「入札公示・入札公告」から郵政省が見える・・・・・・・・

  「政府調達号外」って知ってますか?


 郵政省に限らない話ですが、お役所という組織は割り当てられた(もしくは勝ち取った)予算をもとに、業務を遂行するのが仕事です。

 正確には、年末の予算折衝で政策を打ち上げ、大蔵省からお金をもらってくるわけですが、ともあれ、そのお金をもとに業務上に必要な物品を購入するわけです。

 お役所が物品を購入する場合は、(1)契約額が1,700万円以上のときは原則として「一般競争入札」としなければなりません。また、(2)契約額1,700万円未満の場合も原則として「一般競争入札」となります。または、(3)別の業者で代替ができない場合などは、「随意契約」とされます。

 このうち、(1)と(3)については、大蔵省印刷局が発行する「官報」の「政府調達号外」に掲載されることになっています。入札情報を広く業者に周知するという面と、落札情報を国民にチェックさせるという面から、公示・公告されているのです。

 まぁそういった面とはまったく別の見方ではあるのですが、この「政府調達号外」の公示・公告を見ると、「これから起きること」が見えてきます。その公示の中から、興味深いものを抜き出してご紹介します。

(なお、公示は上から新しいものです。)

#この項は、篠原和宏さんからご指摘をいただきました。ありがとうございました。


・平成12年分入札予定から

品名

個数

時期

調達機関

公示日

個数

郵便貯金キャッシュカード(一般用)

6,613,209

6月

本省

国際エクスプレスメールラベル(C)

6,429,941

7月

本省

バーコードラベル(簡易用)

155,750

7月

本省

バーコードラベル(現金用)

191,150

7月

本省

郵便貯金総合通帳(ぱ・る・る)

2,492,940

5月

本省

新郵便貯金総合通帳(ぱ・る・るA)

1,413,024

10月

本省

郵便小包ラベル(普通用A)

67,973,000

7・2月

本省

郵便小包ラベル(普通用B)

14,378,000

7月

本省

郵便小包ラベル(普通用B−2)

17,320,000

7月

本省

新郵便番号簿(平成12年用)

4,000,000

7月

本省

新型区分機

141

10月

本省

5/18

104

新型区分機用情報入力装置

118

10月

本省

5/18

87

バーコード区分機(A型)

16

10月

本省

書状自動押印機(N6)

124

3月

本省

大型郵便物用区分機(実用実験機)

1

7月

本省

郵便振替窓口端末機

88

5月

本省

付加振替端末機

283

5月

本省

郵便局用窓口端末機(共用III型−A)

566

5月

本省

為替貯金窓口端末機(IV型)

1,197

6月

本省

郵便局用窓口端末機(III型−A)

593

5月

本省

郵便局用窓口端末機(V型)

57

5月

本省

振替端末機

200

4月

本省

郵便貯金自動預払機(IV型)

1,720

10月

本省

郵便貯金自動預払機(IV型)

2,084

4月

本省

申込書OCRシステム

7

5月

本省

郵便追跡情報端末機II

318

8月

本省

郵便追跡端末機II

2,198

8月

本省

再配達自動電話受付機

99

9月

本省

ハイブリッドめーるによる電子内容証明サービス

1

5月

本省

  4月21日付官報にて、平成12年度の物品入札予定(年度当初分)が出ました。あまり昨年と大きく変わらず、まぁいつものラインナップではあります。

「大型郵便物区分機」は昨年(7月入札)に引き続きの登場です。

今回は昨年出ていた「取り揃え押印機(要は和欧文機械印)」が出ていないほか、「郵便切手・はがき発売機(印字式)」が出ていません。特に後者は数が減りながらも毎年出ていた内容でしたので、今回出ていないのはかなり驚きました。

 ハイブリッドめーるでの電子内容証明サービスは来年(2001年)稼働予定とのことです。現在のシステムは日本ユニシスが受注していますが、さて電子内容証明はどうなるのでしょうね。


