドウが一瞬で粉々に落ちました。ドアミラーが折れて当たったようです。その一瞬後に右から衝撃。反動で振られたヘルメットが、落ちたドアウインドウ越しにタイヤウオールに直にヒットしました。そのとき、割れずに残ったガラスに首が触れました。YAS号は少し弾かれて止まりました。

 身体は幸い無事動きました。運転席側ドアが開かなかったので、助手席側から降りました。ウオールの外にとりあえず避難すると、首から何かポタリと落ちました。血です。傷は浅いですが、意外と止まりません。右手で首を押さえながら、コーナーポストで赤旗が振られているをしばらくの間呆然と見ていました…。

 

【12月20日(水)】

 コーナーポストの赤旗からコースへ目を移すと、他の参加者がスローダウンして通過していきました。ご迷惑おかけしてしまいました。もしかしたら計測ラップ中の人がいたかもしれません<(_ _)>。
 さらに目を移してYAS号は…。右側ボディー全面破損。全幅が90%くらいになっちゃってます。前後バンパーもダメかもしれません。しかし、サスペンションは折れてないようです。向きは正常だし、凹んだボディーを強調するかのようにタイヤが外に顔をだしていました。ぶつかった場所がタイヤバリヤだったので少しはマシだったのかもしれませんね。

 変わり果てたYAS号を見て本来ならショックなはずなんですが、意外と冷静でした。いや、冷静というよりもボーっとしていたんだと思います。ぶつかった衝撃のせいだったかもしれません。頭も打ってたし。
 イントラの飯田さん、マーシャルカー、レッカーが続々と到着しました。YAS号を飯田さんにお任せして、僕はマーシャルカー(インテR)で、パドックにあるメディカルセンターに連れていかれました。首の傷にバンドエイドでも貼って貰えればと思ったんですが、頭と首を「これでもか!」と言う位色んな角度からレントゲンを撮られました。直後はなんともなくても後日に症状がでる可能性があるんだそうです。明日以降ムチウチが出るであろう事、頭を打っているため急に容態が悪化することがありえる(内出血の可能性など)ので2日間は一人にならないことなどを言い渡されました。本人は意外とケロっとしてたんですけどね(^^ゞ。でも、メディカルセンターでこれだけしっかり対応してくれると凄く安心です。
 治療が終わって廊下に出ると、同伴参加の7300さんが顔に縦線入れて立ってました。「大丈夫、大丈夫」と言いつつ外に出ると、今度は稲田さんがステップワゴンで迎えにきてくれていました。車中で稲田さんから修理などについて色々アドバイスをいただきつつ、東コースのピットに戻りました。

 ピットに戻ると、現場から移動されたYAS号がありました。近づいていくと、車内でTYGさんが掃除機をかけてくれています。飛び散ったガラスの破片をとってくれているようです。【YAS】「あ、すみません、代わります」【TYGさん】「いいよ、いいよ、ケガしてるんだから楽にしてて!」あ・ありがとうございますぅ。感謝感謝です<(_ _)>
 移動のため運転してくれた飯田インストラクターの話だと、足回りの損傷は軽微そうとの事でした。ハンドルを取られることもなく走れたものの、やはりハンドルを切るとインナーに当たるそうで自走で帰るのはキツそうとの事。ドアガラスも落ちてるし。
 きれいにしていただいた車内から車検証入れを取り出して、ディーラーと連絡をとりました。相談の結果、ASTPのガレージで数日預かってもらい、手配がつき次第レッカーで直接修理工場入り。入庫先は、稲田さんご紹介のもてぎ近くの栃木ボディーサービスになりました。とりあえずひと安心。あとは○○が効くといいんだけど…。今日のことは事前に申請してあったので大丈夫なハズなんですが、連絡が取れなかったので不安が残ります…。

