1999/6/18 金曜日
『ちぎれ雲 ラミジ艦長物語3』
田中清太郎訳 昭和55年 950円(値段変わってるかも…)
RAMAGE AND THE FREEBOOTERS
原作タイトルのFREEBOOTERSとは「海賊」の複数形です。次巻『カリブの磯波』も英語タイトルが同一ですので、この2冊は分冊らしいです。どうりで、打ち切られた連載漫画のような終わり方だと思いました……。
今回は、またまた有名な「スピットヘッドの反乱」がまずからんできます。スピットヘッド錨地で起こった1797年の大規模な水兵の反乱事件です。ボライソーでもありましたね。『不屈の旗艦艦長』あたりがビンゴです。そして、反乱を起こした艦を一隻もらって、ラミジは西インド諸島の艦隊に反乱のニュースを届けに行く任務につきました……。
反乱を起こした船と言いますと、ボライソーの『栄光への航海』を思い出しますね、何か。
ラミジの乗艦はブリッグ艦トライトン号です。この時、ラミジはその艦の運営にあたって、前回カスリン号で一緒だった水兵25名をトライトン号の同数の水兵とトレードさせるよう願い出ます(この人数は乗員60名のほぼ半数にあたります)。ずっこいなー、ラミジ。ボライソーが望んだのはストックデールただ1人だったのにな、なーんて最初は思いましたが、反乱ってそれぐらい怖いことらしいです。
何しろ相手は多勢なので、寝込みを襲われたらラミジも終わりです。艦ごとフランスに連れていかれてしまいます。加えて、全員が帆走作業のボイコットに走ったら艦は動きません。たいへんだ、ああたいへんだ、どうなるのでしょう。そして迎えたトライトン号上での初めての夜に起こった事件とは……これ以上は秘密です。
今回のごひいきさんは、飲んだくれ軍医のボーエンさん。諸般の事情から、飲み、飲み、飲み、アル中に。けれどもこれからラミジらが向かうのは、熱病のおそれが多大にある西インド諸島。ここは是が非でも軍医に正気にもどっていただかねばなるまいってんで、ラミジは断固とした処置に出ます。がんばれボーエンさん、負けるなラミジ。このへんのアルコール禁断症状との戦いは海戦並にどきどきでした。
あと、奴隷船が出てきます。イギリスはこの頃は奴隷制廃止に動いていますが、世界標準ではまだまだ儲かる商売のようです。ラミジらはこの奴隷船を拿捕するのですが、奴隷船のマレ船長のコメントを聞いていると、「きい~っ!」って感じになります。植民地運営にしてもそうですけどね。でもわからないです。今は「いけないことなんだよ」って教えてもらっているので、正当化しようとするコメントを聞くと虫酸が走りますけど、この時代に住んでいたら私も奴隷制支持派だったかもしれません。世論の力恐るべし。とい言いますか、流されそうな自分が怖いです。
今回は、懲罰のムチ打ちにずいぶんページ数を割いてます。「九尾の猫鞭」の作り方から始まるんですよ! 1人1つ。懲罰の度に、その人数分作るんだそうです。そして、刑の執行は次の日に行うのだとか。しっ、知りませんでした。そうなのか……。書く人によってこだわる箇所が違うのも歴史ものの楽しいところです。そして、読んでいる私はそのまま鵜呑みにしちゃいます。こんな知識ばかり増やしてどうするの、私……。
はっ。それで、海賊はどこにっ?
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