・建設公示、突然の取り消し

 7/6付で公示された神奈川県・国府津局(小田原市)の新築工事の公示が、突然9/28付で取り消しされました。何の理由かは不明ですが、珍しい事態と言えるでしょう。(結果的に、12/14付で再公示されました。工期が後に半年伸びているのが、一旦取り消しされた理由と思われます。)

 ちなみに理由ですが、「遺跡が出てきた」からだそうです。


・関東郵政局移転、埼玉郵便局関係

 来年春に予定されている関東郵政局(現:東京都千代田区大手町)の移転関係の公示が出ました。「関東郵政局の移転作業委託」(9/27付)で、来年の2/15〜3/20の間にさいたま新都心への移転作業が行われます。

 来年4月に本格オープンとなるさいたま新都心の郵政庁舎には、関東郵政局(2月〜3月入居)、東京貯金事務センター(3〜4月入居)、埼玉郵便局(5月開局見込み)が入る予定です。

 埼玉郵便局関係では、新型区分機・新型区分機情報入力装置の公示が出ており(9/9付)、来年4/20納入期限となっています。


・不思議な「取り揃え押印機活字」大量配備

『取りそろえ押印機局名活字』が一気に1646個配給されます(99/6/10公告、00/3/10納入期限)。ここまでの大量配給は珍しく、注目です。

理由ですが・・・たぶん、表示方法がなにがしか変更になるのでしょう。考えられるのは年2桁表示となっている西暦年号の「2000年対応」ですね。2000年を[00]と表記するのは特に問題ないとされていますが、もしかすると、押印しなければならない事態となるのかも?


・宝くじ対応機械、配備

戦後、ほぼ第一勧業銀行が独占受注してきた宝くじの販売が今年(1999年)冬から郵便局でも行われることになっています(銀行がない市町村が前提となっています)。

それに合わせ、『当せん金付証票発送・販売管理システム機』が発注となります(99/6/25公告・99/9/7入札)。また、同時に『当せん金付証票発送・販売管理システムプログラム構築の委託』(99/6/25公告・99/8/27履行期限)が発注となります。

機械の発注自体は1台ですので、東京JCか東京中央局に設置され、集中管理されるのではないかと推定されます。


・郵便関係統合システム、開発へ

見慣れない名前のシステムが新たに開発されます。

『POSTONS(郵便トータルネットワークシステム)の基本設計、概要設計及び詳細設計の委託』(99年5月26付公示)がそれです。

名称にかなり笑ってしまいますが・・・「ぽすとんず」。漫才コンビじゃないんだから、という感じですが、恐らく「POStal TOtal Network System」の大文字部分を取ったものなのでしょう。

システム構築はおおむね基本設計→概要設計→詳細設計の順番に進んでいくものですが、これほど大きなものを受注できるかできないかは企業にとってはかなり違いがあります。ただ、実際に受注できるだけの力量を持っているのは日本に数社しかありません。たぶん、野村総合研究所か、NTTだとは思いますが・・・。

※11/20付毎日新聞夕刊によれば、この落札は松下通信工業(株)がいわゆる「低額落札」である17万円で行われました(7/30)。同社は「従来あったものを手直しする程度で済む」とコメントしていますが、実際にシステム開発に携わった経験から言いますと、うそつけ〜であります。

そういったケースはあるとしても、3人日ではできません(笑)。ただ、上にも書いてありますが、基本設計を受託すれば詳細設計(プログラム部分)での「おいしい」味を味わうことができます。そのための先行投資・・・であれば、実は誰も困らないのです。(郵政省が、詳細設計時の入札で「同社を不当に優先する」アクションが具体的になければ、および、同社が詳細設計(プログラム開発)時に基本設計分を水増ししない。の前提ですが)


・平成11年度入札予定公示分から

 年度の始まりになると、80SDR以上の入札公示予定が、郵政省HPに掲載されます。今年もようやく公示されましたので、気になる分を抜き出しておきます。

品目

個数

公示予定

管轄機関

郵便切手・はがき発売機(印字式)

