6550/EL34/6Y6GT Semi-STC pp アンプ

2000/09〜2005/06 宇多 弘
6550para.jpg 65elp.jpg
6550 pp (右) EL34 pp 挿し換え状態、更新した外部電源 (左)

いきさつ

 別項に記載の KT88/6550 超三結アンプでは、デモンストレーション等、大きい会場にての何回かの出力不足を経験し、さらに大出力の超三結アンプが必要であると感じました。
 そこで 、取り敢えず中型出力トランスを二個並列に使用した 6550 シングル超三結アンプを仮製作し (2000/09)、その後一次側に max 500mA 流せる大型出力トランスを入手、初期目標の 6550 パラレル・シングル超三結アンプに改造し目標を達成しました。(2001/06〜/12)
 すでに別項の EL34 パラレル・シングル超三結アンプを製作・運用していたのですが、本機でも EL34 の動作条件を確認して挿し換え可能としました。(2002/02)
 別項の 6Y6GT Semi-STC pp アンプに気をよくして、本機も 6550/EL34 のSemi-STC pp アンプに変更しました。 ついでに外部電源を改造して低い B 電圧の供給が可能となったので、自己バイアス用カソード抵抗および SG 供給電圧の切り替えを追加して 6Y6GT も挿し換え可能に改造しました。 (2004/05)

まずはシングルから

●動作条件
 目標の 6550 終段動作点は、嵩上げ電圧約 70V を差し引いてプレート電圧 Ep=350V, 同電流 Ip=100mA とするとプレート損失 Pp=35W となります。 Svetlana 6550C の仕様では Pp=35W となっているので、これからカソード自己バイアス抵抗値は 70/0.1= 700Ω近辺と自動的に決まります。(2000/09)
 また、SG 電圧を低めにとるよう 4.7kΩ/33kΩの直列ドロッパ・ブリーダを挿入しました。(2001/06) 
 6550 超三アンプの構成は下記のとおりです。(2000/09)

 初段  電圧帰還管/P-K NFB    出力段    出力トランス  Stopping Di  PT
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 6AU6  12AX7/2 12AX7/2t  直結 6550 ノグチ10WS 相当x2 1N4007  DC 350V

●動作点検
 初段のバイアス抵抗を加減して、終段カソード電流を約 100mA、同電圧を約 68V にセットして、その前後に振った場合に音質に変化のないことを確認して動作点検は一応パスしました。 この状態でプレート損失 Pp=35W 程度で目一杯です。 ボンネット付きシャーシ全体がかなり熱くなります。(2000/09)
 なお回路図は、次に説明するパラレル・シングルの終段部分以外は同じものなので省略します。(2001/06)


パラレル・シングルに改造

 600Ω/4Ω (1200Ω/8Ω)、一次側には 500mA 流せ、重量 2.7kg という仕様の特注出力トランスが完成したので、本機をパラレル・シングル超三結アンプに改造しました。 シャーシは交換せず、計画通りこれまでチャネル当り二個塔載した出力トランスの一個分のスペースに追加の 6550 を取り付け配線してパラレル化しました。
 初段および電圧帰還管/P-K NFB (素子管) は以前のままとしました。 また、嵩上げ兼自己バイアス用のカソード抵抗値を、一管あたり 860Ω となるよう組み合わせてワッテージを稼ぎながら、単管シングルの場合よりも軽い動作となるよう調整しました。(2001/06)

 6550psch.gif


外部電源の仕様と関連のアンプ本体の改造等

 外部電源は、初期 (2000/09) には L/R 両チャネル分共通の B電源およびヒーター電源を収容していましたが、大出力運用時にはリップル・フィルタ出口のキャパシタの容量不足を感じ、別項に記載の「二台の共用外部電源」(Two of common-used external power supplies) に示すものに変更して L/R 独立電源としました。
 すなわち電源部分を先行してモノラル二系統体制に移行した訳です。 何れはアンプ本体もモノラル二台に組み替える予定です。
 本機本体には外部電源コネクタを二系統用意し、すべての配線をシャーシ中央から L/R 独立にして完全な「二戸一状態」とし、シャーシを切断すれば独立可能な状態になりました。(2003/06)

◆一号電源、二号電源装置の概要◆ (詳細は上記別項をご覧下さい。)
 ◇B 電源:市販の AC100V-100V 用100VA セパレーション・トランス の二次側に0〜10〜20〜30V〜40V1A
  のトランスを直列にして全波倍電圧整流にて 250/275/300/325/360V にて最大 220mA を得ます。 
 ◇ヒーター電源:6.3V5A 一系統 (6.3V 終段用)、6.3V3A 二系統 (カソード・フォロワ管の Ehk を考慮)。(2003/06)


EL34 の挿し換え運用および追加の改造等

 すでにソケットのピン1 とピン8 とは接続してあるので、EL34 に挿し換えが可能です。 動作点の設定は 6550 の動作電圧 350V 時の動作点調整状態のままで手を加えず、単純に挿し換えて見ました。
 動作電圧はプレート損失を考慮して 320V (プレート電圧換算では 260V)に抑えた場合、一本当りのカソード電流は 80mA となりました。 この状態では安全かつやや弱気の設定ではあるけれど、動作的には全く問題ありませんから、EL34 挿し換え時の標準運転条件としました。 
 EL34 パラレル・シングルの音には、ビーム管にはない端正さとスリムさが感じられました。(2002/02)
 初段の故障により、終段の G1 に B電圧が掛かる事故を防止するための防護回路を追加し、併せて終段のバイアス電圧監視用の端子を追加しました。(2002/03)
 外部電源のケースを更新しました。(2002/09)
 外部電源の L/R 独立化関連の、コネクタ二系統化および共用部分の独立化配線変更を加えました。(2003/06)

Semi-STC pp 化、および 6Y6GT の挿し換え運用環境の追加改造等

 6Y6GT, 6360, 25CD6-GB の Semi-STC pp の試作を経て、音質的には超三結シングルと余り懸け離れていない、聴きやすく作りやすい準超三結 pp 回路が固定したので、パワーには不満の残る本機のパラレル・シングルを pp 化し、ついでに 6Y6GT を挿し換え対象出力管に加えました。
 ライン入力トランスによる位相反転、初段、および P-G NFB 併用のカソードフォロワ・ドライブ回路は、先行の 6Y6GT, 6360, 25CD6-GB Semi-STC pp と殆ど変わりません。
 ライン入力トランスは 25CD6-GB Semi-STC pp にて実証済みの 600Ω/600Ω無印高級品? を使いました。
 6Y6GT に対応するため、220V500mA 程度の低い B 電圧が供給できるように、外部電源を改造しました。(2004/05)

 6550pps.gif

以上

更新歴
2000/09:一号機の試作
2001/01:出力トランス変更および回路図修正
2001/06:パラレルに改造、出力トランス変更および写真・回路図追加
2001/12:動作電圧の変更、シングル回路図省略、パラレル回路図差し換え
2002/02:EL34 パラレル・シングルの無調整挿し換え運用追加
2002/03:防護回路の追加、電圧監視用端子の追加
2002/12:外部電源等、写真を追加更新
2003/06:外部電源二系統化関連の改造
2004/01:誤字訂正、一部文章整理
2004/05:Semi-STC pp 化および 6Y6GT pp の吸収
2005/06:転用・分解