刻印のお話

 エンジンをバラした事がある人ならシリンダーブロックやクランクシャフトにAとかC等の刻印があるのを見たことがあるでしょうけど,これが生産ラインでエンジンを組む時に使用する各穴や軸の大きさのランクを示す記号です。大体3ランクに分けていてピストンやメタルの組み合わせを決めています。

それぞれの意味は整備書等に載っていませんが,今回1000分の1mm単位の測定が可能であったので,各部を測定した結果と各部の刻印を照らし合わした事で,ある程度傾向がつかめたのでちょいと書いてみることにしましょう(^^)。

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これはシリンダーボアの刻印。
A,・,Cの3ランク分れており,実測した結果大きいのが”A”でしたね。
整備書によると標準ボアの公差範囲はφ83.000〜83.019mmなので
”A”;φ83.013〜83.019mm
”・”;φ83.006〜83.013mm
”C”;φ83.000〜83.006mm
といった分け方になっていると思われます。
ピストン側にも表示があるはずですが,印刷のようなのでバラしたエンジンでは確認できませんでした。

sokutei07.jpg (17098 バイト)
これがクランク穴径の刻印。
ボアと同じ様にA,・,Cに分れていますが,大きいのは逆に”C”の表示になっていますね。
メタルが入っていない状態の標準公差がφ54.000〜54.018mmなので
”A”;φ54.000〜54.006mm
”・”;φ54.006〜54.012mm
”C”;φ54.012〜54.018mm
って感じかな?。

sokutei07a.jpg (20095 バイト)
これはクランクのジャーナルとピンの刻印。
メインジャーナル径のランクはA,・,Cで表示され,クランクピン径は1,2,3で表示されています。
ジャーナル径は大きいのが”C”で,ピン径は大きいのが”3”ですね。
同様にメインジャーナル径の標準公差はφ49.938〜49.956mmなので,
”A”;φ49.938〜49.944mm
”・”;φ49.944〜49.950mm
”C”;4φ9.950〜49.956mm

クランクピンは45.938〜45.956mmなので
”1”;φ49.938〜49.944mm
”2”;φ49.944〜49.950mm
”3”;φ49.950〜49.956mm
となるはず。

sokutei07b.jpg (34190 バイト)
こちらはコンロッドの大端部穴径の刻印。
1,2,3で表示で大きいのが”3”。
標準公差はφ48.000〜48.016なので,
”1”;φ48.000〜48.005mm
”2”;φ48.005〜48.011mm
”3”;φ48.011〜48.016mm
ってな感じか。

sokutei08.jpg (13852 バイト)
今度はメタルの刻印です。写真の数字の”2”の文字が厚さのランクを示していると思われます。
メーカーが組んだ状態のエンジンは各ジャーナルクリアランスをメタルで調整する為に,メタルにもランクの刻印がされていますね。
この厚さについては整備書とかに載っていないので良く解らないですね。

sokutei09.jpg (19728 バイト)
一応この様にして厚さを測りランクの刻印と厚さの関係を調べましたが,完全に把握できなかったのでここでは書かないことにしましょう。特にクランクメタルのランクはかなり細かく分かれているようで,書くのも大変だし(^^;;;。
とりあえずは数字の大きい方が厚いメタルでした。

いちおう最後に注意書き(^^;。
ここに書いてあるランクの刻印の分け方は推測が含まれていますので完全に鵜呑みにしないで下さいね。
刻印だけを信じてエンジン組んで焼き付いたと言われてもおいらも困るので(^^;;;。(まあ,そんな人はいないでしょうけど。)

どちらにしても1000分の1mmの測定は測定する人や測定器の癖が出ますので,上記の値に完全に入っていない事が多いでしょう。おいらのも入っていなかったものがあったし(^^;。


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