100

4月

郵政省

新型区分機

74

4、9月

郵政省

新型区分機用情報入力装置

69

4、9月

郵政省

バーコード区分機(A型)

12

4、9月

郵政省

バーコード区分機(B型)

4

4月

郵政省

バーコード区分機(C型)

19

9月

郵政省

大型郵便物用区分機

1

7月

郵政省

郵便物自動選別取りそろえ押印機

2

4月

郵政省

選別台付自動取りそろえ押印機

11

4月

郵政省

紙幣硬貨入出金機U型

456

4月

郵政省

区分機用バーコードインク

7600

4月

近畿郵政局

「印字式切手自動販売機」わずか100台の記述が目立ちます。本当にこれだけなら導入以降、一番少ない導入数になります。

が、ATMやATMPといった機械が今回の公示に含まれていませんので、「予定に含まれていなかった分が追加になった」という理由で、後から増えるのだと思われます。


・郵便貯金自動預払機平成11年1月向け改造ソフトウェア

沖電気工業(株)

オムロン(株)

(株)東芝

(株)日立製作所

富士通(株)

【参考】合計

ATM

2,042

2,659

1,325

1,266

1,626

8,918

ATMC

435

288

-

259

100

1,082

ATM(II)

2,341

-

-

1,468

20

3,829

CD(II)

501

127

1,800

159

3,495

6,082

CD(薄)

989

-

-

-

-

989

APM

-

-

-

156

-

156

APM(II)

-

-

-

345

-

345

【参考】計

6,308

3,074

3,125

3,653

5,241

21,401

 この表は、入札公示を整理し直したものです。ATMやCDのソフトウェアを変更する際には、こういった公示が出ますが、今回は99年1月17日から開始される「民間金融機関との相互接続」が関係するわけですから、要するに、『郵便貯金で動いている機械のメーカー別台数』と考えていいわけです。

 これを見ると、トップメーカーが沖電気だということがわかり、機種によってメーカーが限定されることもわかります。(APMを日立しか作っていないのは意外ですね)また、APMは全国501台ということもこれでわかります。(するとATMは13,829台、CDは7,071台ということになります)


・大口ユーザへ追跡情報提供のためのソフトウェアの機能追加等の委託

 書留や小包の配達情報をオンラインで伝送するものと思われます。民間なら当たり前のシステムですが、郵便分野での民間と郵政とのオンライン接続については、小包運送受託業者(西濃運輸、第一貨物など)を軸にするものと、大口ユーザ(ベネッセコーポレーションなど)を軸にするものの2つ(専用線経由)とインターネット経由の情報照会(個人向け)が並行して進むことになるでしょう。


・ルームクーラー

 というものも入札に出ます。(まぁ、ボールペンでさえ数が多くなると入札にかけられるのですから)ちなみに、「ルームクーラー」で興味深いのは機械設置予定郵便局名で、今回は、「平城山駅前郵便局(奈良市)」が配備局にリストアップされています。この局名は存在しないため、来年3月までには設置もしくは移転改称で誕生することがわかるわけです。


・郵便局におけるワンストップ行政サービスの広域化実験の委託

 郵政省の現状最大の政策の実験が開始されます。今回入札にかかっているのは長野、愛知、高知、鹿児島、沖縄の4県で、住民票の取得といった事項について実験が行われることとみられます。

 実際に開始されるのは来年の3月以降と思われますが、今後どうなるか、注目されます。

 ちなみに落札結果は以下の通り。高いか安いかですが、こんなものだと思います。

県名

落札者

落札金額

長野

日本電信電話(株)

28,607,080

愛知

日本電信電話(株)

10,120,266

高知

松下通信工業(株)

4,189,500

鹿児島

松下通信工業(株)

3,472,875

沖縄

(株)野村総合研究所

5,040,000


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