第39話
あの微笑みはもう還らない!

(シナリオ仮題・この命、果てるとも)

「日が沈むのか?オスカル・・・
ハトがねぐらに帰っていく羽音がする・・・」

医者にアンドレを診てもらうが、もう手の施しようがなかった

「どうしたオスカル、何を泣いている」
「アンドレ・・・式を挙げて欲しい
この戦いが終わったら、私を連れて地方へ行ってどこか田舎の小さな教会をみつけて
そして結婚式を挙げて欲しい
そして神の前で私を妻にすると誓って欲しい」
「もちろんだ・・・そうするつもりだよ、オスカル・・・そうするつもりさ・・・」
・・・・・・・・・・・・・・
「すべては、これから始まるんだから俺とお前の愛も・・・
新しい時代の夜明けも全てがこれからなんだ
こんな時に俺が死ねるはずはない・・・
死んでたまるか・・・

アンドレの右目から一筋の涙が流れて・・・
アンドレ・グランディエ
神に召される
「アンドレ~!私を置いていくのか~!」

その夜、咳き込み血を吐くオスカル
「愛していましたアンドレ
おそらくずうっと以前から気づくのが遅すぎたのです
もっと早くあなたを愛している自分に気づいてさえいれば
ふたりはもっと素晴らしい日々を送れたに違いない
あまりに静かにあまりに優しくあなたが私のそばにいたものだから
私はその愛に気づかなかったのです
アンドレ・・・許して欲しい
愛は裏切ることよりも
愛に気づかぬほうがもっと罪深い」
↑この辺
泣きながら闘っちゃうオスカルが、これまた強いっ!
ジンと来るねぇ

ベルナールがアランの元へ相談に訪れた
バスティーユ牢獄に大量の火薬と砲弾が運び込まれ
雨の中、大砲がパリ市内・・・市民に向けられたと言うのだ

「バスティーユを陥とせ!」

1789年7月14日

一部の市民たちはアンバリッドの武器庫を襲い
36000丁の銃と12門の大砲を奪い、その足でバスティーユへと向かった

午後1時・戦闘開始

大砲がありながらも市民たちは扱い方が、わからず、一方的に痛めつけられていた
そこへオスカル率いる元衛兵隊員達が!

正確な指揮と砲撃にバスティーユの指揮官は
オスカルに狙いを絞るのだった


ワンポイント講座

セルが無くてセリフだらけ~

吟遊詩人も、この回で、何時の間にか死んでます

いきなり星矢に出てきそうな美形の息子!(声・野沢 雅子)が
息を引き取っている吟遊詩人を背負って出てきて
(咳き込んでいるオスカルの脇をさりげなく通ったりしてます)
「もうすぐだからね・・・セーヌはすぐそこだから
とうちゃん、いつも言ってたもんね
死んだら必ずセーヌに流してくれって・・・」

アコーディオンを譲り受け、跡を継いだ息子の
第一作目
セーヌの流れは止まりゃしない
父ちゃんの口癖だった
それでもいつもセーヌは流れる
哀しい事、辛い事
全てを飲み込みセーヌは流れる

ずっと・・・ずっと夜は続く
やがて日が昇り明るい朝の中

涙した人はドアを開く
するとそこに
いつものようにセーヌはとうとうと優しく流れる



これまでにも原作にないエピソードが、数あったアニメのベルばらですが
キャラの顔立ちや位置付け・性格付けが一番大きく異なったのはアランだと思います。

原作だとアランはオスカルに惹かれていく位のレベルですが
アニメでは、オスカルと(特に)アンドレを影ながら応援(影のアンドレの、また影かい!)
実力はありながら、斜めに構えて・・・主人公をサポートする役回りとなりました。

だからこそ、この回で、オスカルは一瞬アランをアンドレと見間違え
「アラン・・・もう一度だけ・・・これで最後だ、泣いてもいいか?」
「ああ、いいぜ・・・思いっきりな」という関係になれたのだと思います

今までに出崎氏が担当してきた作品の中では
ガンバの冒険のイカサマ
家なき子のマチヤ
宝島のシルバー
いや・・・グレイのような感じですね!
オスカルに対して
「ヤツがいっちまって傷ついてるのは、あんただけじゃねぇ」だもん!

