天文をやったことのある方には、わりとおなじみのもので、
「黄道光(こうどうこう
おうどうこう
ともいいます)
」 という現象があります。
夕暮れ日没後すぐ(または夜明けの直前)に、太陽の沈んだ場所から、
天の黄道沿いに光の帯が立ち上がる現象です。
<黄道>というのは、星座占いの「黄道十二宮」
なんかで名前はおなじみだと思いますが、
「太陽が空を移動していくルート」の事で、
その黄道のところにぼーっと光が見えるのが 黄道光 なんですね。
(空には、太陽が通過する<黄道>の他に、
月が通る<白道>というのもあって、
こちらは太陽の通る黄道と少しばかり角度がずれてるんですが、
この2つの道の交差点で太陽と月が重なった時に、
「日食」や「月食」になります。)
さてこの「黄道光」ですが、
”大気中の塵が太陽の光を帯びて光る”という、かなり「淡い」光なので、
ものすごく「見られる」条件が厳しく、
よほどの事がないと「目で見るチャンスの少ない」というか、
その意味で「レアな」天文現象なのであります。
しかし、オーロラのように「極地でないと見られない」とか、
カノープス(最後に説明あり)
のように「沖縄あたりでないと見えない」とか
そういう絶対条件があるんじゃなくて、ウチの窓からでも
(運が良ければ・・・というか、チャンスに恵まれれば)見えるはずなので、
学生時代、出現条件がいいと思われる秋の夕方に、
毎日日没を観察してた事がありました。
(わりと熱心な天文ウオッチャーであります)
おかげで、夕日の中に肉眼で黒点観測ができることを発見しましたが・・・
閑話休題、
さてその「条件がいい時期」に、よく夕暮れをチェックしていたんですが、
ついに何年目かの夕方であります。
夕方の暮れかけた空に、なんとなく見えるんですね・・・光が!
「おおおっ? これはもしや・・・?!」 じっと目を凝らしてみましたが、
なにしろ光が薄い! 確かに黄道に沿って長く光っているような気もするが、
気のせいのような気もする(おいおいおい!)
空の「光」ですから、もっと暗くなればはっきりするんですが、
かといって、「夕焼け」のような、日没に伴った現象なので、
太陽が沈みきって遠くなると、
黄道光もどんどん弱くなって消えてしまうんであります。
かなりしつこく見ていて、ついに「よしっ! やっぱりここだけが舌型に光ってる、
これが黄道光だっ!」 と思った私は、
とにかく誰か別の人にも確認してもらおうと、SF/天体マニアの友人に
電話をかけました。
「もしもしっ、黄道光が見えてるんだー! ちょっと窓から首を出して確認して!」
「・・・それどころじゃない・・・(ものすごく沈んだ声)」
「どっ、どーしたんだっ!?」
「石森先生の本の発売がまた延びた・・・これで2回目だ・・・」
−−−言い忘れましたがこの友人、大の「石森章太郎ファン」だったのであります。
この人がずっと発売を待っていた豪華本の発売が延期になって、
思い切りガックリきているところに電話をしてしまったらしい。
この状態で話をしてもムダなので、私は 「延期はザンネンだったね・・・」
と言いながらすごすごと電話を切って、
夕暮れの空が暗くなってだんだん光が薄れていくのを、
自分ちの窓からずっと眺めていました。
黄道光を見たのは、後にも先にもこの1回きりです。
ごく地味な、うすぼんやりとしたものですが、
なにしろ難易度の高いものなので、今でもハッキリと覚えているのであります。
ちょっと自慢なのですが、感心してくれる人はあまりありません。
(なにしろ、あまり知られていない上に地味すぎて・・・)
よく昔の鳳凰の絵に、うにうにした小さい雲が描いてありますが、
あれが「彩雲(五色の雲)」です。
これがウソや冗談じゃなくて、ほんとうにあるんですね。
物の本によると「空にこれが出ると、吉兆として喜ばれた」と言うんですが、
ほー・・・と思ってたら、
ワタシはなぜが、こいつをぼかすか目撃してしまうんです。
最初は、仕事の最終日に小松空港まで原稿を出しに行くタクシーの中でして、
ワタシはまんが描きなので、東京の出版社に原稿を届けるんですね。
で、仕事の仕上がりが遅れると、航空便で発送するわけですが・・・
さてその日、仕上げが間に合わないので、
タクシーの中でまだ原稿にスクリーントーンを貼っていました。
・・・やった事がある人は知っていると思いますが、
徹夜明けで車の中でトーン貼りの作業をすると、まず確実に車に酔います・・・
高速を飛ばしているところなので、止まるような信号はないんですが、
それでも前屈みにうつむいて原稿を見ながら作業をやると、
揺れの中で細かい手作業をするせいか、かなり手ひどく酔うのであります。
で、すっかりキモチ悪くなったので、顔を上げてぼーーーっと
遠くの白山連邦を眺めていると、出てるんですね。その上に「彩雲」が!
