比延山の流紋岩 (西脇市) 西脇市の比延山は、標高わずか289mという低山ですが、独立峰として加古川の左岸にそびえています。 山頂付近の岩石は流紋岩です。比延山の流紋岩は、流理構造や球顆構造など、流紋岩の特徴をよく表してます。 1 比延山(北峰)山頂の流紋岩 比延山には、北峰と南峰の2つのピークがあります。南峰の方がわずかに高くて、標高289m。三角点があるのが北峰で、標高は287.0mです。流紋岩は、北峰の方で見られます。 北峰には、いくつかの大きな岩が斜めになって飛び出しています。この岩には、下の写真のように板状に薄くはがれるような割れ目が入っています。 なぜ、このような割れ方をするのでしょうか。 この岩の割れ口を見ると、割れ目に平行にたくさんの縞が入っていることがわかります。縞の厚さは、1mm前後。白色、オレンジ色、緑を帯びた灰色など、色がちがいによってこの縞がつくられています。 縞模様は、マグマが固まる前に流れ動いた跡で流理構造といいます。流紋岩の名前はここからきました。 流紋岩以外でも流理構造の見られることがありますが、流紋岩のマグマは粘り気が強いのでこのような模様をつくりやすいのです。 この流理構造に沿って岩が割れやすくなり、山頂ではこの割れ目が発達しています。 縞の色のちがいは、成分や結晶の大きさ、また組織のちがいなどが原因となっています。成分がちがうと、後の酸化のされ方に差が出てきて、色のちがいが強調されます。 割れ口をルーペで観察すると、石英や斜長石(無色〜白)、カリ長石(ピンク色)の結晶(斑晶)を見つけることができます。 流理による縞模様は直線的なことが多いのですが、ゆるく湾曲していることもあります。 また、岩の表面に数mm〜1cmほどの丸い粒が見られるところがありました。これは、球顆と呼ばれる流紋岩によくみられる構造です。球顆は、珪長質でまわりより硬いため、岩の表面から飛び出しています。
2 北峰大岩盤の流紋岩 北峰の西側は、大きな岩盤が露出していて急角度で落ち込んでいます。表面はゆるく起伏していてごつごつしていますが、山頂の岩のような割れ目は見られません。
岩盤を下って岩の表面を観察すると、流理構造による縞模様が表れているところがありました。この岩盤全体も、山頂と同じ流紋岩であることがわかります。
3 溶結凝灰岩に貫入した流紋岩 今回登ったコースでは、この流紋岩は標高230m以上で見られました。それより、低い所には溶結凝灰岩が分布していました。引き伸ばされた軽石のレンズがふくまれる、はっきり溶結凝灰岩だとわかる岩石です。 この溶結凝灰岩と山頂付近の流紋岩は、どのような関係でしょうか。 溶結凝灰岩は、白亜紀後期、鴨川層の地層です。比延山の近くでは地層の走向はほぼ東西で南へゆるく傾いています。(「三田地域の地質」 地質調査所 地域地質研究報告 1988) それに対して、流紋岩の流理面を測定すると、北東ー南西の走向で南東へ50°と急傾斜で傾いています。 このことから、流紋岩は溶岩として地表を流れたものではなくて、マグマが溶結凝灰岩の割れ目に貫入して固まったものだと考えられます。 流紋岩は、周囲の溶結凝灰岩より硬く風化に強いので、このことが比延山を独立峰として地表に残している原因なのかもしれません。
山行記録は「風土記の山の岩の山頂に眺望広がる」を参考にしてください。 ■岩石地質■ 流紋岩(白亜紀後期) |