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スズメバチの仲間は日本に3属17種が生息している.内訳はスズメバチ属8種,クロスズメバチ属5種,ホオナガスズメバチ属4種となっているが,それぞれの分布地域は種により大きく異なっている.
最も多い北海道や本州の山岳地帯では14種が確認されているが,南下するに従って種数は減少する傾向にある.最も少ない沖縄本島では2種が生息するのみである.2012年に,長崎県対馬でツマアカスズメバチの成虫が初めて捕獲され,2013年以降も多数の巣が見つかっていることから,既に定 着したものと考えられる.
本州の西南暖地には,オオスズメバチ,キイロスズメバチ,コガタスズメバチ,モンスズメバチ,ヒメスズメバチ,チャイロスズメバチの6種が生息している.チャイロスズメバチは岡山県,鳥取県以東で生息が確認されている.
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体長は女王バチ40~45mm,働きバチ27~40mm,オスバチ35~40mmで,スズメバチの中で最大の種である.営巣場所は地中や樹洞などの閉鎖的な場所で,外皮は薄く底が抜けている.巣盤数は4~10層,育房数は3,000~6,000房になる.
越冬した女王バチは5月中旬頃から営巣を開始する.働きバチは7月から羽化し,9月~10月には100~500頭程度になる.オスバチは9月~11月に,新女王バチは少し遅れて10月~11月に羽化する.
幼虫の餌としてコガネムシやカミキリムシ,大型のガの幼虫などを狩るが,秋口には集団で他のスズメバチやミツバチの巣を襲い,幼虫や蛹を巣に持ち帰る.本種は先に羽化したオスバチが巣の入り口付近で待機し,中から出てくる新女王バチと交尾する習性があり,新女王バチの羽化時期になると,午前中に多数のオスバチが巣付近を飛び回る.
攻撃性,威嚇性ともに強く,地中や樹洞に営巣した場合,近くを通行する際の振動が巣に伝わり,そのためハチが興奮して攻撃してくることがある.また,樹液によく飛来するが,縄張り意識が強く,餌場においても威嚇や攻撃がみられるので注意が必要である.
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体長は女王バチ25~28mm,働きバチ17~24mmで,6種の中では最も小型である.コガタスズメバチと共に市街地でも良く見られる.営巣場所は軒下や木の枝などの開放的な場所や,天井裏,床下,樹洞などの閉鎖的な場所までさまざまである.巣は大きなものでは直径50cmを越え,日本産スズメバチの中では最大である.巣盤数は5~10層,育房数は5,000~10,000房位になる.
活動期間は6種の中で最も長く,5月上旬には営巣を開始し11月一杯まで活動する.働きバチは6月より羽化し,活動の最盛期には1000頭を越える.オスバチ,新女王バチは9月~11月に羽化する.本種は働きバチの羽化後営巣空間が狭くなると、より広い場所を求めて引っ越しをする性質がある.引っ越しの時期は7月~8月で,候補地に働きバチが集団を作ったり、建物内に入り込んだりする.働きバチは全ての幼虫が羽化するまで(引っ越し後1ヶ月ほど)は新巣と旧巣の間を行き来して子育てを行う.
幼虫の餌としてはハエ,アブ,その他の昆虫類やクモなどを狩る何でも屋である.攻撃性,威嚇性ともに強く,巣に近づいただけで被害にあうことがあるので注意が必要である.
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体長は女王バチ25~30mm,働きバチ22~28mmで,6種のなかでは中位の大きさである.本州の市街地で最も普通に見られる.営巣場所は樹の枝や家屋の軒下などの開放的な場所で,営巣した樹木の種類は100種以上と多岐にわたっているが,サザンカ,ツツジ,ツバキ,キンモクセイなどによく巣を作る.
巣は外皮に覆われたボール状をしているが,女王バチが単独で巣作りをしている時期にはトックリを逆さにしたような形をしている.これは本種とツマグロスズメバチのみの特徴で,巣内への外敵の侵入防止のためだと考えられている.巣盤数は2~5層,育房数は500~1,000房位になるが,最盛期には巣の大きさもタテ30cm×ヨコ25cm位になり,育房数も1,000房を超える.
越冬を終えた女王バチは5月中旬頃に単独で営巣を開始する.働きバチの羽化は6月中旬で,活動が最も活発となる9月~10月には100頭を越える.オスバチと新女王バチは9月~11月に羽化する.
幼虫の餌としてハエ,アブ,小型の甲虫類やハチなどあらゆる昆虫を狩る.攻撃性,威嚇性は6種の中では弱い方であるが,巣を刺激すると激しく攻撃するため,剪定作業中などにしばしば刺傷被害が発生する.