白くてごく小さい絹雲で、その雲だけが虹色に光っているのであります。
ワタシは、「この状態で何がメデタイんだ」と、なんとなく「ムッ」
としました。(こらこら・・・)
ちなみに、隣に座ってたアシスタントさんにも 「あそこに彩雲が出てるよ」
と教えたのですが、こちらもトーンを貼ってくれていて、
ワタシよりもっと手ひどく酔ってたので、
もちろんそれどころではありませんでした。
(ごめんね仕上がりが押しちゃって・・・)
2回目はやはり仕事明けで(こんなんばっかり・・・)
体力が尽きていたところをムリに買い出しに繁華街に出かけて、
その帰り道、すっかり体力がヘタってバスの席に座っていたところ、
空の端に彩雲が・・・
バスの中の人に教えてもなにかと思われそうなので、
「あー、また出てるんだ・・・ けっこー頻繁に出るもんだな・・・」
と思いながら、単にぼーっとバスの窓から見ていたんですが・・・
さて3回目、この日も仕事が終わったすぐで、
ちょっと体力がヘタっていまして(ひーーーん、こんなんばっかりだー)
スーパーへ買い出しに行くのに、友人が車に乗っけてってくれたのですが、
ちょうどその車の窓から前方を見ると、空の上にかなり大きめに彩雲が
・・・
ここまで続くと、さすがにちょっとキレそうになって(こらこらこら)、
「ふざけとんのかオノレは・・・」とか、
雲に向かってゴタクを吐きそうになったのですが(こらこらこらこら)、
まぁそこは思いとどまって、運転をしている友人に彩雲を見せて、
ちょっと喜んで貰いました。
先日「雅子さまご懐妊報道」の日のニュースのオマケでも、
「今日どことかで、めでたいとされる彩雲が見られました」
とやってたので、「やっぱりいろんなとこで、
けっこう出るもんなんだな・・・」 と確認しました。
彩雲は、いわば雲の表面の水滴に映る虹のようなものなので、
「二重の虹」なんかと同じくらいの頻度で、わりと見られるのかもしれないですね。
お月様がカサを被ると翌日は雨・・・ というお天気のことわざがあります。
湿度の多い夜によく見られる現象ですが、お月様のまわりに環っかができていて、
なかなか情緒があるフンイキです。
・・・で、こいつが月だけじゃなく、太陽にもあるんだというのを、
長いこと生きてきてようやく体験しました。
実は徹夜明けで(また仕事が終わったとこだったんです)、
ミョーにフラフラしながら正午頃にスーパーから帰ってくるところで、
なんとなく空がキラキラしているような気がしたので、
何の気なく真上を見上げたところ、太陽のまわりをかなり大きく、
虹のように光が取り囲んでいるではありませんか。
初めて見るものだったので、「何だろ・・・?
ヘンな形で雲かかってるな・・・???」 と、
しばらくぼーっと見ながら考え込んでいたのですが、
「はっ! 太陽が暈かぶってるんだっ!!」 と気がついて、
まじまじ見てしまいました。
黒い夜の、月の暈も情緒があってキレイですが、
明るい真っ昼間で、晴れた空の明るい太陽にかかる暈というのも、
ミョーにキラキラしてて、なかなかいいフンイキでした。
これが「日暈」と呼ばれる現象で、わりと珍しいらしく、
別の時に、”今日どことかで太陽が暈を被っているのが見られました”
と、わざわざニュースでやっていたのでびっくりしました。
ちょっとラッキーだったのかも・・・! 徹夜もするもんです。
(それとは関係ないだろう!)