バスティーユ攻撃が歴史上、何より名高いのは
それが体制側と民衆との大きな戦いというだけでなく
それが、民衆の初めての意志統一による行為であったからだ
つまり、このバスティーユ攻撃がロベスピエールなどの革命側のエリート達による扇動ではなく
心から新しい時代を求めた名も無い市民たちの
自然発生的な団結による行動であったことに大きな意味があったのである
(この回でロベスピエールとベルナールの仲は険悪~)



愛すること、誠実に生きること
その苦しみから解き放たれるオスカル
そして、今、アンドレの待つ天国へ召され
再び光と影は一つになる
民衆の勝利の声を聞くこともなく
最終回
ベルサイユのばら
さようならわが愛しのオスカル
おたのしみに



最終話
さようなら
わが愛しのオスカル

(シナリオ仮題・さらばわがオスカル)

オスカル撃たれる
「どうした、味方の大砲の音が聞こえないぞ
撃て砲撃を続けろ、バスティーユを陥とすんだ、撃て!アラン撃つんだ」

ここでアランが敬礼していくトコが、これまた泣かせる~

アランの指揮のもと、砲撃は続く

「聞こえるか!オスカル味方の総攻撃の声だ」
「アデュウ・・・」
オスカルが薄れる意識の中で、ふとアンドレを見て

1789年7月14日
オスカル・フランソワ絶命
そして1時間後、バスティーユ牢獄は降伏の白旗を出す


バスティーユでの民衆の勝利で革命が終わったわけでは、なかった
本当の意味での革命はこれから始まろうとしていたのである
すなわち、新しい社会制度の確立であり
今までの権力者たちに対する勝利者たちの裁きであった

事実、フランス大革命により
流された血の多くは
戦いの最中ではなくその後であったと言ってもよい



バスティーユから5年
ベルナールとロザリーがアランを探し訪ねてきた
アランはバスティーユが陥ちたあと、だまって姿を消し
ディアンヌと母親の墓を守りながら海の見える田舎で百姓暮らしをしていた
第33話・たそがれに弔鐘は鳴るで、既にその事を言っているアラン)

「そっくりだ・・・オスカルとアンドレの墓もああしてアラスの小高い丘に並んで立っている」
「オスカルとアンドレか・・・考えようによっちゃ幸せなふたりだったな
革命がたどったその後の醜さを知らずに死んだのだから・・・」


1789年10月1日
革命は起こっても相変わらず続く食料不足に女たちの怒りが爆発した
その怒りは一点、アントワネットへと向けられ
男たちも同調し実に6000を超える大集団がベルサイユに向かったのである

200年続いたブルボン王朝の最後の王妃マリー・アントワネットが、
ついに民衆に深々と頭を垂れたのである


国王一家は民衆の要求によりベルサイユ宮から
パリのチュイルリー宮殿に移された
アントワネットの状況を聞く、今はスゥェーデンにいいるフェルゼン
「オスカル・・・今は亡き我が心の友よ!私に勇気を!
天に翔んだ君のあのペガサスの如き白き翼をこのフェルゼンに!」
雨に打たれながらオスカルに語りかけるフェルゼン

ポリニャック夫人を始め殆どの王妃を取り巻いた貴族たちが
外国へ逃げて行く中でフェルゼンだけがパリへ戻ってきたのだ
「共に死ぬために戻って参りました
あなたの盾となり、あなたを支える為に」

