1602b 和歌のこころ(つづき)
△歌道伝授
いにしへも今もかはらぬ世中に こゝろのたねを残す言の葉(幽斎)
もしほ草かきあつめたる跡とめて むかしにかへせ和歌のうら浪(同)
返し
あけて見ぬかひも有けり玉手箱 ふたゝび返すうら島のなみ(光広卿)
かへし
浦島やひかりをそへて玉手箱 あけてだに見ずかへす波哉(幽斎)
人の国ひくや八島も治りて ふたゝびかへせ和歌のうらなみ(幽斎)
もしほぐさかき集めたる跡とめて むかしにかへせわかのうら浪(同)
かへし
万代をちかひし亀の鏡しれ いかでかあけんうら島がはこ(光広卿)
あけてみぬかひもありけり玉手箱 ふたゝびかへる浦島のなみ(光広卿)
いにしへも今もかはらぬ世中に こゝろのたねを残すことの葉(幽斎)
(以上、常山紀談 十四)
長歌
神こゝに あふぎ初けん むかしとや まさ木のかづら 末かけて 家にとゞめし こ
との葉の 道の伝への 書の巻 代々に開て みそなはす 庭の訓は いにしへに 今
もかはらぬ よろこびを 和かの浦はの 松かげに 千世もといはふ 友鶴のこゑ
反歌
言の葉の道をつたへの此宿の むかしを今にまもる神垣
この神の恵のまゝにことの葉の 道をつたへの宿ぞさかへむ
(風のしがらみ 下 為村卿)
△父子伝統
和歌の浦にかきとゞめたる藻塩草 これをむかしのかたみとも見よ(中略)
かへりごと
つひによもあだにはならじ藻塩草 かたみをみよのあとにのこせば(いざよひの日記)
はかなくも人の心のあら磯に 思ひかけゝる老の波かな(為世卿)
さればこそよるとはちぎれ葛城の 神も我身も同じ心に(為兼卿)
雛の子もいかで忘れん老鶴の たつかた思ふ和歌の浦路を(了俊在判)
(今川了俊和歌所 江 不審条々)
もとすけがのちといはるゝきみしもや こよひのうたにはづれてはをる
その人の後といはれぬ身なりせば こよひのうたはまづぞよまゝし(枕草子 五)
いかばかり子をおもふつるのとびわかれ ならはぬたびのそらになくらん
(いざよひの日記)
△師弟伝統
山ふかみおちてつもれるもみぢばの かわけるうへにしぐれふれなり(長能)
はるがすみしがのやまごえせし人に あふこゝちするはなざくらかな(能因)
(袋草紙 三)
われまでは三代につかへて玉つしま かひある神の光りをぞ見る(権大僧都尭尋)
我も三代人も三代まで馴れきつゝ ともにぞみがく玉津島姫(尭憲)(和歌深秘抄)
なさけある友こそかたき世なりけり ひとり雨きく秋のよすがら(落書露顕 為秀)
末とをく春をしめ野に敷島の みちをも契草まくら哉(東野州聞書 元胤法印)
大かたの袖だにしぼる五月雨に 雲井の外もくれがたの世や
しばしだによるべと頼む和歌の浦や 海士の苫屋も波はあれつゝ(東素山消息)
よぶこ鳥こゑする山の奥ふかき 道しる人ぞ世にまれらなる
(風のしがらみ 有栖川職仁親王)
寄松祝
老の波かけて千とせもいくかへり かげたのまゝし和歌の浦松(淳時)
寄道祝
和歌の浦やあしべの田鶴の幾千歳 なれてふみ見ん敷しまの道(孝之)
神代よりよゝにたへせぬ日の本の さかえ久しき敷しまの道(りつ)
さかへ行道は難波津浅香山 よゝのことばのかぞいろにして(景貫)(一話一言 二)
△流派
白雲の春はかさねて立田山 をぐらが峯に花にほふらし(東野州聞書)
しきしまの道の教は一すぢを 誰がまよひよりわかれそめけん
(風のしがらみ 上 為久卿)
あらそひてひろふ心のうつせ貝 二見の浦に何とよすらん
二重には引ぬ習のあづさ弓 八幡の神もかけてしるらん
(延(延冠+虫)エビスの焼藻の記 上 為泰卿)
くれなゐににほへる鶴のいたゞきは 八千代ふりにし霜やそめけん
(寄居歌談 二 千種有功卿)
わかの浦にたちまじはるもはづかしや 独色なき松のことのは
(風のしがらみ 下 下冷泉宗家卿)
△流派互争
なけとなる有明がたの月影に 郭公なる夜のけしき哉(為兼卿)
荻の葉をよくよくみれば今ぞしる たゞおほきなる薄なりけり(同)
十五夜の山端いづる月みれば たゞおほきなるもちゐ成けり(古狂歌)(野守鏡 上)
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