外国人をタクシー運転者に採用する方法
(機関誌「全乗連ナウ」より抜粋)
Q 運転者不足が続いており、これから先も充足の見込みはありません。外国人を運転者に採用できれば助かるのですが、色々な規制があって難しいと聞いています。外国人をタクシー運転者に採用する方法はないでしょうか。
A 運転者の確保に苦労しておられる多くの事業者の声を代表する形でのご質問を頂きました。多数の外国人タクシードライバーが活躍しているニューヨークなどを意識したご質問かと思います。
タクシー運転者になるためには、言うまでもなく第2種運転免許が必要です。道路交通法では、外国人の運転免許取得についての除外規定はありませんので、1種免許,2種免許とも外国人の取得が可能です。従って、適法に在留している外国人は、日本人と同様、1種免許を取得した3年後には、2種免許の受験資格が得られます。
一方、外国人が就職したり働くために日本に入国・在留する場合、これに関する基本的事項は「出入国管理及び難民認定法」(入管法)に定められており、外国人は、上陸許可に際して決定された在留資格をもって在留することが原則とされています。
在留資格とは、外国人が日本に在留する間、一定の活動を行うことができる
法的資格です。この在留資格は、
@「外交」、「公用」、「教授」、「芸術」、「報道」、「投資・経営」、「法律・会計業務」、「研究」、「技術」等、一定の範囲内の職種、業種、勤務内容に限って就労が可能な在留資格
A「文化活動」、「留学」、「就学」、「研修」、「家族滞在」等、収入を伴う職業活動が原則として認められていない在留資格
B「永住者」、「日本人の配偶者等」、「定住者」等、職種、業種を問わず就労可能な在留資格
の3分類28種類に分けて掲げられており、外交、公用、永住者以外の在留期間は、在留資格によって分かれますが、最高でも3年以内とされています。
@の在留資格を持つ一般の外国人は、それぞれの在留資格で定められた活動以外の活動は出来ないこととされています。
平成7年12月に閣議決定された、第8次雇用対策基本計画においては、日本政府の外国人労働者受入れの基本方針として、「専門的、技術的分野の労働者は可能な限り受け入れることとするが、いわゆる単純労働者の受入れについては、我が国経済社会に広範な影響が懸念されることから十分慎重に対応する」とされています。今のところ、一般の外国人をタクシーの運転者として就労させることは出来ず、我が国では、ニューヨークのような姿は期待できないようです。
Aの在留資格を持つ外国人は、本来の在留資格に属する活動を阻害しない範囲内で資格外活動の許可を受けて就労が認められます。
例えば、留学生や就学生のアルバイトについては、本来の活動である勉学活動を阻害しない範囲と考えられる1日4時間以内で許可されています(許可を受けて延長も可能)。従って、入管法上は、日本に3年以上在留し、2種免許を取得した外国人留学生が資格外活動の許可を受けてアルバイトとしてタクシーの運転業務を行うことが可能かと思いますが、「日々雇い入れられる者」や「使用期間2ヶ月以内の者」等の選任を禁止している旅客自動車運送事業等運輸規則に配慮する必要があります。
一方、Bの在留資格をもつ外国人については、日本国内での活動に制限はなくどのような職業でも就労することができますので、2種免許を持っていればタクシー運転者として就労できます。2種免許取得のために、まず1種免許を所持し、3年以上日本に在留していることが必要であり、お客様と接するタクシー運転業務の特性から、業務に支障をきたさない程度に日本語が出来ることも必要です。
このうち「永住者」とは、法務大臣が永住を認めた在日韓国、朝鮮人の方々です。日本の社会に同化され、日本語も堪能な方々が多いと思います。既に1種免許を持っている永住者を採用、養成し、2種免許を取得させてタクシー運転者として就労させることが可能ですが、これらの方々は、外国人というイメージが薄いため、ご質問の趣旨にはあわないかなと思います。
「定住者」とは、法務大臣から在留期間を指定して居住を認められた、南米からの二世、三世等の日系人の方々です。平成2年に施行された改正入管法により、定住の資格が与えられました。日本語については、個人差がありますが、必ずしも堪能ではないかと思います。在留期間や日本語の能力更には良質なタクシー運転者としての資質の確保に配慮しながら、永住者についてご説明したような対応をされるのが現実的かと思います。
以上、現在の法制度等を参照しながら、ご質問にお答えしてきました。政府の方針が、いわゆる単純労働者の受入れに慎重なため、期待されるような回答にはならなかったと思います。事業者の中には、既に外国人をタクシー運転者として採用しておられる方もおありかと思いますので、色々な情報を教えていただければ幸いです。
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