1791年6月20日・夜
一台の馬車がひそかにパリから抜け出した
それはフェルゼンが全てをかけた逃亡計画であった

ボンディで休憩し、馬を取り替える
「どうかもうご安心を、ここまで来ればスンベルスまで一本道
そこには陛下たちの国境越えの手はずを整えたブイエ将軍の騎兵隊が待機しております」
「フェルゼン伯・・・ご苦労でした。ここまでくれば安心でしょう
ですから、もうここであなたはお帰り下さい」
「し・・・しかし・・・陛下」
「ここでお別れしたい
万一の時、外国人であるあなたを危険に巻き込みたくないのです」

ここの画面分割がグ~!
(ルイ16世とアントワネットとフェルゼンの視線に注目!)
「わかりました陛下・・・では、私はここからベルギーへ亡命いたします」
「お気をつけられて私はあなたの友情は永久に忘れないでしょう
おそらく王妃も同じだと思います」
「では!どうか・・・ご無事で!ご成功を心より祈ります」

それはついに光の中へ出ることが出来なかった
恋にふさわしい永遠の別れであった

そして逃亡計画は見事、失敗した
王妃の顔はその悪名とともにフランス全土に知れ渡っていたのだ

ヴァレンヌの町で正体がバレた国王一家は
そのままパリへ連れ戻された
途中の町々では人々が馬車を取り囲み大騒ぎになった
そしてその旅の恐怖はアントワネットの美しいブロンドを老婆のような白髪に変えてしまったという

1792年8月
国王一家はチュイルリー宮からマレー地区のタンプル塔へと移された

そして9月
国民議会に変わって国民公会が誕生
同時にフランスは王制を廃止
共和国となることを世界中に宣言した

ピカルディー州選出議員フロレル・ド・サン・ジュストくん!
古川さん・・・いや (^_^;)
サン・ジュストの演説!
「王は罪の本体である!
私はルイ16世が、まだまばたきをしているというだけで鳥肌が立つ!」

続いて
マクシミリアン・ド・ロベスピエールくん!
森さん・・・いや (^_^;)
ロベスピエールの演説
「彼は生きているだけで既に罪を犯しているのだっ!」

361票対360票
たった1票の差でルイ16世の死刑が確定

1793年1月
ルイ16世は断頭台の露と消えた

子供と引き離されるアントワネット
しばらくしてアントワネットにも死刑の判決が下る

「ベルナール、お前そんな事を話すためにわざわざ俺ンとこへ来たのかい?」
「いや、そうじゃない、私はオスカルとアンドレの事を君に聞きたくて来たんだ
私は今「フランス革命小史」という本を書いている
その本でぜひ、二人の事にふれたいんだよ
少なくとも君は二人を知っている一人だ」
「じゃぁ、なおさらだ
死刑になるアントワネットの話なんか関係ねぇよ」
「いや、それがあるんだ、もう少しロザリーの話を聞いてくれ」


ロザリーはコンシェルジュリ牢獄に移されたアントワネットの身の回りの世話をしていたと言う
「あなたはひょっとしてオスカルと一緒にいつか(第17話・今、めぐり逢いの時ね)
舞踏会でお会いした」
「はい!ロザリーでございます。
少しでもお慰めをと、この役を願い出ました」
「懐かしいオスカル・・・聞かせて下さいなオスカルのことを・・・

「心が休まります・・・オスカルに思いをはせると・・・」

1793年10月16日
マリー・アントワネット処刑

「これは、最後の日の朝、王妃様が私に下さったものです
独房の中にあった化粧紙でオスカル様に思いをはせて作られたと・・・
アランに化粧紙で作られたバラの造花を見せるロザリー
「そして・・・こう言われたのです」
「ロザリーさん、このバラに色をつけて下さいな
オスカルの好きだった色を」
「そう言われて改めてハッとしました
私、オスカル様がどんな色のバラが好きだったかなんて
聞いたことがなかったんです」
「オスカルは知らねぇが、アンドレならきっと白が好きだって言うぜ」

