陸繋島の間にできた砂州、成ヶ島

 成ヶ島は、淡路島の東南端、紀淡海峡に面したところに位置しています。南北約2.5kmに伸びる細長い島は、大部分が砂州から成り、その美しい景観から「淡路橋立」と呼ばれています。
 島は貴重な海浜植物の宝庫でもあり、ハマボウの咲く頃、この島を訪れました。

 島へ渡るには、成ヶ島渡船を利用します。定期便は、1時間に1本ですが、人数がある程度集まれば乗せてもらえるようです。船が動き出すと、約1分、あっという間に成ヶ島に着きました。

成山から望む成ヶ島

1、成ヶ島の成り立ち

 成ヶ島は、砂州からできています。成ヶ島の砂州の特徴は、その両端に山があるところです。
 北端にあるのが標高52mの成山、南端にあるのが標高23mの高埼です。
 成山も高埼も、今は淡路島本島から離れていますが、江戸時代の始めまでは陸続きでした。それぞれの島は砂州で陸とつながっていたと考えられるので、成山や高埼は陸繋島(りくけいとう)になります。そして、陸とつなっがていた砂州はトンボロです。
 後の時代に、成山と淡路島本島の間に新川口を開き、また、高埼と淡路島本島の間に今川口を開き、由良は良港として開けました。

 成ヶ島の砂州は、陸繋島と陸繋島の間につくられたことになります。砂州の高度は、2〜3m程度。幅は、一番狭いところで10数m。砂の流出を防ぐために、堤防とテトラポットが敷設されています。
 砂州は、沿岸流によって運ばれてきた砂礫が堆積してできます。成ヶ島の砂州で見られる小石は、ほとんどが砂岩です。これは、このあたりの地層をつくっている和泉層群の砂岩が、波に削られてできたたものです。

高埼灯台の下より成ヶ島を望む(左の山が成山)

 石や砂の大きさは、砂州の場所によってかなりの変化があります。ざっと観察したところ、砂州の両端ほど大きく、真ん中ほど小さいようです。南端の高埼から北に向かうと、30cm大のゴロタ岩、5〜10cm大の小石、そして砂と大きさが変化していくようすが分かります。そして、北端の成山に近づくと、また大きくなっていきます。
 また、石や砂の大きさを外海側と内海側で比べると、外海側が大きく内海側が小さいことがわかります。内海には泥がたまって湿地をつくっているところがありますが、湿地は外海側にはありません。
 石や砂の大きさは、それらを運んだ海水の流れの速さを示しています。流れが速いほど堆積する石は大きく、遅いほど小さいといえます。

 成ヶ島の砂州は、北と南のどちらから伸びて形成されたのでしょうか。あるいは両方から伸びてくっついたのかもしれません。砂州をつくる石や砂の大きさを詳しく調べたり、沿岸流の流れを調べてみると分かるかもしれません。


2、成ヶ島の地質と岩石

成山の下に見られる砂岩泥岩互層(和泉層群) 高埼の礫岩(大阪層群)

 成山は、和泉層群の砂岩からできています。地層は、砂岩優勢の砂岩泥岩の互層で、成山の登山道沿いや、海岸で観察することができます。船着場の少し北の露頭で地層の走行・傾斜を測定してみると、走行はNS、傾斜は40°Sでした。
 高埼は、大阪層群の礫岩からできています。礫の種類は砂岩が多く、チャートや泥岩も含まれています。礫のまわりの基質は、粗粒砂岩です。

小石の海岸(外海側) 海岸の小石 ss.は砂岩
 cg.は礫岩 ch.はチャート gr.は花崗岩

 成山の南、外海に面した海岸で、浜に転がっている石を観察しました。
 石の種類は、圧倒的に多いのが砂岩です。淘汰の良い中粒砂岩で、灰色・褐色・赤褐色など色はなかなか多彩です。形は、どれも平たい楕円形をしています。葉理による縞模様や、泥岩(径5mm)の岩片を含んでいるものが観察されました。
 中粒砂岩以外には、暗灰色の細粒砂岩、2〜3mmの細礫から成る礫岩、いろいろな色をしたチャートなどがありました。また、わずかに花崗岩や安山岩も見られました。
 砂岩や礫岩は和泉層群のもの、チャートは大阪層群の礫として含まれていたものと考えられます。


3、成ヶ島の植物

 成ヶ島は、貴重な海浜植物の宝庫です。訪れた日は、ハマボウの黄色い花が島を彩っていました。ハマボウの群落地に足を踏み入れると、あたり一面の黄色い花に囲まれました。5枚の花弁は、ふわりと柔らかく、夏の日差しを浴びて優しく咲いていました。ハマボウは、朝開いて夕方咲き終わる1日花。風に吹かれてゆるく揺れ、ときどき枯れた花がぽたりと落ちました。
 ハマボウは、兵庫県のレッドデータブックAランクに指定されています。今では、海岸の開発によって消滅し、群生地として残っているのは兵庫県ではここだけなのです。

 

ハマボウ ハマボウ
 海岸の砂地には、ハマゴウが紫色の花をつけていました。地面をはって広がり、大きな群落をつくっています。群落の周辺では、茎を放射状に広げ、さらに広がっていこうとしていました。
 内海の塩沼湿地には、ハママツナの群落がありました。ハママツナは、塩性の貴重な植物で群落の周りにはネットが張られて保護されていました。
 ハマナデシコ、ハマナタマメ、テリハノイバラなどの海浜植物も花を咲かせていました。帰化植物のノラニンジンは、白い花がきれいな幾何学模様をつくっていました。

ハマゴウ ハマナデシコ ハママツナ
ハマナタマメ テリハノイバラ ノラニンジン

※成ヶ島を歩いた記録は、「ハマボウ咲く成ヶ島の砂州を歩く」をご覧下さい。


■岩石地質■ 砂州→第四紀完新世
          成山→白亜紀 和泉層群灘累層    高埼→新第三紀鮮新世 大阪層群
■ 場 所 ■ 洲本市由良町 25000図=「由良」
■ 交 通 ■ 成ヶ島渡船(洲本市由良3丁目)で1分
■探訪日時■ 2008年7月20日 

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