なお、 「なんでよく、徹夜明けや仕事明けに、こういうものを見るのかな
・・・?」 と、自分なりに考察してみたのですが、どうも、
疲れてぼーっとして車に乗っていると、いつもよりうんと
「ただ空を眺めてしまう」 確率が増えてしまうようです
(他の周辺のものに注意を払う元気がない、と言うことですね)。
あと、光の具合にも多少敏感になるようなので、
「日暈」なども発見しやすかったのかもしれません。
みなさんも、疲れているときに空を見ると、何か発見できるかも・・・
(道を歩いているときや、運転中はやめた方がいいと思いますけど・・・)
これは見ていません。 最初に、
カノープスと一緒に場所限定で見られる物の例として出したので、
ついでにちょっと書いておきます。(これも空でひかるものだし・・・)
我が家に一番近いところでは、
石川県内の能登半島で、オーロラが見られることがあるそうです。
北海道でオーロラが見られるというのはよく知られていて、
こういう、日本で見られるタイプのオーロラは、「低緯度オーロラ」といって、
私たちがイメージする様々な色の光が動き回るような極地のものではなく、
<北の空が火事のように赤くなる>タイプのものです。
昔(19世紀末くらいですか)、ものすごくオーロラの活動が盛んな時期に、
イギリスでやはり、大火事かと思うような派手なオーロラが見られたそうで、
イギリスもかなり低緯度ですから、オーロラの見える場所としては
けっこう南限に近いんではないかと思います。
さて、イメージ的にはオーロラというと、
やはりあの、幕みたいに下がってきて、形を変えながら揺れ続けるヤツ
(カーテン状オーロラというらしい)とか、
空から地上に向けて噴射してくるようなタイプのヤツ(コロナ状オーロラ・・・かな?)
とか、あれが全天に広がるところを一度見てみたいものだと思いますが、
壮観というか、むしろなにか壮大すぎてコワイかもしれない・・・と、
勝手に想像しています。
先日テレビで、北海道のオーロラの写真を撮ってる人の番組を見たんですが、
その時出てた解説の学者さんが
「初めてオーロラを見たのはアラスカに行ったときで、
泊まっていたところの人が
(この先生がそういう研究をしてると知ってたので)
”センセイ! オーロラが出てますよ” と知らせに来てくれて、
外に出てみると、確かに出ているんです。
最初は ”おおあそこに磁気がこう流れてるんだな・・・”
と空に線を想定して観察しながら見てたんですが、
その内もうそんな事考えてられないんですよ、あんまりすごくって・・・!
ただ黙ってぼーーーーっと見続けてました。」
という話をしていて、この、オーロラが空にめちゃくちゃに出現する状態を
「ブレイクアップ」と呼ぶのだそうですが、
空が破けてしまったように激しく出るのだそうです。
「一度見てみたいものだ・・・」 と思いますが、出現する理由
(頭上がオゾンホールになっている)を考えると、
そーゆーイミでちょっとコワイかも・・・???
(宇宙線が山ほどこちらに向けて飛び込んできてる訳だし・・・
もっともこの場合、室内でも室外でも、
浴びる量はほとんど変わらない気がするので、
どうせ同じだけ宇宙線浴びるんなら、外に見に出ちゃう方を選ぶと思いますが)
以前に本で読んだ説明では、
無音で光るオーロラの他に、雷のような轟音がする場合もあると書いてあって、
「やっぱり、プラスイオンとかマイナスイオンとかが、
上空でどうとかするんだろうな」 などと勝手にナットクしていたんですが、
他でまだ「音」の話を聞いたことがないので、
「ホントに音がするのかな?」 と、ちょっと疑心暗鬼気味です。
オーロラが見える地域では、当然ながらいろいろな伝説があって、
「冥界」のイメージにつながってたりもするようで、
空にあの光がすさまじく動き回ってる上に、雷のように地響きする轟音まで聞こえたら、
マジでビビるくらいコワイとは思うんですけど・・・!
