吹上浜のタービダイトとソールマーク 
(南あわじ市阿万)

写真1 吹上浜西端の露頭(ポイント2)
砂岩優勢の砂岩泥岩互層が連続して見られる

 淡路島の南端に位置する吹上浜は、「日本の白砂青松100選」にも選ばれている美しい海岸です。南に紀伊水道、西に鳴門海峡を望み、白砂や小石の海岸の前には青い海が広がっています。
 この海岸の両端に後期白亜紀「和泉層群」の露頭が現れています。今回、この露頭で地層のようすやソールマークなどの堆積構造を観察しました。

1.和泉層群

 和泉層群は四国西部から紀伊半島まで中央構造線に沿って細長く分布する後期白亜紀の地層です。沈み込み帯に沿う大陸斜面や前弧海盆に発達した海底扇状地の堆積物と考えられています。
 兵庫県では淡路島の南部に分布し、アンモナイト化石が多産することで知られています。
 淡路島南部の和泉層群は、下位より西淡層、阿那賀層、北阿万層、灘層、下灘層と重なっています。この中で、吹上浜には北阿万層が分布しています。

淡路島の和泉層群の地質図
Morozumi.Y.(1985)より引用(一部修正)
 
 青少年交流の家から少し歩けば吹上浜にでます。吹上浜の東側は砂浜ですが、西に向かうと小石が多くなり、やがて一面に小石の広がる浜になります。
 波打ち際(汀線)に沿って、細長い数段の平地が見られました。これはバーム(汀段)といい、波のはたらきによってできたもので、段の数や高さは変化します。今回、段の多いところでは5段まで数えることができました。
 吹上浜で地層が見えるのは、東端(ポイント1)と西端(ポイント2)で、この間は1.7kmあります。
 ポイント1からポイント2への移動では、白雲母のキラキラ光る赤い紅簾石片岩の小石を探しながら歩きました。シロチドリが歩いてると思ったら、近くに卵がありました。

吹上浜の地形図と観察ポイントの位置
 
2.タービダイト(ポイント1)

 ポイント1は、砂岩優勢の砂岩泥岩の互層です(写真1)。
 砂岩は淡灰色で、塊状で不規則な割れ目がみられます。泥岩は黒色で、細かくチリチリと割れています。
 泥岩より砂岩の方が硬く侵食に強いので、泥岩層がへこみ、砂岩層が飛び出しています。これを差別侵食といいます。

写真2 ポイント1の砂岩泥岩互層 写真3 砂岩泥岩互層を見上げる

 このような砂岩と泥岩が交互に重なった地層は、「混濁流(turbidity current)」によってできたと考えられます。そして、混濁流で運ばれてきた堆積物を「タービダイト(turbidite)」といいます。
 では、混濁流とはどんなものをいうのでしょうか。
 海底の斜面の上の方に、まだ固まっていない砂や泥が混じった堆積物があるとします。そこに地震が起こると、砂や泥が水中に舞い上がり砂と泥が混濁した状態で斜面の下へどっと流れていきます。
 それらが深い海底まで流れ落ちると、その中からまず重い砂が落ちて積もり、その上に軽い泥がゆっくりと積もっていきます。これで、一組の砂岩と泥岩の地層ができるわけです。この混濁流がくり返し起こると、砂岩泥岩互層の地層ができ上ります。
 混濁流が発生するのは、地震以外にも悪天候による強い波浪や、河川の洪水による海への堆積物の急激な流入など、いろいろな原因があると考えられています。
 ここで地層の走向・傾斜を図ると、N20°E、40°E(偏角補正済)でした。写真1の左側には断層があります。断層の左側では地層がほぼ水平に重なっています。

3.ポイント1で見られる堆積構造

 ここでの砂岩は全体的に均質ですが、ところどころに2~3mm程度の小石(礫)の集まった礫岩の部分があります。
 写真4では、砂岩の上にはっきりした境界で礫岩が重なっています。礫岩は下ほど粒が大きく、上に行くほど小さくなってそのまま砂岩に移り変わっています。
 このように、1枚の地層の中で下から上に向かって礫や砂の粒径がしだいに小さくなっているつくりを級化構造いいます。普通は、粒径の大きなものほど速く沈んで堆積するためにこのようなつくりとなります。
 級化構造は地層の上下判定に使われ、ここでは地層が逆転していないことがわかります。
 小さな礫からなる礫岩が、砂岩中に乱れてはさまれているところがあります。写真5では、砂岩中に礫岩が、ちぎれたり湾曲したりしてはさまれています。このような地層の乱れをスランプ構造といい、まだ固まっていない堆積物が斜面をすべり落ちたときに、地層の内部が乱れたためにできたつくりだと考えられます。

