鹿友会誌を紐とく
第二十五冊(大正13.1)
 
△前年大正十二年九月一日関東大震災あり
 
△震災叢記「大震を体験して 哲嶺」
 この震災そのものを記事にするものではない、震災によって表れた現代の弱点を暴露し てみる。思ふにこの震災は、東京市民に共同の訓練一致の精神があれば、大災害には至 らなかったであろう。東京は、多くは借家人である為、家財は大事であるが、家屋を我 物ではないという様な気分がある。また隣りに不幸があっても無関心というような風潮 がある。
 かかる借家人根性と隣保互助の精神の欠如が、かかる災害を大きくさせたといって過言 ではない。これを以って現代市民心理の弱点であると、暴露したい。ビルや会館の崩壊 は、拙速ごまかし、外装主義の弱点の暴露である。これら弱点の立脚し、現代思想の一 部にふれてみたい。共産思想が広まったら私有思想と同一程度の物を大事にし、物を改 良し、物を保存する等の心はどうなるのか。勿論共産主義には、現代私有制度の顕著な る弊害を根治するやむなき方便にて立脚しているのであろうが、私は人間自然の本能に立 脚した制度が最善であると思う。この制度の弊害の防止は、他に方法があると思う。人 間の弱点として、今回この様な形で表れたのである。
 
 最後に二つ程主張する。一は低資融通して東京などは盛んに私有家屋の建設を助成の こと、二は市民教育、即ち市民の心持ちを復興の気運にのせることである。
 
△同「大震災とカヅノ 川村十二郎」
 震災を受けた状況を記し、香川県の対応の素晴らしさを紹介する。その際の言葉とし て、
「他日、若し郷里に何事かがあった場合には、諸君の援助を願はなければならぬから、 今回はどうぞ遠慮なく受理されたい」と。
 
 香川県の様にやって欲しいと云っているのではなく、もう少し何か考えて郷里の人た ちが方法を講じてくれたなら、我々も本当に嬉しかったろうと思う。由来郷里の人々は 呑気である。平時何事につけても遅れがちで、その為に少なからず不利益をこうむるこ とがあると思はれる。是非頭を機敏に働かす様頑張って欲しい。
 
△「思のまゝ (大阪)奈良一生」
 九月一日午前十一時五十分、未曾有の大震大災害、開いた口が塞がらぬ程悲しみ、且 つ驚きました。
 会員諸君の身を案じております。
※本会誌は、政治とか産業とか云うような色彩を帯びている訳ではなく、主に会員諸賢 の各活動地における通信によって編しゅうされ、鹿角人の活動した跡を永久に物語る 一種の記録、又は歴史であるように思われます。
 
△本会記事
 十月五日の簡、東京地方大震災のため、郵便貯金その他に故障起こりたるため、貸費 生への送金不可能となりたるに依り、地方委員長内田清太郎氏預金の中より金百五十五 円を受け取り、九月・十月分送金せり。
 
△編集後記
 震災後、印刷費騰貴その他の理由に依り、東京にては印刷困難、或いは注しとすべき か憂いたが、会員石木田徳造様(石木田印刷所)が極めて低価で印刷を受諾してくれた。 厚く御礼を申し上げる。
 
△会員名簿等
 なし(近いうちに別冊にて送付する)

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