沼島の三波川結晶片岩

沼島漁港から見る論鶴羽山
3,沼島の自然と伝説
 まぶしく光る海に、ぽつんと浮かぶ沼島。ここには、国生み伝説でいう神々がつくり出した最初の島という伝説が残っている。
 イザナギとイザナミの二神は、天の浮き橋に立って、天の沼矛を海の中にさしおろし、「塩こおろこおろ」とかき回した。その矛の先からしたたり落ちる塩が積もり固まって、「おのころ島」ができた。二神は、この島に降りて、夫婦となり、次々と国土を生んでいった。まず、淡路島を生み、続いて四国、隠岐島、九州、壱岐、対馬、佐渡、最後に本州を生んだという(「古事記」「日本書紀」)。その最初の島「おのころ島」は、諸説があるが、この沼島であるとも言われている

イザナギ・イザナミの二神を祀る「おのころ神社」
 沼島海水浴場の近くから、山に登る小径がある。「おのころ神社→」の小さな道標があった。あまり人が通らないのか、草木が両側から道をおおうように張り出していた。この山は「おのころさん」と呼ばれ、全体が神体山となっている。
 やがて、神社の石段の下に出た。石段を上り、鳥居をくぐると「おのころ神社」の簡素な社殿についた。中には、イザナギとイザナミが下界を見下ろし国を生んでいる鮮やかな色彩の絵が飾られていた。
おのころ神社
岸壁に生えるハマヒサカキ
  沼島には、貴重な植物や海岸特有の植物が生えている。写真は、上立神岩に下る岸壁にあった「ハマヒサカキ」。普通の「ヒサカキ」に比べると、葉が小さく、葉の縁が裏側に少し巻いている。
 近くには、これも海岸特有の植物である「トベラ」の群落があった。
青い海とハマヒサカキ
海に吠えるアミダバエ
 島の周辺には、大小の岩が顔を出し、「○○碆岩(ばえ)」という名前が付いている。写真の岩は、上立神岩のすぐ南に立つ「あみだばえ」という岩である。坂の上の案内板に、由来が書かれていた。
 『此の付近をアミダバエと申しまして、室町時代に海中より阿弥陀様が、此の世に現れ賜もうた神聖な海域であります。
 古来より此の海中出現の阿弥陀如来様は殊の外霊験あらたかにして漁師の人も畏れ多くて、ただ平伏して礼拝するばかりであったと伝えられています。……』
 海の守り神として堂々と立つアミダバエ。その姿は、海面に頭を出し海に吠える巨大な海獣のようにも見えた。
「あみだばえ」(左後ろの岩は「平ばえ」)
島の石垣
 島のほとんどの石垣には、結晶片岩が使われていた。島の石なのだから当然であるが、私には新鮮であった。兵庫県で唯一、西南日本外帯に属し三波川の結晶片岩でできた島。かねてからの憧れの地で、このような石垣の石を見るのも嬉しかった。    
集落の石垣
弁才天神社の石垣
 沼島の石を観察するのに適したポイントが、沼島漁港の北の波止の付け根にある「弁才天神社」の石垣。沼島中学校のホームページにも大阪府立大学の変成岩研究室のホームページにも紹介されている。波によってきれいに磨かれた海岸の転石が、コンクリートに貼り付けられ、まるでこの島の岩石の展示板のようであった。

 1.石英片岩
   白色。片理はあまり発達していない。表面は、褐色にさびている。
 2.砂質片岩
   銀白色。銀色のきらめきは白雲母。
 3.泥質片岩
   暗灰色。石墨が含まれ全体が黒っぽい。銀色のきらめきは白雲母。片理が発達している。
 4.点紋緑色片岩
   表面に白い斑点が目立つ。これは、変成作用でできた曹長石(斜長石の一種)の結晶(斑状変晶)である。
 5.緑色片岩
   表面は、片理面に沿って割れた面。
 6.紅れん石片岩
   紅れん石が含まれ美しいピンク色。片理が発達している。銀色に光る白雲母も多く入っている。
 7.点紋緑色片岩
   4の石より曹長石の斑状変晶がやや小さい。

 ※ 岩石名の番号は写真の番号に一致している。  
弁才天神社の石垣の石


 以上で、『沼島の三波川結晶片岩』は終わりです。このページを作るにあたり、『山の本棚』にあげた文献のいくつかを参考にしました。また、『沼島中学校ホームページ』のストーン班の記録『大阪府立大学総合科学部』の変成岩研究室の記録を参考にさせていただきました。

■岩石地質■ 白亜紀  三波川帯 結晶片岩
■ 場 所 ■ 南あわじ市沼島 25000図=「論鶴羽山」
■ 交 通 ■ 南あわじ市土生港から約10分(沼島汽船)で沼島港へ
■探訪日時■ 2001年8月29日 

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