 さて、開始早々に事故ってしまったので、走行時間はまだまだたっぷり残っています。やることも無くピットでフラフラしていたら、研究所の方から声を掛けられました。「身体大丈夫ですか?計測車乗ります?清水さんからはOKもらってますので、その気さえあれば乗っていただいて構いませんよ。」 ええ!?いいんですかぁ?そりゃあもちろん乗りたいですけど…う〜む、どうしよう。乗りたい・乗りたい・乗りたい・乗りたい…「乗ります!」
 横にいた7300さんが思いっきり退いてました(^_^;。でも、今日はまさにコレのために来たんですし、今のところ身体から痛みは無いし、軽〜く転がすくらいで乗れば大丈夫でしょう。嬉々としてNSX-Rに乗り込みました。

 

【12月27日(水)】

 実はNSX−Rを運転するのは初めてではありません。98年にKiyoさんのRを運転させてもらったことがあります。ツーリングで行った白樺湖の周りをぐるっと1周させてもらいました。吹け上がりの早さ・足回りの硬さ・応答の早さなどは感じられましたが、普通の道路ですから前の車にスグつかえてしまい、街乗りスピードしか体験する事ができませんでした。ちょっと残念でしたが、でも、この時の体験は僕の中ではずっと宝物でした。
 それ以来2年ぶりのR体験は待望のサーキット試乗!サーキットなら一番知りたいコーナリング時の性格がわかりそうです。そういえば、昨年もてぎ北コースでTypeS(広報車みかん号)に乗った時は衝撃的な体験でした。そのまま即、足回り交換しちゃったくらいでしたからね。でも、今回はどんなに良かったとしてもR足交換はムリです。だって高価いんですもんR足って(-_-;)。

 計測車のNSX−R(白)はホイルがS用のBBS(ワシグレー)に交換されていました。(たしかR純正ホイルよりこちらのほうが軽かったと思います。でも軽いからって言うよりもパッドカスが目立たないからかなぁ〜とか思いました(^^ゞ。)見た感じNA2クーペみたいですね。シートも黒だし。でも、シートに座るとダッシュボードはちゃんと起毛地!間違いなくRですよね。研究所の方が助手席側から手を伸ばして、コンソールのオーディオスペースになにやらPCカードのようなものを差し込んでいます。たぶんこれに走行データを記録するんでしょうね。走行は3ラップ(ピットアウト・インラップ含む)で計測は2周目です。
   

【研究所の方】「がんばってね!」
   
【YAS】「は〜ぃ!壊さないように頑張りま〜っす!」(^_^;おいおいっ寒すぎだってば。

 気負わずゆっくり走り出しました。
天気は相変わらず雨。本当はドライで乗りたかったですが…。ま、いいや!とりあえず3速までシフトアップしてそのまま谷底コーナーとショートカット部分までのんびり行きました。4コーナー先のストレート。そろそろ加速してみましょうか。床までアクセルを踏みつけました。
   

「おお!なんかYAS号より速い気がする!」
 本当はRの軽量化でのメリットは搭載された計測機材で相殺されてしまっているハズなので、実際はYAS号より少し速いだけだったかも知れません。でも、室内に流れ込むエンジン音(Rは遮音材が少ない)や、ピッチングの少ない足回りなどがあいまって、雰囲気的にもの凄く速いような気がしました。

 立体交差手前の右直角コーナーが近づいてきます。4→3→2速とシフトダウン。
  

 <(4速)ギャ!(3速)ンーー ギャ!(2速)ンー>
   「うわっ!何?この音??」
 ヒール&トゥでアクセルをあおったら物凄い金属的な音がしました。クーペだとワおンーって感じでもっとマイルドな感じの音なので、ミッションかじっちゃったかオーバーレブかとアセりましたが、元々こういう音のようです。(他のコーナーでタコメーターを見ながら慎重にやってみましたが同じでした。)これも遮音材が少ないからですかね?
戸惑いながらもターンイン。とりあえずYAS号のつもりで切り込みました。
  