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体長は女王バチ28~30mm,働きバチ,オスバチとも21~28mmである.営巣場所は樹洞,天井裏,壁間,戸袋などの閉鎖的な場所であるが,稀に軒下などにも営巣することがある.また,鳥の巣箱に営巣する例もある.営巣場所が狭くなるとキイロスズメバチと同じように途中で引っ越しする習性がある.巣は鐘状で底が抜けており,巣盤数は4~12層,育房数は4,000房程度になる.
本種は巣への出入り口付近に立派な目張りをする習性があり,同じような場所に営巣するキイロスズメバチやヒメスズメバチなどと区別できる.また天井裏に営巣した場合,巣の下に餌の残骸や死骸などを捨てるため天井にシミができて巣が発見されることがある.以前駆除した場所に再度営巣する傾向が見られる.
女王バチは5月中旬に営巣を開始する.働きバチは6月から羽化し,9月~10月には400頭程度になる.オスバチ,新女王バチとも9月~10月に羽化する.幼虫の餌として主に各種のセミを狩る他,バッタやトンボなども狩る.攻撃性,威嚇性はともに強く注意が必要である.働きバチは日没後も数時間活動するため,灯火に集まったり,室内に侵入してくることがある.
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体長は女王バチ,オスバチ,働きバチとも24~37mmで大きさの差はあまりなお.本種のみが尾端が黒色なので,他種との区別は容易である.営巣場所は屋根裏や物置の中,土中などの閉鎖的な場所である.巣は釣り鐘状または電灯の傘のような形をしていて,下端は開放していて巣盤が見える.巣盤数は3~4層,育房数は200~400房で,スズメバチの中では最も小型の巣を作る.
幼虫の餌としてアシナガバチの幼虫と蛹の体液のみを利用する.そのためアシナガバチの発生消長に合わせた生活をしており,営巣期間も約5ヶ月と最も短い.女王バチは5月中旬頃から営巣を開始する.働きバチは7月より羽化し,8月~10月には50頭を越える.オスバチと新女王バチは8月~9月に羽化する.
体長がオオスズメバチに次いで大きなことや,威嚇性が強く体の周囲にまとわりつくように飛び回るので恐怖感を与えるが,攻撃性は最も弱い.最近,高層ビルの最上階や屋上付近を,本種のオスバチが多数飛び回り,住民に恐怖感を与える事例が各地で発生している.
発生時期は8月下旬~9月下旬にかけてで,時間は午前9時30分頃~10時半頃の間である.飛来したオスバチは,建物に沿って活発に飛び回り,時々屋上へ飛来する.これは本種の交尾行動に伴うもので,飛び回っている個体は全てオスバチのため,刺傷被害が発生する心配はない.
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体長は女王バチ30mm,働きバチ17~24mmで,スズメバチ属6種のなかではやや小型の部類である.頭胸部が赤褐色の他は,体全体が黒褐色をしており,他種との識別は容易である.中国地方(岡山県・鳥取県)以東に生息しており,最近各地から報告があるが,それでも確認例は少なく珍しい種であるといえる.
本種はキイロスズメバチやモンスズメバチの巣に女王が単独で入り込み,相手の女王バチを殺して巣を乗っ取ることで知られている.最初は,乗っ取った巣の働きバチが子育てをするが,チャイロスズメバチ自身も働き蜂を産むため,しだいにチャイロスズメバチと入れ替わっていく.このような性質を持ったスズメバチを社会寄生性のスズメバチと呼んでいる.
巣盤数は4~6層,育房数は600~3,500房位になる.本種の働きバチの羽化は7月以降で,それまでは寄主の働きバチに養育される.活動が最も活発となる9月~10月には100~300頭になり,オスバチと新女王バチは9月~10月に羽化する.幼虫の餌として主にキリギリス類を狩る.攻撃性,威嚇生ともに強く,巣に近づくと地上付近を群をなして飛び回る独特の威嚇行動をとる.
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体長は女王バチ15mm,働きバチ10~12mm,オスバチ12~14mm位の小型のハチである.営巣場所は閉鎖的な場所で,大部分が土中であるが,稀に屋根裏や樹洞にも営巣する.営巣規模は大きく,巣盤数は8~12層,育房数は8,000~12,000房になる.
活動開始は早く,越冬した女王バチは3月下旬には活動を開始する.活動期間も極めて長く12月頃まで続くことがある.働きバチは6月から羽化し,オスバチ,新女王バチとも10月~12月に羽化する.幼虫の餌として主にハエやアブなどの小型の昆虫やクモなどを狩る.攻撃性,威嚇性は共に弱い.
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