播道つれづれ

姫路駅近くにある自転車店「健康じてんしゃ店」の業務日誌です。
開業準備からオープン、今日に至るまでのウレシイ、カナシイ話を綴っています。

健康じてんしゃ店
  • 店主 : 井藤 周一
  • 〒670–0965
  • 兵庫県姫路市東延末1丁目44–1
  • 079-287-8507
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  • 連絡先  kenko-bike@kvj.biglobe.ne.jp
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2018–02–19
今日の写真

ある日のことです。
自転車を押したおばさんが来店されました。
「ペダルが回らへん。誰かにやられた!」
と、かなり立腹された様子です。

ペダルを手に持って確認したところ、ガッチリ固定されて全く回りません。
それは、チェーンのトラブルであることが予想できました。
そこで、チェーンを全て覆っているカバーの開口部から中を覗いてみると、絡んだチェーンが見えます。
ガッチリと絡んで詰まったチェーンを苦労して取り出してみると、写真の箇所が破断していました。

切れたチェーンをおばさんに見てもらったところ、
「それ、いたずらや。やられたわ」とキツイ表情をされます。
さらに、経年劣化が原因で傷んだ他の箇所についても、「やられた」という言葉を繰り返されます。

チェーンの破断面を見れば、工具で切断した形跡はなく、何らかの強い張力による破断だと判断できました。
何度も「やられた」と口にするおばさんの様子から、「きっとこれまで、つらい経験をされて、人が信用できなくなったのかなぁ」と悲しい気持ちになり、人為的な原因によるトラブルではないと説明することができませんでした。

さて、切れたチェーンを取り出した後は、新しいチェーンに交換しないといけません。
そこで、おばさんに了解を得るために修理料金を話したところ、
「お金ないわ。まけて」との返事。
「えっ」と息が止まりましたが、
「とにかく直さないと自転車に乗れないでしょう。お金はいつでもいいから、修理しますね。」と言って、すぐに作業を開始しました。

私は、おばさんに「どうか人の優しさを思い出してほしい」と心の中で願いながら、新しいチェーンを自転車に取り付けました。
作業が終って、再び乗れるようになった自転車をおばさんに渡しましたが、あえて連絡先は尋ねませんでした。
残念ながら、その日、おばさんの口から「ありがとう」という言葉を頂くことは出来ず、その日から一週間経っても、おばさんは来店されませんでした。

私の自転車屋としての仕事は、人の役に立つためにやっており、それは感謝の言葉を頂いた時に 果たします。
おばさんが来店されない日々が続くと、
「人の役に立つのは難しい。お客さんに気に入られるために、媚びへつらっているのと変わらない偽善行為ではないか」と、自問することもありました。

チェーン交換から10日あまり経った日、おばさんが来店されました。
「あの時はどうもありがとうございました。助かりました。」
修理代金を支払われるおばさんは、あの日と違って、とても和やかな表情でした。
おばさんから感謝の言葉を頂いて、「あぁ、良かった。おばさんの役に立つことが出来た」と、私はとても嬉しい気持ちになりました。

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