「じゃぁ、このままのほうがいいですね」

「ああ・・・それがいい」

それからしばらくしてロベスピエールとサン・ジュストも
政権争いに破れ処刑される

そしてさらに10年余
アントワネットの死後
祖国に帰り着いたフェルゼンは民衆を憎む
心冷たい権力者となり
民衆の手により虐殺されたという




ワンポイント講座

本放映日は1980年9月3日
この日何があったのか?
何故?見られなかったのか?
それすら覚えていないのですが
今まで39本、毎週楽しみにコツコツ見てきたのにっ!
この40話、すなわち!最終回っ!は見損ねてしまいました・・・

次の日、学校に行ってお友達に
「昨日のベルばらって、どうやって終わったの?」と聞きましたら
「革命から何年か経ってて、アランが田舎にいるんだよ
なんかトウモロコシとか食べてんの
そこに、ベルナールとロザリーが来て、
ロザリーはアントワネットがチリ紙で(せめて・・・ティッシュと言ってくれ)
作ったとかいうバラを持っててさ
オスカルが何色のバラが好きだったか聞くんだけど
アランはわかんないって答えるの」

は・・・
なんかわかんない・・・けど
その当時はビデオやらLDやら、ましてDVDなんてない時代
そういう終わり方だったんだ!と一人、納得<この頃は私もピュアだったから~

数年後の再放送を待ちました!
きぃぃ~っ!
中学校の時に、お友達が・・・
(はっ!友達だと思っていたのは私だけだったのかも!<暗いのね)
話してくれた最終回!
ウソじゃない!ウソじゃないけど!もうちょっと盛り上げて欲しかったわ!
ロマンチックあげ~るよ~♪位に!


アニメと原作ではキャラが全然、違うオスカルの肖像画を描いた画家
原作では、ばあやとケンカばかりしていましたが、
ある日、お花を持って、ばあやに会いにきます
「こんにちは・・・マロン・グラッセさん。あ、あのですね、ぼくは前から」
が、ばあやはアンドレとオスカルと共に神に召されてしまっていたのでした。

アニメでのオスカルの最期ですが
ハトがスッと飛んで行き、それを見ていたオスカルが撃たれるという感じ
(よそ見してたワケね)
ハトの方へ向き「アンドレ・・・」と言うこの辺、好きなんですが
DVDの解説書の出崎氏へのインタビューから一部、抜粋させていただくと
最期にオスカルが撃たれる前に、空を飛ぶ鳩を見るじゃない。
自分が何かを得ることができたと、感じさせてやりたかったんだ。
これから死んでいくオスカルに、何かをあげたかった。
そういう風に考えた

だそうです。

コンテをきりながらキャラに成り切るという出崎監督
(まぁ、その位しないと見ている方にも伝わらないと思うけど)
少し前まではブラック・ジャック
この頃はハム太郎に成り切っていた出崎監督!
これからも頑張って下さい~♪

あ、原作だとバスティーユの白旗を見てから亡くなるオスカルですが
アニメでは、見てないのね (^_^;)

実は!原作はオスカルが死んでからが長いんです~
200ページ位あるの
もう、これは読んでいただくしかないです!

フェルゼンとアントワネットの指輪の話が、あったり
フェルゼンが変装してアントワネットに会いに来たり
国王一家の別れがきっちり描かれたり(ルイ16世の最期が泣かせる!)
ジャルジェ将軍がコンシェルジュリーのアントワネットを訪ね逃亡計画を持ちかけたり
アントワネットの裁判があったり(ここも読み応えあり)
濃い濃い!
原作を読むのはキミだ!
アニメを見るのもキミだ!




18世紀後半のベルサイユ
そこに気高く生き激しく愛し
そして、美しく散っていった女たちがいた
皆様のご要望にお応えして
懐かしい名場面の数々を散りばめて
お送りする
総集編
ベルサイユのばら
ベルサイユのばらと女たち
おたのしみに


2002年12月25日作成



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