 「あれ?全然余裕じゃん!(^_^;」
 リヤが逃げたがるYAS号と違って、ビターっと張付いて安定してます。まだ詰められますね。クリップを越えてアクセルオン。おお!とたんにアンダが出だしました。でも「フロントが滑ってアンダー」っていう感じではなくて<車の行こうとしている方向が、自分の意識している方向よりもアンダー>というか…う〜む、うまく表現できませんが、安定しているんだけど アンダーなんです(^^ゞ。これなら、進入でもっとブレーキ残して入ってきて、向きを変えておいて立ち上がりで早く踏み込むって感じでタイムが詰められそうです。もっと暴れん坊かと思っていたんですが、意外と安定していて、アクセルをガンガン踏んで行けそうなセッティングなんですね。これは慣れたら速そうです。でも、今はブレーキ詰めるのはやめときましょう。短時間のうちにまたヤっちゃったら大ヒンシュクだし、まだ午後もありますしね(←既に次も乗る気(^^ゞ)
 とりあえず体験の3周を終えて無事帰ってきました。初の<R>サーキット試乗で興奮しつつも、頭の中は次の走行のことで一杯になっていました。

 昼食をとり、東コースに戻ってコントロールタワー内で先ほどの走行データの検証をみなさんはやっています。僕はディーラーと電話で打ち合わせを続けていたら、2度目のフリー走行時間になりました。しばらく皆さんの走行を見学をしていたら呼ばれて、2度目の計測車走行の順番になりました。前回の体験を活かして今回は思いっきり行ってみましょう。アウトラップからペースをあげて、2周目の計測に突入しました。

 さすがにダウンヒルストレート後の谷底コーナーは怖くてブレーキを詰められませんでしたが、先ほどのオーバルとの立体交差手前の右直角コーナーアプローチからハードブレーキ!ABS作動。
 
 「おぉ!車が躍る!」
ABS制御のサイクルのためでしょう、ブレーキング中に車が細かく左右によれます。事前に清水特別講師から注意を受けていたので、半車身アウトを残しておいて正解でした。ギリギリを走っていたら外の車輪がコースアウトしていたかもしれません。
 先ほどよりもブレーキを残してターンイン。向きを変えて早めにアクセルオン。

  !!!

 凄いです!クーペやTypeSとはまるで別車のようなコーナリングです!自分なりに表現してみると、クーペやTypeSは程度の差こそあれロールしてアウト側の前後タイヤを使ってナイフで切り裂くようなエッジの効いたコーナリングをするんです。でもRはそれとは違いほとんどロールせず、まるで車の中心に「どーん!」とでっかいクイが刺してあって そこを中心に回っていくような感じです。さらに車の前後の長さが短くなっているような感じで、まるで真四角の車に乗っているよう!アクセルを入れてからは安定感があり、アクセルがラフになってオーバーがでても とてもコントローラブルでした。
  
「凄い!すごい!スゴイ!」
運転しながらこればかり連発していました(^_^ゞ。あっという間の3周が終了。車を降りたときは感動で涙目でした。

 計測走行時のデータを頂いてきて手元にあります。アップしようかどうしようかかなり迷いましたが、どんなモノなのか具体的に知っていただくには言葉でそれぞれの計測データについて説明するよりも実際に見ていただくのが一番だと思いますので、思い切って画像としてアップさせていただきます。

画像をクリックすると拡大画像のページにリンクします。
1600X1196pix (208KB)
001009motegipm1c.jpg (18631 バイト)

 

 全プログラム終了後、心配だった帰りの交通手段については稲田さんがタクシーを手配してくださいましたので、宇都宮まで行き、新幹線で東京へ帰る事ができました。最後までお世話いただきありがとうございました<(_ _)>。
 飯田さんをはじめとしてASTPのインストラクターのみなさん、YAS号の事故処理やガレージの保管など御厚意をいただきありがとうございました<(_ _)>。
 参加者の皆さん、特別講師の清水さん、栃木研究所のみなさん、走行時間を減らしてしまって申し訳ありませんでした。そして、励ましやたくさんのお気遣いをいただきありがとうございました。来年は必ず復活して懲りずにオーナーズミーティングに参加しますので、またどうぞよろしくお願いします。<(_ _)>

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