ピストン加工

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 今回使用するピストンはメニューのとこにも書いた様に新型NB8C-RSUの純正ピストンを使用します。これはポン付けで圧縮比10.5となりますが,このまま組んだのでは面白くないので,面研で更に圧縮比を上げるつもりです。どのくらい面研するかは実際に燃焼室容積を測定しないと決定できませんが,圧縮比11.5くらいを狙いたいので1mm以上は面研する予定。そうなるとまたリセスを切り直す必要があり,燃焼室容積も変ってくるので,とりあえず既に1mm面研してあるヘッドがあったのでそれに合わせてリセスを切っておくことにします。

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定番の粘土によるリセス確認。
この写真は1mm面研のNA8CのBPヘッドに旧NB8Cの純正カム(242度8.5mmリフト)を組んだもので,吸排気共にカムプーリーをニ山分オーバーラップが増える方向にずらした時の当りです。
この状態ではリセスの掘り込みまでバルブが出ておらずリセスが無くても2mmくらいの余裕がありそう。タイミングベルトが切れない限りはバルブがジャンプしても全然大丈夫な感じです。

しかし,純正の状態ではタイミングベルトが切れてもバルブがピストンと当らないギリギリの深さでリセスが切ってあるそうだが,今回面研をしてもリセスの深さまでは加工するつもりはなので,ベルトが切れたらバルブとピストンがぶつかってしまい,エンジンがお釈迦になるのは覚悟します(^^;。

ここで,深さ方向は無視しても径方向の逃がしは有ったほうが良いので,径方向の隙間を確認する為にもう一度仮組みをして,ピストンが上死点の状態でバルブを強制的に突いてみました。

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見てみると,径方向の余裕は全く無く,バルブとピストンのリセスが丁度こすっているような状態でした。
とりあえず,径方向のリセスを切りなおすことにします。

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まだ不充分ですが,こんな感じまでリセスを広げました。
エンジンの仮組み状態で余裕があっても,実際の運転状態では各部が熱膨張したり,バルブやピストンもちょっと首を振ったりしますので,気持ち広めの方が良いようです。

粘土遊びをしたついでに燃焼室の形状も見てみる事にしました(^^)。

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ピストン中心で粘土をカットした状態。
この位置ではそんなに悪くないと思います。

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バルブのセンターでカットしたもの。
この部分ではピストントップの盛り上がりとリセスの掘り込みがそれぞれ最大の場所で,盛り上りが大きくなったRSUのピストンでは火炎伝播性や掃気性能が悪るそうですねぇ。

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こちらはプラグセンターから吸気バルブのセンターに向けてカットした状態。
粘土の切断面が解りにくかったので赤い線を書いてみました。
写真中央のトップ部分からリセスに繋がる部分のRがキツく,気に入りません。
特に吸気バルブ付近は排気部分に比べ温度が低く,ただでさえ火炎伝播速度が遅いので,この経路は滑らかでないとノッキングが起き易くなるのでとっても困ります(^^;。

ここでノッキングの発生メカニズムについていろいろな説が有りそうですが,おいらなりの解釈を整理してみることにします。(と言っても本やら文献やらで得た知識であるが(^^;。)

まず,共に異常燃焼であるデトネーションとノッキングという言葉がありますが,Webや本などでもたまにごっちゃになっている時がありますね。一応分け方としてはデトネーションは点火前に起きる異常燃焼で,ノッキングは点火後に起きる異常燃焼だと解釈するのが解り易いでしょう。

すなわちデトネーションは焼けたカーボンや排気バルブ等,燃焼室内の局部的な高温部分によって点火前の圧縮混合気が自然着火する現象だそうです。
これに対しノッキングは,点火直後に混合気が吸気バルブ側より先に温度の高い排気バルブ側で燃えて膨張する事により,温度が低く燃えにくい吸気バルブ付近の未燃混合気が急激に圧迫され勝手に燃えてしまう異常燃焼だそうです。
そして深刻な問題となるのはノッキングの方で,こちらはスパークプラグで点火された火炎と自己着火した火炎がぶつかり合い,燃焼ガスが激しく振動してピストンやプラグの表面の冷たい境界層を吹き飛ばし,直接高温ガスにさらされる事によりピストンやプラグが溶損しエンジンブローに至ってしまうのです。

そこでノッキングを抑えるには前述の燃えにくい吸気バルブ側の混合気をいかに燃え易くするかが決め手になります。最も効果があるのがボアを小さくして火炎伝播距離を短くするのが良いらしいですが,そんな事は出来ません(^^;。ピストンのリセスを最小限にして吸気バルブ近傍の混合気の体積を小さくし,出来るだけフラットなピストントップを選定する事で火炎伝播性を上げてやるのも効果的。M2の1028のピストンはリセスも無くフラットなトップ形状をしておりノーマルボアサイズなので正に理想的だったので,RSUのピストンを止めてこれを使おうかと思い発注した所,欠品でおまけに生産中止(泣)。

やはりRSUのピストンでいく事になったので,この盛りもり形状をどうにかしたいところ(^^;。ピストントップの裏側の形状を調べてみると真中の凹んでいる所の高さでフラットに削ることが出来そうでしたが,圧縮比がかなり落ちそうなので断念。ノッキングの発生メカニズムを基にいろいろ考えた結果,スパークプラグの先端部からインテークバルブ側へ向うところだけ,ピストン盛り上がり部の角を落すことにしてみます(^^;。これなら削る量も最小限で済むし圧縮比もそんなに変化無さそうなのだ。

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と言うわけでオペに掛ります(^^;。
赤い線で書いた患部をなだらかに削り取るわけです。赤い線は適当に書いたわけで無く,4個のピストンが同じ様に書けるようにちゃんとスケールとテンプレートを使って書きました(^^;。

この方法は他に見た事が無いので,削り始めはちょっと勇気がいりますね(笑)。

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とりあえず,リューターで荒削り。もう後には引き返せません(爆)。
中仕上げではほとんど取り代がないので,この段階で4個とも同じ様に削っておく必要があります。

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4個とも同じ様に荒削りできたのを確認してから,ケガキ線付近の角にRをつけ,更にトップの凹み部分全体を均していきます。

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最後にいつもの様に磨いてやります(^^;。
もう少し大きめのRで繋いでやりたかったが,元から有ったRより大きくすると,その分だけ肉厚が小さくなるのでこの辺で止めときました。

この加工で重量が0.3gほど軽くなりました。比重が0.27位なので0.3/2.7=0.11cc分だけ燃焼室容積が増えた事になるが,この位なら全然問題無いですね(^^)。

果たしてどれほどの効果があるやら,または悪影響があるかは全く解りませんが,とにかく削った以上これで行くことにします(^^;。この対策で260度カム&圧縮比11.5位がノッキングせずにキレイに回ってくれると有り難いのだが...後は祈るだけ(笑)。


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