砥峰高原J〜峰山高原B、暁晴山D(1077.2m)
   神河町  25000図=「長谷」


砥峰高原から峰山高原へ、新緑を歩く


山上に広がる峰山高原(暁晴山山頂からの展望)

 タニウツギが、ピンクの花をちらほらとつけ出した。そんな春の一日、砥峰高原から峰山高原へと歩いた。中学生の校外学習の下見である。

 山焼きから2ヶ月近くたった砥峰高原は、ススキもだいぶん伸びて若草色に包まれていた。「とのみね自然交流館」から、人工平坦地に広がる湿原に向かった。
 まだ、湿原の花々は咲いていないが、モウセンゴケがあちこちに葉を出していた。葉に指をつけて軽く引くと、葉が粘液でくっついて指といっしょに動いた。生徒たちに、まずこれを見せよう。

 湿地から丸太階段を登ってハイキングコースへ。ススキの背は膝あたりまでで、朝の陽射しを浴びて進んだ。

湿原のモウセンゴケ ハイキングコースへ

 道の脇に水が染み出すところがあって、そこにミズゴケが生え、ここにもモウセンゴケが葉を出していた。
 高原の斜面が急になり、道がジグザグに曲がっていた。ススキの中に、レンゲツツジが鮮やかに咲いていた。
 高原の上にある展望台に上がった。ここからは、砥峰高原全体を見渡すことができる。
 すり鉢状に広がる高原を、山々が取り囲んでいた。砥峰に千町ヶ峰が重なり、平石山から高星が長い稜線を横に引いている。夜鷹山の裾に、太田池の湖面が小さく光っていた。
 風が冷たく気持ちがよかった。ホオジロがずっとさえずっていた。

展望台から砥峰高原を見下ろす

 草原を抜けると、伐採地が広がっていた。ここは今、災害に強い森づくりをめざして、スギやヒノキを伐採したあとに広葉樹が植えられている。
 伐採地の中をゆるく登っていくと広場があって、反対方向からコンクリートの作業道が通じていた。ここから、林の中に入った。スギ林と雑木林の間の山道。林内にスギのにおいが漂っていた。
 コナラやリョウブの落ち葉を踏んで進むと、車道に出た。2つの高原をつなぐこのハイキングコースには、無粋ともいえるこの区間。アスファルト道を歩かなければならない。
 それでも、道の脇にはニョイスミレやジシバリやキランソウが咲き、のり面の日陰にはタチツボスミレが小さな群落をつくっていた。
 生徒たちが花を見つけたら丸をつけられるよう、ワークシートにいくつかの花の写真をのせよう。サンショウクイが、ピリリと鳴いて、道を渡っていった。

ジシバリ タチツボスミレ

 再び林の中へ。新緑のすがすがしいコナラ林。足元には、若葉の赤いアセビが広がっている。ほとんど平坦な道がしばらく続いた。

若葉の雑木林

 新しい葉を伸ばしたカラマツの枝をくぐると、見晴らしのよい防火帯に達した。正面に今日はじめて見える暁晴山。防火帯の下には、峰山高原が広がっていた。
 もっと空気が澄んでいると、ここから明石海峡大橋も見える。校外学習の日がそうだったらいいなぁ。
 石に座って、ここで一休みした。よく晴れた穏やかな天気。上空の飛行機雲が、ゆっくりゆっくりと広がっていった。

カラマツの葉と飛行機雲 防火帯から暁晴山を望む

 防火帯から、雑木林の中をゆるく下っていった。ウリハダカエデが、淡黄色の花を連ねて下げていた。フモトスミレが咲いていた。

ウリハダカエデの花 フモトスミレ

 やがて、登山道に水が流れ、周辺にミズゴケが広がる湿地となった。水に沈まないように、ハイキングコースには丸太が並べられていたり、その脇の乾いたところに道がつくられたりしていた。きっと誰かが、このあたりでぬかるみにはまって大きな声を上げるだろう。それもいい思い出だ。

湿地の中の登山道

 シオカラトンボが産卵していた。メスが水の上をあちこち行ったり来たりしながら打水産卵を繰り返している。その上を、オスが忙しく移動してはホバリングをしてメスを守っている。そんな命の営みを、飽きずにしばらく見ていた。
 湿地を過ぎると、小さな谷に丸太の橋がかかっていた。山上に小さな谷が連続する不思議な地形。谷にさしかかるたびに、木の橋を渡って進んだ。谷に沿って、小規模な岩塊流が何ヶ所かで見られた。

小規模な岩塊流

 道には小さな枯れた木の枝がたくさん落ちていた。これを使って、生徒たちに何かモニュメントをつくらせよう。見本にということで、開いたクリのイガと木の枝2つで、「ちょんまげオッサンのやじろべえ」というのをつくってみたが、どんなかな?

「ちょんまげオッサンのやじろべえ」

 ミズナラやコナラの林が続いた。ホオノキの大きな葉が陽を明るく透かし、ヤマツツジの花が燃えるように林内を赤く染めていた。木の上から、オオルリのさえずりが聞こえた。
 またも現れた小さな橋を渡ると、山道を抜け出してグランド上の広い道に出た。ここからゴールの「ホテル リラクシア」までは、もう近い。

 せっかくなので、今日は暁晴山にも登ることにした。グランド上の分岐から、山頂まで1.8km。アスファルトの車道が大きくカーブしたところはショートカットして、山の中をぐんぐん登った。
 山頂近くでは、昨年のススキが、まだ枯れたまま立っていた。

 電波塔が立ち、一等三角点の埋まった山頂には、新しい展望板が2つ設置されていた。
 眼下、夜鷹山との間に峰山高原が広がっている。高原の柔らかい緑の中に、ホテルの屋根が銀色に光り、キャンプ場にはカラフルなテントが並んでいた。
 ここからは、近くも遠くも、あたりの山々をすべて見渡すことができる。遠くの山ほど、だんだん白く、また青くなってかすんでいた。双眼鏡の視野に、氷ノ山山頂の三角屋根がうすく見えた。

暁晴山山頂

 中学生たちがふるさとの大きな自然に抱かれて級友と歩く日が、好天に恵まれることを祈りながら山を下った。

 校外学習ワークシート    校外学習コースマップ
山行日:2016年5月14日

砥峰高原〜峰山高原グランド上分岐〜暁晴山〜ホテルリラクシア
 砥峰高原から峰山高原まで、ハイキングコースを歩いた。約7km、2時間のコースである。
 峰山高原のグランドの上に分岐があって、そこから暁晴山まで往復した。

山頂の岩石 砥峰高原 → 後期白亜紀 川上花崗閃緑岩
        峰山高原・暁晴山 → 後期白亜紀 峰山層 安山岩質溶結火山礫凝灰岩
 砥峰高原や峰山高原の岩石の説明については、岩石地質探訪「砥峰高原の地質と地形」や、登山記録「銀の波揺れる砥峰高原から縦走路を峰山高原へ」をご覧下さい。

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