はじめての「しゅさい」
〜第二回 霧の赤城山〜


「やだ!こんな天気でイベントの主催者なんてやりたくない!」

正直な感想だが自分の立場と多くの協力者と多くの参加者の期待が、こんなアホ野郎の双肩に重く圧し掛かる。

「この後に及んで是非も無し!」

織田の軍勢に囲まれた小谷城の天守閣に立つ浅井長政にも似た心境で金曜の仕事を終える。

 

いよいよ赤城に向けて出発に成る。

総督専用車は生憎の車検で家には無く、

新座市の某自称タイヤ屋の駐車場で主が迎えに来るのを今や遅しと待ち焦がれている。

(店長が何と言おうが、天地神明に誓ってチューニングショップだ!俺は確信するぞ)

今夜の予定は主催者として決して遅刻の出来ない立場上、

土曜日の午前到着が必要条件だ!で、あるから夜通し移動して現地で車内泊!。

車検で交換した高額なタイヤを慣らし運転させつつ一路自宅に向かう。

自慢じゃないが大破二回の俺のマシンはその名のとうりピット入りする度に進化する。

今回の進化はグリップ力が鬼の様に利きまくる横浜タイヤの自信作を新規搭載。

大きな変化に感動しつつ家路を急ぐ。

飯を食い、恒例の出発前ド○キホーテで食料と飲料水を買いこむ。

あの店が出来てから出発当日での準備忘れの品の補填が容易に成った。

何せエアガンも(M−60でさえも)売っているから有りがたい。

我が軍の本拠地の川口を出発して4国を北上し栗○町に入る。

栗○町の元町防軍士官のD・ケーン・マッター中尉を迎えに行く。(D=ドミンゲスの略)

彼はジオン軍籍を拒否するが既に既成事実が有る為、誰もが彼をジオン軍人と疑わない。

いよいよ赤城だ。高速に乗り一時間で行ってやる。

俺のマシンはまた進化したのだ、かっ飛んやる。



おい!      マッター中尉!

貴官は俺に恨みでも有るのか?

 

気付かなかった俺も悪いがナビをすると言ったよな?

ここは宇都宮だぞ!しかも当然東北道だ!

我々の目的地は関越道の赤城高原PAで、Powered Suit大尉との会合点は上里SA。

「至急Powered Suit大尉に連絡を取り会合点の変更を知らせろ。」

宇都宮ICから一路赤城にカーナビを設定する。

思い起こせば加須ICから高速に入ったな。

間の抜けた話だカーナビを搭載していながら高速を間違えるなんて。

今ごろ寝ていられる時間なのにな〜、

と思いつつ延々対向車もほとんど無い道をひた走る。

 

朝の4時にようやく赤城山の麓の7/11に到着。

8:00までしばしの仮眠を取る。その後エンジンに火を入れて山道を登ろうかと出発する。

ジオン軍・山岳特殊攻撃隊「チーム・Rot Fuchs」のデューク・東郷 隊長から電話が入る。

「おはよう御座います。いま7/11の駐車場です。総督は何処ですか?」

おい!今そこから出発したんだぞ!方向転換して元来た道を戻る。

「おはよう御座います」「おはよう御座います!」

しばらくぶりに人と話す。

「この天気じゃどうですかね〜」「いや〜頑張りましょう」

取り合えず現地入りする。


以外にも3台も既に駐車していた。

なんだかんだで十数人の人間が集合した。

今回も協力的に参加をしてくれた「死ね死ね団」の唐沢軍曹も到着した。

唐沢軍曹らしい派手な登場である。

「死ね死ね団」の名の表すとうり彼らはなかなか曲者のようである。

到着早々細い駐車場入り口で上から降りてくる対向車を交わそうとして、

登坂路脇の側溝に片側の前後両輪を落としてしまった。

我々は最初気が付かなかったがここの管理人の金子軍曹は、

その脱輪音を聞き覚えの有る物と知覚的に判断した。

我々も「ゴト!ガ・ガガ・ガ」音は聞いたが半信半疑で様子を見に向かったら、

「あ!ほんとだ」

そこには余りの出来事に困惑する「死ね死ね団」輸送部隊が進軍を停止していた。

こんな時の地元の方々は大変に頼もしいものである。

迅速に脱輪した左前輪に枕木をかましジープで牽引する。

わずか15分程でこれだけの事件は解決した。

我々だけなら一時間はかかる大事故であったが見事解決した。

しかし、全く解決しないのが天気である。

10人以上の土曜入場組みが集結しても、

テントの外に出て野山を駆けずり回る気に成らない

自分も取り合えず着替えるだけは着替える。

遅れてケン・マッター中尉も着替えた。

 

・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・!

