淡路 吹上浜の小石 (南あわじ市阿万)

 淡路島の南端に位置する吹上浜は、「日本の白砂青松100選」に選ばれている美しい海岸です。青い海を前にして砂や小石の広がるこの海岸は、NHK連続テレビ小説「まんぷく」や「カムカムエヴリバディ」のロケ地になったことでも知られています。。
 海岸の長さは約1.7km。東側は砂浜ですが、西に向かうと徐々に小石が多くなり、西側は小石の広がる浜になります。
 小石の種類は結晶片岩や砂岩やチャートなどが多く、ほかにもさまざまな種類が見られました。小石の上を歩くと、結晶片岩にふくまれる小さな白雲母が、直射日光をはね返してキラキラと光っていました。

南あわじ市 吹上浜


1.吹上浜付近の地質

 吹上浜には和泉層群が分布しています。和泉層群は四国西部から紀伊半島まで中央構造線に沿って細長く分布する後期白亜紀の地層です。沈み込み帯に沿う大陸斜面や前弧海盆に発達した海底扇状地の堆積物と考えられています。
 淡路島南部の和泉層群は、下位より西淡層、阿那賀層、北阿万層、灘層、下灘層と重なっています。この中で、吹上浜には北阿万層が分布しています。吹上浜の東端と西端に露頭があり、北阿万層の砂岩泥岩互層が見られます。
 ほかには、大阪層群や流紋岩~デイサイト火砕岩、段丘堆積物や沖積層が小規模に分布しています。
 淡路島の南端には中央構造線が走っています。沼島は中央構造線の南に位置し、三波川変成帯の結晶片岩が分布しています。

吹上浜周辺の地質図
(シームレス地質図を利用)

2.吹上浜の小石


 紅簾石片岩
  紅簾石をふくむ赤く美しい結晶片岩です。主に石英からなっていますが、ふくまれている紅簾石が赤いために石全体が赤く見えます。白雲母をふくむことが多く、石の表面でキラキラと光を反射しています。
 紅簾石が多い層と少ない層が縞模様をつくり(縞状構造)、その方向に片理(平らに割れやすい性質)が発達しています。小さな黒雲母がふくまれているものもあります。

 ただし、最近の研究からこの赤い鉱物は紅簾石ではなく、Mn(マンガン)をふくんだ緑簾石であることがわかっています。鉱物命名の決まりでは、この鉱物の化学式Ca(Fe3+、Mn3+)Al(Si)(SiO)O(OH)で、Mn3+>Fe3+なら紅簾石、Mn3+<Fe3+なら緑簾石となります。日本の結晶片岩中のこの鉱物は、化学組成分析によってほとんどがMn3+<Fe3+であることがわかったのです。

紅簾石片岩

 砂質片岩
 砂岩が原岩の白っぽい結晶片岩です。片理と縞状構造が発達しています。石英が多くふくまれ、小石の表面では白雲母がキラキラと光っています。
 写真中央の小石には、細長く引き伸ばされた泥質部が見られます。原岩が砂岩泥岩のメランジュであったと考えられます。

砂質片岩

 泥質片岩
 泥岩が原岩の黒っぽい結晶片岩です。片理と縞状構造が発達しています。石英、黒雲母、白雲母、炭質物などからなっています。

泥質片岩

 点紋泥質片岩
 泥質片岩の変成度が高くなり、斜長石(曹長石~灰曹長石)の点紋(斑状変晶)がふくまれています。斜長石は一列に並ぶ傾向にあり、小石の表面では白く見えますが割ってみると淡く緑褐色に色づいています。
 他に石英や白雲母がふくまれ、薄く湾曲した鱗片状の黒雲母が斜長石や石英の粒間に見られます。