一度、ドードー降ってくるこの宇宙線を、ナマで見てみたいものであります。
< カノープス について>
竜骨座のカノープスは老人星とも呼ばれている大変明るい星で、
全天で2番目に明るい星(恒星)です。
そんなに明るい星なのですが、
南半球で見える星座の星なので、日本では位置的に、あまり見ることができません。
沖縄あたりが、北半球で見られる北限に近い状態です。本州あたりでも
非常に条件が良ければ(地平線まで視界が開けてるとか、山の上から見るとかで、
しかもカノープスの高度が高いとき)、
かろうじて地平線ギリギリに見えることがあるらしいです。
この星を見ると長生きができる・・・という伝説があるらしいので、
根性と機会のある方は、星座表を片手にチャレンジしてみてください。
(ちなみに、1番明るいのは大犬座のシリウス・・・冬になると、
東南方向の夜空にギラギラ光っているマイナス等級の超明るい白い星
・・・です。 日本国内ではどこでも見られます。
3番目は琴座のヴェガ=七夕の織女星 です。 これも日本で見られます。)
なお、シリウス/カノープスとも、夜空の中ではダントツに明るいので、
空に出てさえいれば、見つけるのは非常にカンタンだと思いますが( というか、
イヤでも見えるくらい明るいのですが)
光の強い惑星をシリウスとまちがえる事がたまにあります。
シリウスがある大犬座は、わりと知られているオリオンの隣です。
シリウスだと思う一番明るい星を見つけたのに、
近くを探しても「オリオン座の三つ星」がないっ! という場合は、
その明るい星はシリウスじゃなくてもっと別の星
・・・たいていは巨大な惑星・・・です。
なぜか恒星はキラキラと輝いてて、
惑星(太陽系内にある太陽の反射光で光っている星)はまたたかずに
大きな光でぺたーっというか、のっぺりと光っているので、
慣れるとわりと区別できます。
ものすごく明るい星で、またたかずにぺたーっと光っている場合は、
惑星のどれか(たいていは木星か土星) という事です。
(はっきり確認したいときは、
天文年鑑や天文雑誌にその月の星座と惑星の位置関係、
黄道白道の位置などが載っていますし、
ネットでもすぐに見つかるのではないでしょうか。
ちなみに惑星は、
太陽を中心に同心円を描く太陽系の星ですので、
すべて太陽と同じく、黄道上をうろちょろしています。)
シリウスがめちゃくちゃ明るいのは、別に 「超巨大な特別明るい星」
だからじゃなくて、「うちから一番近いご近所の星」 だからです。
やはり ”遠くの親戚より近くの他人” です。(例が違うって・・・)
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<黄道光の見える条件>
空気が澄んでいたり、光害(町の灯りなどで空が明るいこと)がなくて、
空がクリアであること。
黄道が地平線からなるべく垂直に立ち上がっていること。
(黄道が、地平線から90度に近い角度になっているほど見えやすい)
黄道が地平線に沿って寝ているときは、
黄道全体が日没の明るさに包まれてしまうので、
黄道光を確認するどころではありません。
光の形は舌型で、夕方の空の中に天の川くらいの明るさに見えますが、
日没直後なので空が明るく、かなり明るい黄道光でないと肉眼で確認しにくいです。
なお、太陽光の反射で大気中の塵が光るのですから、
当然ながら夜明け前にも見えます。 早起きの方、まだ寝ていない方などは、
その時間のほうが町の灯りも少ないし、
見られるチャンスが増えるかもしれません。
ネットで<黄道光>を検索したら、写真がたくさん公開されていました。
こんなシブイもの、撮ってる方がちゃんといるんですね。
リンクフリーという事なので、美しい写真のあるサイトをご紹介しておきます。
直接リンクさせていただいた頁のこの写真が、私が肉眼で見た黄道光の感じに
一番近いものです。 (実際にはもっとうんと淡い光でしたが・・・)
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彩雲の写真
<秋吉台の自然>
へのリンクボタン
彩雲の色がよくわかる写真
ちょっと空が暗いのですが
晴れた青空でもこれと同じ
ように光る虹色で出ます。
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