加齢、病気、障害などのために、生活の中で移動することが困難な人々にとって、公共施設等の建物や公共交通機関を利用する上での負担を出来る限り軽減する設備や制度等を導入する、いわゆる「バリアフリーの推進」は不可欠です。

ハートビル法と交通バリアフリー法を統合・拡充した「高齢者、障害者等の移動の円滑化の促進に関する法律(新バリアフリー法)」が平成18年6月に公布され、タクシー事業者も、新たに同法の対象とされました。        タクシーとバリアフリー新法

 タクシーは、単独では移動が困難な人々の個別の事情、状態に対応して、ドア・ツー・ドアで機動的に移動できる公共交通機関です。地域の公共交通機関として、こうした人々のニーズに的確に応えていくことは、タクシーの社会的な責務であり、今後重要性を増していくと考えます。

また、平成18年5月の道路運送法改正により、地域交通会議又は運営協議会において必要性の判断等を協議し、合意を得ることを条件に自家用有償旅客運送の登録制度が定められました。

地域交通会議、運営協議会の場では、自家用有償旅客運送の協議に止まらず、地域の公共交通のあり方が適切に議論され、タクシーの社会的な役割や活用についても、利用者や市町村等行政の理解や支援が得られることを期待しています。

タクシー業界においては、高齢者、障害者等手助けが必要な方々の外出支援サービスを「ケア輸送サービス」と呼んでいます。平成13年に(社)全国乗用自動車連合会内にケア輸送特別委員会を設けるとともに、(財)全国福祉輸送サービス協会と協力し、24時間365日、いつでもどこでも安全で快適なケア輸送サービスの提供を目指して、事業者に対してサービスの促進を呼びかけています。

また、ケア輸送サービスの提供にあたり必要な知識や技能を身につけたタクシー運転者が増加するように、平成14年からはケア輸送サービス従事者研修を各地で実施しています。

▽安全対策

タクシー事業者は、国土交通省が示した「安全マネジメントに関する指針」(平成18年9月)に基づいて、経営トップから現場の運転者まで、組織的に安全性の確保に取り組んでいます。

タクシー運転者は、第二種免許の取得に加え、実際に運転に従事する前には、適性診断と最低10日間の教育・指導が義務づけられています。さらに、営業所の運行管理者(国家資格)は、各運転者の健康状態を把握するとともに、始業前、終業後の対面点呼を実施し、問題点の指摘や対応を指示し、場合によっては乗務を禁止します。

また、タクシーの事業用自動車については、資格が定められた整備管理者の管理の下で、日常点検のほか3ヶ月ごとの定期点検、1年ごとの車検が実施されています。



▽運賃

タクシー運賃は、申請による認可制度が維持されています。

ケア輸送サービスの運賃・料金は、地域の状況や事業者の創意工夫により様々です。

身体障害者のタクシー利用を促進するために、事業者のほとんどが1割の障害者割引を採用しています。このほか、知的障害者、精神障害者、妊産婦、要介護者、一定年齢以上の高齢者等について運賃割引を採用する事業者もいます。

▽タクシー業界における福祉自動車等の増加 

ケア輸送サービスを行うタクシー事業者数及び同事業者が使用する車両数は、毎年増加しています。平成15年3月末の1,594事業者、3,276台から、18年3月末の6,113事業者、9,699台と、3年間で事業者数は約4倍、車両数は約3倍になりました(国土交通省調べ)。

また、これとは別に、福祉輸送限定事業以外の一般タクシー事業で使用される、回転シート、リフトアップシート等乗降を容易にするための装置を持つ自動車が、平成18年8月現在で2,600台使用されています((社)全国乗用自動車連合会調べ)。

▽福祉自動車を活用した共同配車センター

平成18年10月に、タクシー事業者が東京都の協力を得て、福祉自動車を活用した東京福祉タクシー綜合配車センター を開設し、前日までの予約があれば、介助が必要な高齢者、障害者に対応した配車ができる仕組みが調いました。

配車センターは大阪でも検討中ですが、こうした配車センターの取組みが、利用者の支持を得て各地に広がることが望まれます。                   

▽介護保険等の取扱いについて

タクシー業界においても、介護保険の訪問介護事業所や障害者に介護サービスを提供する居宅介護事業所の指定を受け、介護福祉士や二級ヘルパー資格を取得した運転者を従事させて、地域の高齢者、障害者に介護サービスを提供するタクシー事業者もいます(通称「介護タクシー」)。

介護タクシーは、移動支援サービスが介護保険以外に提供されていないという地域もあり、高齢者や障害者に受け入れられ、通院等に利用されています。

平成16年度から身体介護サービスの類型として通院等の自動車への「乗降介助」が切り分けられ、また、18年度からは従来「乗降介助」サービスを受けていた要介護者が要支援者に移行してサービスが打ち切られる等、介護タクシーは、利用者だけでなく事業者も制度改正に振り回される状況があります。

業界では、17年1月に「介護タクシーのサービス効果等実態調査」を実施し、その結果を踏まえて、同年5月に厚生労働省に「介護タクシーが提供しているサービスは、外出支援による利用者の生活機能の維持、改善に資するサービスであり、介護タクシーの役割を認識されるとともに、介護保険等においてケア輸送サービス従事者研修を位置づけるように」要望しました。


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