麻生山の地質・岩石 |
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麻生山をつくっているのは、相生層群伊勢累層の地層である。この地層は、今から7000万年前の白亜紀後期にできたもので、主に凝灰岩などの流紋岩質火砕岩から成っている。伊勢累層は、赤穂市から高砂市にかけて広く分布し、古くから石材として利用されてきた「竜山石」もこの地層に属している凝灰岩である。
麻生山は、凝灰岩・火山礫凝灰岩・凝灰角礫岩などからできているが、一部で泥岩や砂岩を挟んでいる。
左の写真は、厚さ12cmの泥岩の層である。泥岩は灰色で、この中にはさらに黄緑色の凝灰質砂岩が挟まれている。泥岩や砂岩の層は、この地層が海底あるいは湖底で堆積したことを教えてくれる。
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凝灰岩にはさまれた泥岩の地層
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火山礫凝灰岩(lapilli tuff) ・ 凝灰角礫岩 (tuff breccia) |
麻生山の岩石は、その中に含まれる火山灰・火山礫・火山岩塊の大きさや量においてかなりの岩相変化がある。
表面に火山礫・火山岩塊がとびだしてゴツゴツしているのは火山礫凝灰岩や凝灰角礫岩で、麻生山ではこれらの岩石ががもっとも多く見られる。
火山放出物は、その大きさによって径2mm以下の火山灰、径2〜64mmの火山礫、径64mm以上の火山岩塊に分けられる。主に火山灰からなる岩石が凝灰岩、主に火山礫からなる岩石が火山礫凝灰岩、火山岩塊を岩石全体の半分以上含むのが火山角礫岩、火山岩塊が岩石全体の半分以下なのが凝灰角礫岩である。 |
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写真左:登山道沿いに立つ高さ15mの大岩
岩体の中央部、縦に割れ目が走り、その割れ目に沿って固定されたクサリを使って登ることができる。多くの径5mm程度の火山礫と最大10cmまでの火山岩塊を含む凝灰角礫岩である。一部で、引き伸ばされた軽石が抜け落ちた細長いレンズ状の穴が観察される(溶結構造)。
写真中央:凝灰角礫岩中の火山岩塊(長径15cm)
火山岩塊には、石英と長石の斑晶が観察される。灰色の石基はガラス質で、大変硬い。火山岩塊の中には、流理構造を示す縞模様をもつものがある。
写真右:火山礫を多く含む火山礫凝灰岩
火山礫の大きさは5mm程度のものが多く、多少丸みを帯びた外形をしている。
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凝灰岩の地層 |
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播磨地方に分布するこの時代の火砕岩は、塊状であることが多く地層面がはっきりとしていない。しかし、麻生山に分布する岩石のうち、火山礫や火山岩塊をほとんど含まない凝灰岩は、整然と成層している。
写真は、麻生山山頂下の登山道である。岩石が地層面に沿って割れているために、岩の階段ができている。ある程度は人工的なものと思われるが、階段の上面は地層面をほとんど正確に反映している。このあたりの走行はN70°W、傾きは10°E。傾きが緩いので、歩きやすい岩の階段となっている。 |
凝灰岩でできた岩の階段
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火山豆石 (accretionary lapilli) |
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山頂近くの凝灰岩の地層から、火山豆石(accretionary lapilli または pisolite)を見つけた。直径4〜12mmの扁平な球形で、枝豆や碁石によく似た形をしている。表面は滑らかで、灰色をしている。
火山豆石は、火山噴火で巻き上がった細かい火山灰が水滴に捕らえられて付着し、球状に固まったものである。
地下のマグマの通り道には帯水層があり、出口には火口湖があることもある。また、海底や湖底で噴火が始まる場合もある。このような場所に噴火が起きると、マグマ水蒸気爆発となり、大量の細かい火山灰とマグマの熱によって発生した水蒸気が噴出する。このような噴煙中で、水蒸気が凝結した水滴が細粒火山灰を取り込んで火山豆石ができる。
火山豆石の成因としてはこの他に、噴煙中に外部から雨粒が落下したり、雨粒が堆積した火山灰に落下して転がってできたものなどが考えられる。
1991年5月の雲仙普賢岳の噴火や、2000年7月の三宅島雄山の噴火では、火山豆石の降下が実際に観測されている。
麻生山の火山豆石は、層理面に平行に扁平となっている。もともと球形であったものが、降り積もった火山灰の重さやその上への地層の堆積よる圧力によって扁平になったと思われる。
麻生山の火山豆石は、保存状態が大変良く、母岩の凝灰岩をハンマーでたたくと中からコロリと出てくる。たがねで多少のクリーニングをしてやると、丸くて小さなアクセサリーのできあがりだ。7000万年前の激しい火山噴火と噴煙中からバラバラと降り落ちる火山豆石が地面をたたく光景を想像してみた。 |
凝灰岩と火山豆石
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採集した火山豆石 |