鍵は???

ケン中尉、鍵!

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!!!

「金子軍曹、IN・キーです」

こんな山奥でIN・キーかやれやれ。

軍曹と管理人の方が一生懸命鍵をこじ開けるべく奮闘する。

しかし、総督御自慢の三菱自動車が当時の最高水準技術の結晶を結集した、

総督専用MSはびくともしなかった。

仕方が無くJAF成る謎の集団に解決を依頼する。

待つこと40分。以外に迅速な対応でこの事件も解決した。

中尉はバックの上にキーを置いたままトランクを閉めてくれていた。

帰ったら軍法会議物だな!


まだまだ天気の回復は見込めない。

仕方が無く食事を仕度して時間を稼ぐ。

食事が終わる頃にはどうにかなるかな?と淡い期待を抱く。

食事はバラエティーに富んでいた。

我が隊の「デューク・東郷 隊長」ご自慢のローストビーフや、

本物の米軍のレーションなど我々半端者の知識の範疇を越えた豪華な料理であった。

当然うまいし量も多い。

未だに大食漢の習性が抜けない自分には最高の食事だった。

食事も終わり談笑しているとやや天気が回復してきた。

肩慣らしのハンドガン戦が有志に寄って行われた。

霧の中のハンドガン戦で歓声が上がっていた。

時間も6時ごろに指しかかり皆また大人しくなり、

酒も本格的になってきた。

各々思い思いの場所で赤城の夜を楽しんでいた。


無理矢理車内で一泊する。

体が痛い余り熟睡は出来ていない。

早々から日曜の参加者が駐車場に入ってくる。

取り合えず天気は小康状態で降ってはいない。

「やりますか!」

 

ルールは人数を考慮して改定する。

一度当たりその場近くに衛生兵がいない場合は一つ死ぬ。

一度死んだら自軍の陣地に後退して再度出撃可能。

今来た道をまた戻り前線に赴くことが可能である。

二度死にで30分の出場停止。

要は二回当たれるのだ!。

人数の少ない分回転率を上げて射撃戦闘時間を多くする。

功・守それぞれの戦力差も回転率が潤滑な内は均衡が保てる。

双方の人数は互角であり、前線が崩壊すると後方の陣地の人員が増えて、守勢の勢力がまとまる。

功勢側は疲弊した戦力を後方より増援しつつ更に前進する。

しかし攻勢側は攻勢に失敗すると戦力の多くを30分失う。

攻撃のリスクは二回戦死者を確実に増やすのだ。

40人そこそこの参加者で20vs20で早々に決着が付かないのは、

今回の特殊ルールが以外に有効な為である。

実際に30分出場停止組は攻守の勢力図を反映して片方に偏るが、

復帰すると攻守の攻勢図が見事に入れ替わる。

一回戦死済みの兵員を多く抱えたままの攻勢が、如何に脆弱な攻撃力で有るかを物語る。

衛生兵ルールも非常に良く機能していた様である。

 

人数も余り多く集まらなかったが、ゲームとしては参加者の方々に楽しんでいただけたので、

主催者として一発のBB弾も打てなかったが満足の行く結果であった。

今回の赤城演習で我々ジオン軍は、来年5月の24時間戦に向けて多くの援軍を確保できた。

今回の参加者の方々は必ずジオン勢に参戦してくれるであろうと確信する。

来年は十分な戦力で戦えるであろうと、大きな自身を持たせてくれたイベントであった。

 

ジオン勢二連覇に向けて頑張りましょう。

 

独立極東方面隊 マーク・グレイダー総督

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