「輝く季節へ」ベストシナリオTOP3


「永遠と日常」をテーマにした(と思う)シナリオが秀逸の「輝く季節へ」。
ここでは、そんな感動的なシナリオの中で、個人的にお気に入りの3つを挙げてみました。
この作品、熱狂的なファンが多いので、異論が多そうですが…( ^ ^ ;


第1位:「あなたも行ってしまうのですか?」
(里村茜シナリオ)

(あらすじ)

浩平の同級生、里村茜。
極端に口数が少なく、クラスのみんなともほとんど付き合いのない彼女だが、浩平は何かを
待ち続けるかのように空き地にたたずむ彼女の姿に興味を抱き、度々声をかけるようになる。

最初はそんな浩平をうとましく思っていた茜も、毎日を浩平達と一緒に過ごすうちに、しだいに
浩平に心を開いていく。

そんなある日、浩平は雨の降る空き地で倒れかけている茜を見つけ、自宅で介抱する。
そしてそこで、茜は浩平に、かつてあの空き地で別れた幼なじみを今も待ちつづけている事を
告白する。
そんな茜に、浩平は答えた。
「おまえは…ふられたんだ」
それに対し、なぜか涙を浮かべながら「ありがとう…」と感謝する茜。

その日以来、浩平と茜は互いが大切な存在であることを、しだいに意識し始めていく。
だが、そんな幸せな日々は、長くは続かなかった。

幼い日、妹を失った苦痛から逃れるために交わした「約束」が、浩平を蝕み始める。
この現実世界とは違う「永遠の世界」に生きることを望んだ「約束」。
日々希薄になっていく、浩平の「存在」。

自分自身の存在が消滅してしまうと知った時、浩平は…?
そして、茜が語る、幼なじみとの別離の真相とは…?


< コメント >

ぐおおおお!反則だぜそいつぁ!
最初は、男にフラれたショックで無口無表情になった女の子を主人公が救う…という、
ありふれたお話かと思っていたが、これはそれよりもいっそう奥が深かった!
好きだった幼なじみが「いなくなった」ことの真相、そして浩平に対する「ありがとう」という言葉に秘められた本当の意味。
これらが一挙に明らかになり、そして涙なくしては見られない浩平の消滅シーンへと続くクライマックスは、もう最高!
しかし…これ、もし浩平が帰ってこなかったら…まったく救いようのない終わり方だよなぁ…。


第2位:(つたえたいこと、いっぱいあるの)
(上月澪シナリオ)

(あらすじ)

学食でラーメンをこぼしたことをきっかけにして知り合った下級生、上月澪。
言葉を話す事ができないという障害を抱えながら、常に明るく振舞い、不器用ながらも演劇部で一生懸命
がんばる澪に、浩平は幼い頃に失った妹の姿を重ね合わせ、しだいに二人は親しくなっていく。

…だが、浩平は、自分に残された時間が限られたものであることを知っていた。
幼い日、妹を失った悲しみと絶望から逃れるために交わした「約束」。
この現実世界とは違う「永遠の世界」に生きることを望んだ「約束」。
その「約束」が、浩平を蝕み始めていたのだ。
近いうちに、自分の存在がこの世界から消滅してしまうことを確信した浩平は、残された時間を澪のために
使うことを決意する。

演劇部に入部し、残された時間を澪とともに過ごす浩平。
澪や演劇部の部員達との、楽しく暖かい日々が過ぎていく。
そして、日々深いものになっていく澪との絆。

…しかし、「永遠の世界」は、少しずつ確実に浩平を蝕んでいた。
ひとり、またひとりと、周囲の人々は「浩平に関する記憶」を失っていく。
ついさっきまで親しかった人々の目が、まるで他人を見るような目になっていく。
希薄になっていく浩平の「存在」。

そして、ついに澪までもが浩平のことを忘れてしまった…。

浩平は、このまま現実の世界から消滅してしまうのだろうか…?


< コメント >

他のシナリオとは違い、浩平が「自分が消えてしまうまでにできること」を積極的に実行していく姿が印象的です。
澪と浩平との、ほのぼのとしたやりとりも見ていて微笑ましいですし、それだけにクライマックスシーンは泣けます。
また、喋れないというハンデを背負いながら、不器用だけど一生懸命がんばる澪の姿が良い!
こういう障害を持つ人の話を作ろうとすると、どうしても何か悲壮感の漂う話になってしまいがちですが、
それをあくまでも自然に、しかもほのぼのと描写できるシナリオライターさんには感心します、ホント。
それにしても、喋れないハンデを補って余りある澪の表現力は本当にスゴイです(笑)。


第3位:「さいごに泣いた日は…」
(椎名繭シナリオ)

(あらすじ)

遅刻寸前の浩平と幼なじみの長森瑞佳は、近道に通った裏山で、ペットのお墓を作る少女に出会う。
不器用にお墓を作る少女の姿を見て、思わず手伝ってしまう浩平と瑞佳。
ペットが亡くなったショックからか、途中から泣きじゃくる少女を見て、このまま放っておけなくなった

浩平と瑞佳は、暇を見てはこの少女「椎名繭」に会いに行くようになる。
そして、死んだペットのフェレット「みゅー」以外には心を開かず、学校にも行っていないという話を
繭の継母から聞いた浩平達は、なんとか繭を自立させようと、繭を自分達の学校に毎日こっそり
連れて行くという、大胆な行動を開始する。
周囲の予想通り、繭は学校内で様々な騒ぎを巻き起こし、浩平達はその火消しに日々奔走するが、
そんな中で繭は少しずつ少しずつ成長してゆく。

そしてまた、浩平もそんな繭の姿を見守る日々を、貴重なものと感じ始めていた。

しかし、そんな日常は、もろくも崩れ始める。
幼い日の「約束」によって浩平にもたらされる、「永遠の世界」の力のために…。

浩平の存在が消滅してしまった時、繭は…?


< コメント >

2位に続き、今度は「不登校児」を扱ったシナリオです。
これまた、えらい重苦しいテーマであるにも関わらず、あまり悲壮感を感じさせない描写に徹しています。
それでいて、繭が少しずつ成長していく姿がきちんと描かれているあたり、作者のセンスを感じます。
そして、エンディングに出てくる「お母さん」と親友の「みあちゃん」が良い!
はっきり言って打ち砕かれました、私は(謎)。
エンディングだけなら、私はこのシナリオが1番好きです。


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