点紋泥質片岩

 緑色片岩
 玄武岩が原岩の結晶片岩です。片理と縞状構造が発達し、緑泥石・緑簾石の多い緑色の層と、石英・長石の多い白っぽい層が縞をつくっています
 緑色の層の中で、緑泥石が多い場合は濃緑色、緑簾石が多い場合はウグイス色です。また、小さな白雲母の結晶が見られます。

緑色片岩

 ここまで見てきたいろいろな種類の結晶片岩は、すぐ南を走る中央構造線を隔てた三波川変成帯に由来します。また一部は、和泉層群や大阪層群、段丘層の礫層から洗い出された礫もふくまれていると考えられます。

 石英(石英脈)
 多くが真っ白な石英のかたまりですが、淡いオレンジ色のものもあります。割れ目や空隙(ジオード)に、小さな水晶が見られることがあります。写真右下の石英は、少量の緑泥石をふくんでいます。

 これらの石英は、結晶片岩にともなう石英脈に由来すると考えられます。

石英

 チャート
  白・黒・赤・緑などさまざまな色をしたチャートが見られます。多くがチャートによく見られる黒や白の細いすじが縦横に走っています。
 ルーペで観察すると、細かなパーカッションマーク(他の石とぶつかってできた円弧状の傷)や、放散虫化石に由来する小さな丸い模様が見られます。

 チャートは、和泉層群や大阪層群、段丘層の礫層から洗い出された礫で、その元は丹波帯のチャートに由来すると考えられます。

チャート

 砂岩
 中粒から粗粒の砂岩が多く見られます。明るい灰色のものが多いですが、暗灰色のものや赤褐色ものもあります。砂岩は均質な場合が多く、小石はきれいな丸い形をしています。

 砂岩は、ここに広く分布する和泉層群のものです。

砂岩

 礫岩・泥岩・花崗岩
 礫岩・泥岩・花崗岩がわずかに見られました。

 粒径が2mm~64mmの砕屑物からなる堆積岩が礫岩と決められています。写真の礫岩の礫の大きさは2~3mm程度で、最大は5mmです。礫の種類はチャートや泥岩、流紋岩などの火山岩が認められます。また、石英や長石の結晶の破片もふくまれています。
 礫岩は、和泉層群のものです。

 泥岩は黒く均質で、チャートはちがってカッターナイフで傷がつきます。
 泥岩は、和泉層群中に泥岩層あるいは砂岩泥岩互層として広く分布していますが、風化されやすく壊れやすいので小石として海岸に打ち上げられているのはわずかな量です。

 花崗岩は主に石英・斜長石・カリ長石・黒雲母・普通角閃石からなっていて、カリ長石の色を反映してピンク色をしています。
 この花崗岩の特徴は、淡路島の北部に分布する領家帯の花崗岩に似ています。現在はその分布地域まで距離があるので、大阪層群や段丘層に礫としてふくまれているものが洗い流されたと考えられます。

礫岩、泥岩、花崗岩

 デイサイト~安山岩および火砕岩
 緑色の緻密な岩石です。白い粒は斜長石の結晶だと思われますが、輪郭がはっきりしません。色の薄いもの(写真左上と右下)には、フレーク状の模様が見られます。この2つは、溶結凝灰岩またはハイアロクラスタイトの可能性があります。

デイサイト~安山岩および火砕岩

 泥岩や緑色岩をともなう石英
 黒色の泥岩や緑色の緑色岩をともなう石英が見られます。どれも、緻密な硬い岩石です。ふくまれる泥岩や緑色岩は、層状であったり角礫状であったりします。
 石英脈が周辺の岩石を取り込んだものでしょうか?

泥岩をともなう石英 緑色岩をともなう石英

 緑簾石岩
 微細な緑簾石からなっていて、石英と緑泥石をともなっています。ウグイス色で、片理は発達していません。
 結晶片岩の地層中に見られる緑簾石脈に由来するものと考えられます。

緑簾石岩


■ 場 所 ■ 南あわじ市阿万 吹上浜
■探訪日時■ 2026年7月7日