黒ノ十三
(トンキンハウス)


<ストーリー>

「恐怖」には様々な形がある。
未知なる恐怖、日常に潜む恐怖、突然襲いかかる恐怖…そして、我々「人間」の恐怖。
あなたが今から目撃するのは、そんな様々な形をとった、13の「恐怖」である。
さあ、最初のページを開こう…。


PS初期のホラーサウンドノベルですが、2000年6月1日に廉価版が発売されました。
13種類の短編ホラーノベルをオムニバス形式に構成したもので、一言で言うならば
サウンドノベル版「世にも奇妙な物語」といった感じです。
「学校であった怖い話」や「弟切草」のような、いわゆる「一般的な怖い話」とはかなり毛色が異なる内容です。

 

 

この作品の最大の特徴は、シナリオのほとんどが救いようのない結末を迎えることです。
13のシナリオのうち、スッキリとしたホッとする終わり方をするものはたったひとつだけで、
どのシナリオも暗く湿ったどこか心にひっかかるような「恐怖」を感じることができます。
悲鳴をあげたくなるような「怖さ」ではなく、胸の中に黒いものがたまっていくような、じっとりとした「怖さ」を感じます。
よくまあここまで「不快な恐怖」を描いたものだと感心してしまうほどです。
そして、それゆえに強い吸引力を持った内容でもあるのです。
中でも「羽音」というシナリオのダークさは必見です。
おそらく家庭用ゲーム史上最凶の不幸&後味の悪いシナリオと言っても過言ではないでしょう。
これほど最初から最後まで救いようのない真っ暗な物語を見たのは初めてです、私は。
冗談抜きでものすごく辛くなりました。
このシナリオを見るためだけでも「黒ノ十三」をプレイする価値はあると思います。

 

 

しかし、せっかくこれほどの異色の「恐怖」を描いた意欲作だというのに、唯一にして最大の欠点があります。
それは選択肢があるのにシナリオ内の分岐が全然ないということです。
要するにひとつでも選択肢を間違えると即ゲームオーバー
完全にシナリオは一本道で、選択肢は単に「当りか外れか」のふたつにひとつ。
サウンドノベルの最大の魅力である「この選択肢ではどんな展開になるんだろう」というドキドキ感が、
この作品にはまったくないのです。
こんなことなら、最初から選択肢無しでストレートにシナリオを読めるようにした方がよっぽど完成度が高かったでしょう。
選択肢が「単なる時間稼ぎ」のためだけに使われているのはまずすぎます。
これほど異色の、それゆえに吸引力のあるシナリオを揃えているというのに…残念です。

 

 

繰り返しになりますが、私は、このサウンドノベルをクリアした時、本当に残念に思いました。
もし、選択肢によるシナリオの分岐があったら…
あるいは、逆に思い切って選択肢をなくしてしまい、その分内容をさらに深く練り込んでおけば…
たとえ一般受けはしなくとも、意欲作として高い評価をされる作品になっていたかもしれません。
「夜光虫」や「最終電車」の記事でも同じようなことを書いていましたが、この作品は、従来のホラー系サウンドノベルとは
明らかに違った「恐怖」を描いているだけに、よりいっそう残念に思うのです。
惜しいです…本当に惜しいです。

 

おまけ:ベストシナリオTOP3(と言っていいのかどうか…)


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