南あわじ市灘の大阪層群と中央構造線
1999.11.14.「兵庫県立人と自然の博物館」自然観察会 第3ポイント
洲本市の生石鼻から南あわじ市潮崎にかけての海岸線は、直線的であり急な崖が海に迫っている。この直線的な海岸線は、中央構造線によって形成された断層崖が波によって平行的に浸食され後退してできたものである。少し海側に張り出した南あわじ市の灘では、この中央構造線が陸上に上がっている。
灘円実の灘橋のすぐ東の露頭では、中央構造線の南側に分布する大阪層群が観察される。これは礫層を中心とする地層で、砂岩層やシルト層と成層している。ここに分布する大阪層群は油谷累層といい、産出する植物化石などから大阪層群の最下部層(約300万年前)にあたるとされている。
ここから少し東に歩くと、大きな崖が道路に面している。この崖の前には、「油谷断層(中央構造線)」の説明が記された案内板が立っていた。この崖の下部は、大阪層群の礫岩を主体とする地層。その上を見上げると、砂泥互層らしき地層が乗っている。案内板にはその間に断層破砕帯があり、これが中央構造線であるとされている。しかし、博物館側の見解はこれと異なった。このあたりは、地すべり多発地帯であり、大阪層群の上に地すべりで和泉層群が乗っているということである。実際の中央構造線はもう少し山側(北)を通っているらしい。
灘円実の灘橋のすぐ東の露頭
砂岩層を礫岩層が斜めに削り取って堆積しているようすや、礫岩層や砂岩層中の斜行層理が観察される。約7400万年前の和泉層群の岩石と比べると、この約300万年前の大阪層群の岩石は明らかにもろく、固結度が低かった。
著しい傾斜は、中央構造線の活動に関連している。
礫の種類は、和泉層群の砂岩、三波川変成帯の結晶片岩、それにチャートが主である。
「油谷断層(中央構造線)」の案内板が立つ露頭。下は、大阪層群の礫岩層。この崖の上には、砂泥互層らしい地層が乗っているが、かなりがさついているようにも見える。地すべりによってがさついたものか?ネットの間から崖の下に入れるが、上に登るのはちょっと難しそう。
■岩石地質■ 新第三紀鮮新世 大阪層群油谷累層 礫岩
■ 場 所 ■ 南あわじ市灘円実 25000図=「諭鶴羽山」
■ 交 通 ■ 県道76号線 土生港の東に灘橋がある
■探訪日時■ 1999年11月14日