♪Column - 今月のおすすめELLINGTONCD The FEELリーダー井上によるオススメCDの紹介。

連載第3回 (1998年10月)

THE FAR EAST SUITE

【組曲の最高峰!】
Middle EastからFar Eastまで、Ellingtonが旅した地での音のスケッチブックです。でも、その中身はスケッチというより印象派の本格的な油彩を思わせます。Ellingtonがどれほどそれぞれの風土を表現できているか、日本に暮らす私達には、「Ad-Lib On Nippon」から類推するほかありませんが、下手な役者の関西弁のような、単なる民族音楽のモノマネに終始していないことは確かでしょう。

【この1枚、この3曲】
1.Ad-Lib On Nippon
Ellingtonが想像を絶する民族音楽の世界=日本を映した、10分を超える大作です。ワビ・サビ・枯れの音楽を、あえてJimy HamiltonのClarinetにポイントを絞ったEllingtonに脱帽せざるを得ません。
2.Mount Harissa
「思いだし笑い」という言葉がありますが、私はこの曲で「思いだし鳥肌」が立ちます。酒好きで有名なPaul Gonsalvesですが、一体何に酔えばこれほどまでのTs Soloが吹けるのでしょうか?
3.Isfahan
ライブでもしばしば演奏されたJohnny Hodgesの十八番です。As Soloもさることながら、ユニゾンとハーモニーを絶妙に融合させたアレンジがすごい!

【もうひとこと...】
お気づきでしょうが、我がバンドThe FEEL(Far East Ellington Lovers)のタイトルアルバムです。
この頃Ellingtonは民族音楽をはじめ、映画音楽やポップスなど、さまざまなジャンルの音楽を取り上げたことから「ネタ切れ」が囁かれたそうですが、私はEllingtonのあふれる才能が、素材としてのJazzの枠を超えてしまった結果だと思っています。

【DATA】 (録音 '66/12, New York)
1. TOURIST POINT OF VIEW
  (from "The Far East Suite")
2. BLUEBIRD OF DELHI (MYNAH)
  (from "The Far East Suite")
3. ISFAHAN
  (from "The Far East Suite")
4. DEPK
  (from "The Far East Suite")
5. MOUNT HARISSA
  (from "The Far East Suite")
6. BLUE PEPPER (FAR EAST OF THE BLUES)
  (from "The Far East Suite")
7. AGRA
  (from "The Far East Suite")
8. AMAD
  (from "The Far East Suite")
9. AD LIB ON NIPPON

DUKE ELLINGTON, piano; CAT ANDERSON, HERBIE JONES, MERCER ELLINGTON, COOTIE WILLIAMS, trumpet; LAWRENCE BROWN, CHUCK CONNORS, BUSTER COOPER, trombobne; JIMMY HAMILTON, JOHNNY HODGES, RUSSELL PROCOPE, PAUL GONSALVES, HARRY CARNEY, clarinet and saxophone; JOHN LAMB, bass; RUFUS JONES, drums,
RCA Studio A, New York City, Decenber 19, 1966.
Produced by Brad McCuen. Engineering by Ed Begley.