峰山高原〜砥峰高原〜太田池   神河町  25000図=「長谷」


春を待つ神河町の二つの高原と太田池

峰山高原の樹林を歩く

 春の日の午後、峰山高原から砥峰高原へと歩き、さらに太田池まで足をのばした。来月に計画した1年生の校外学習の下見である。

 4月も後半に入ったというのに肌寒い一日だった。峰山高原のホテルの前から、砥峰高原への縦走路に入った。高原はまだまだ冬の景色で、ミズナラもコナラもリョウブも冬芽を堅く閉じていた。若いNさんが「この木は生きているんですかねぇ」と言ったのが、おもしろかった。
 グランドを回り込んだところから山道に入った。地面の黒土は、ここ数日の雨を吸い込んでしっとりとぬれていた。浅くて小さな谷が連続し、そこには丸太で組まれた橋が架かっていた。
 4つめ、5つめ………、Fさんが「校外学習でのクイズにしよう」と言って、3人で数えながら歩いたが、7つ目か8つめぐらいでその数があやしくなってきた。
 道は湿地に入っていった。ぬかるみには、丸太が渡してあったりしているが、誰かがぬかるみに足をとられてギャーと叫ぶにちがいない。それもまた、楽しい思い出だ。
 湿地のところどこに岩塊流が顔を出し、岩とコケと落ち葉からなる日本画的な光景をつくり出していた。道の左手の緩い斜面には、カラマツ林が続いた。道は、カラマツの細かい落ち葉がつくる茶色の薄い層におおわれていた。

山道へ 湿地を進む

 湿地を過ぎ、幾度か大きく曲がると防火帯に出た。防火帯の下には、峰山高原が広がり、出発したホテルが指呼に見えた。その右上に乗る暁晴山は、まだ色彩に乏しかった。この防火帯は、最初のいい休憩地になるだろう。
 空はずっと曇っていたが、とうとう雨が降り出した。雨だと思ったら、すぐにあられに変わった。あられの白い粒は、地面に落ちては何度かバウンドして黒土の上を転がった。

アセビの花 防火帯から暁晴山を望む

 防火帯の先では、数本のカラマツの倒木が道をさえぎっていた。それらの倒木をくぐったり、乗り越えたりして進むのも楽しいにちがいない。アセビがたくさんの花をつけていた。
 それにしても、シカの食害によって貧しい植生になっていた。コナラやアカマツなどの高木の下には、アセビやミツマタなどシカが食べるのを嫌がる潅木しか残っていない。イヌツゲの堅い木や葉さえ、根元を残してすっかり食べられていた。
 道はやがて車道に飛び出した。二つの高原を結ぶ無粋な車道区間だが、校外学習では緊急車をここに配置することができる。再び山道に入り、もう一度近づく車道をかすめると杉林に入った。
 杉林の中は、間伐された木の幹がいろいろな方向を向いて倒れていた。倒れた木の樹肌には黄緑色の苔がつき、それらが蛍光を放つように、暗くて湿った林内で光っていた。

 杉林を抜けると、目の前に砥峰高原が広がった。山焼きのあとの高原は、まだ真っ黒で草木が生えていなかった。高原を少し下ったところにある展望台は、一部が焼け落ちて立ち入り禁止となっていた。

山焼きされた砥峰高原 タチツボスミレ

 黒い高原の中に、とのみね交流館に続くハイキング道がのびていた。私たちは校外学習の行程をショートカットして高原南の車道に出て、そこから太田池をめざした。
 単調なアスファルトの道を、3人でゆっくりと歩いた。道端のところどころには、小さなタチツボスミレが咲いていた。カケスが、翼の青を見せて木々を渡った。
 夜鷹山の西を進んだところに、峰山高原と太田池の分岐があった。太田池への道は、はじめはゆるく上って、途中から下っていた。ヒガラが、ときどき林から出てきた。並木のソメイヨシノは、まだ堅いつぼみだった。
 出発してから3時間20分で、ゴールの太田池に着いた。ショートカットした行程を40分とすると、全行程は4時間。弁当を食べたり、ちょとしたクイズやゲームをすると、1日の校外学習にちょうどいい時間だった。

 Fさんち特製のおにぎりをいただきながら、展望広場のベンチから太田池や周囲の山々を眺めた。生徒たちと歩く5月には、この高原にも新緑が萌えているだろう。高原にあふれる生徒たちの歓声を思いながら、帰りに通った川上の集落は、今が桜の満開だった。
 
ゴール地点の太田池

山行日:2011年4月25日

峰山高原ホテルリラクシア前〜砥峰高原〜太田池
 峰山高原から砥峰高原まで、ハイキングコースを歩く。砥峰高原の展望台の下で車道に出て、その道を太田池まで歩いた。峰山高原から砥峰高原まで7.0km(2時間)、砥峰高原から太田池まで6.7km(2時間)である。

山頂の岩石 峰山高原 → 後期白亜紀 峰山層 安山岩質溶結火山礫凝灰岩
        砥峰高原 → 後期白亜紀 川上花崗閃緑岩
 砥峰高原や峰山高原の岩石の説明については、岩石地質探訪「砥峰高原の地質と地形」や、登山記録「銀の波揺れる砥峰高原から縦走路を峰山高原へ」をご覧下さい。

「兵庫の山々 山頂の岩石」 TOP PAGEへ  登山記録へ  特集「砥峰高原 ススキ原の四季と大地」へ