写真4 礫岩から砂岩へ漸移する地層に
みられる級化構造
写真5 スランプ構造
 
 
 砂岩の中に、大きさ数mm~数cmの泥岩が入りこんでいます(写真6)。これは、偽礫といってまだ十分に固まっていない泥岩の地層の上に砂が流れ込んだとき、泥岩の上部を砂の流れが小さくこわして取り込んだものと考えられます。
 泥岩は、細かくチリチリと割れるような風化をしています。その割れ方が同心円状になっているところがありました(写真7)。このような風化のしかたを玉ねぎ状風化、あるいは球状風化といいます。

写真6 砂岩に取り込まれた泥岩の偽礫 写真7 泥岩にみられる玉ねぎ状風化
 

4.ポイント1で見られるソールマーク

 砂岩層の下面には、いろいろな模様みられます。もともとは泥岩層の上面につけられた水の流れや生物による凹凸ですが、その上に堆積した砂が鋳型(cast)のようにその凹凸を残したものです。
 泥岩層が侵食されて消えると、砂岩層の下にその凹凸が現れます。これをソールマーク(sole mark、底痕)といいます。
 ソールマークには、水の流れによる流痕や重力による荷重痕、生物の活動による生痕(化石)があります。

 流痕の中にも、フルートマーク(flute mark)やグルーブマーク(groove mark)などいろいろなものがあります。
 写真8がフルートマークで、水流の渦が海底面をえぐりとった跡です。ここでみられるフルートマークは、いろいろな形ものものが群れていて複雑な水の動きが感じられます。生痕も混じっています。
 写真9の筋状の模様がグルーブマークです。小石が水の流れにズズッーと海底面を引きずられるとこのような模様ができます。

写真8 フルートマーク 写真9 グルーブマーク
 
 写真10は、砂岩層の下面が不規則な形で飛び出しています。これは、まだ軟らかい泥岩層の上に砂岩層が堆積したとき、地層面に加わる荷重が不均質のため上下の地層が流動化してできた荷重痕(load structure)というつくりです。

写真10 荷重痕
 
 写真11と写真12は生痕です。どちらも底生生物の這い跡のようですが、写真12は這い跡に荷重痕が重なっているようにみえます。

写真11 生痕 写真12 生痕と荷重痕
 
 ソールマークはタービダイトに特徴的にみられます。この露頭から割れ落ちた砂岩が砂浜の上に落ちていました。そこにも、フルートマークや生痕が重なり合っています(写真13)。
 吹上浜は、ソールマークのパラダイス!でした。

写真13 転石にみられるソールマーク
 
5.ポイント2

 長い海岸の砂や小石の上を歩いてポイント2へ。
 こちらも、砂岩優勢の砂岩泥岩互層です。地層の厚さに変化があって、砂岩の厚さが10cm程度で細互層しているところと、砂岩の厚さが2mを越えるところがあります。
 地層の走向・傾斜はN25°E32°E(偏角補正済)で、ポイント1と大きなちがいがありませんでした。

 写真14は吹上浜を代表するかっこいい露頭です。
 白っぽい層が砂岩で、黒っぽい層が泥岩です。泥岩でもやや粒が大きくて硬い層は、砂岩と同じように大きな地層面として現れています。

写真14 ポイント2の砂岩泥岩互層
 
 ここでも、砂岩層の下面にさまざまなソールマークがみられます。写真15はフルートマークです。また、砂岩層の断面に、荷重痕をつくった地層の凹みが現れています(写真16)。

写真15 フルートマーク 写真16 荷重痕の断面
 
 砂岩層の断面をみると、級化構造や葉理がみられますが、写真17のように波打ったような模様もみられました。波模様の上下で、粒の大きさにちがいがみられて細かいところが少し凹んでいます。どのようしてこのような模様ができるのか、いろいろな原因が考えられそうです。

写真17 砂岩層の断面に見られる堆積構造
 
参考文献
 Morozumi,Y.(1985) Late Cretaceous(Campanian and Maastrichtian) ammonites from Awaji Island,Southwest Japan.Bull.Osaka Mus.Nat.Hist.,no.32,p.1-58.



■岩石地質■ 後期白亜紀 和泉層群北阿万層
■ 場 所 ■ 南あわじ市阿万
■探訪日時■ 2026年7月7日