・・・原罪・・・



・//ヘラクレスの栄光3//・

<発見について>

「ヘラクレスの栄光3」 はスーパーファミコン用のソフトですが、 爆発的に売れたヒットゲームではありません。
1や2も、ゲーム誌で騒がれたこともあまりなかったし、 友人間で特に話題になることもなく、 私も「ヘラクレスの栄光(1)」が出たときプレイしてみて、 「特に目立つほどの出来じゃないな」 と思った記憶がうっすらあります。

要するに最初の(1)はごく普通の、なんの変哲もない平凡なゲームだったわけです。
で、2や3が出るのは、 普通は1が人気があったから柳の下のドジョウ式に続きが発売されていく訳で、 1や2が並かそれ以下の印象で、3になっていきなりよくなったとか、 そういう事は普通はない訳です。
・・・普通なら・・・です。


さて、その当時、我が家の近所にファミコン屋さんがあって、 中古ソフトも扱っていたのですが、 時々「ヘラクレスの栄光3」の中古が出ていました。 わりと高いんです。
発売されたばかりの新しいソフトは中古価格も高いのがふつうですから、 発売当初は気にしてなかったんですが、3ヶ月たっても、半年たっても、 一年たっても、ふつうなら時間に応じて順調に下がっていくはずの価格が、 (そしてクソゲーなら数ヶ月で一気に落下するはずの価格が) 「ヘラクレスの栄光3」だけは、ほとんど中古販売価格が変わらないのであります。

「・・・ん???」 と思って、さすがにちょっとヘンだなと思い始めたのですが、 ゲーム雑誌の「私の一番好きなゲーム」という投稿特集のコメントの中で、 何人もから「3」の名前が挙がっているのを見て、 「うわーーーっ?!  これ、もしかしたらふつうのゲームじゃないーっ!!」

次に中古ゲームの棚に 「ヘラクレスの栄光3」 が並んだ時、即座に買いました。  割引券使って、それでも720円でした。(値段まで書かなくていいって!)
プレイし終わって、ゲーム友達全員に連絡とって、  「なんでもいいから3だけ買えっっ! すぐ買えっっ!」 と叫びました。
ファミコン系のゲーム作品の中で、ある意味でドラクエを抜いたのは、 私はこのゲームだけじゃないかと思う事があるくらいですが、 1度プレイした人はまず忘れられない、ものすごい内容のゲームだったです。

<内容>

このゲーム、シナリオがとにかくすばらしいんですが、 スタートしたとたん 「私」 は知らないところにいて、 誰だかわからない人といます。  「自分の名前が思い出せないの?」 などとまわりに聞かれています。  どうもワタシは記憶喪失らしいのです。

そのへんの動物に話しかけたら「メェェェ」と鳴かれたりして、 「それはヤギよ」とさっきのおねーちゃんに教えられたりして、 なんかナサケナイ状況です。
そして、ウロウロしてそのへんの敵と戦っている内にわかるのですが、 どうも私は不死身らしいのです・・・ まわりの人は死ぬみたいです。  どうも、ワタシ一人だけが不死身らしいのです。

さて、ワタシが助けられて、世話をされてたところはニンフの島でした。
自分が誰で、なんでこんなところにいるのかもよくわからないので、 とりあえず旅に出て、世間の様子を見てみることにしました。
ニンフのおねーちゃん達が、ワタシのことを心配して、 途中までついてきてくれるんですけど、ところが、この人たち、 平和な島の、か弱いニンフなものですからとにかく弱いっっ!

ワタシが一人で戦って先に進むのは、 弱すぎるし仲間もいないのでムリなんですが、 だからといって、このおねーちゃんたちが強いわけではない。
せっかく親切についてきてくれるので、 死なせては申し訳ないと思って何度もやり直すんですが、 危険な下水道を抜けて町に出るまで、ものすごく苦労しました。

このゲーム、仲間ができるまでこのような「団体さん」の味方がつくことがあって、 軍隊で隊長をしているときに、洞窟の化け物と戦う羽目になるんですが、 相手がものすごく強くて、どーしても部下がやられてしまう。  ここでもかなりしつこく粘ったんですが、ついに一人部下を失ったまま、 あきらめて先に進みましたが、 部下を死なせてしまったこのへんの気分的なひっかかりも、 後半の演出で鮮烈に精彩を放って生きてきて、 なかなか後をひくのであります。

仲間ができてからはミョーなデコボココンビになりますが、 ひとりぼっちの不死身の人間が、その日の生計を得るために考えついた手段が、 皆の見る中で高い塔の上から飛び降りて、 死んでないのを見せてお金を物乞いする・・・という「自分を見せ物にする事」だったりするのが、 驚くようなアイデアでありながら震えるようなもの哀しさがあって、 このへんのテイストがヘラクレス3の真骨頂です。

「ヘラクレスの栄光3」 は、極端にドラマ性の強いゲームで、 特に中盤より後の内容はゲームの生命線に関わってくるので、
(まだスーパーファミコンの本体を持ち、 古いゲームを入手できる方がいるかもしれないので)詳しい内容は書きませんが、 私が「極端にドラマ性が強い」と感じていたドラクエを、 作る側の熱意で軽く越えてしまった感があります。

特にテーマ性の強さと登場人物全員の扱いはすさまじい粘り腰があって、 「この1本に全力集中した!」という感じ。 シナリオの練り込みが強く、 とりわけイントロ設定のうまさと、 中盤以降に進むドラマ展開の、不安感が黒雲のように湧き上がってくる強烈さは、 筆舌に尽くしがたいものがあります。


<結末>

この物語、プレイしていくとわかるんですけど、 中盤から後になってくると、どんどん怖くなっていきます。
「怖い」というより「不安」・・・というか、 「予兆」という言葉のほうが正しいかもしれません。

物語のテーマは「原罪」のようなものですが、 キリスト教的な「神に対する原罪」ではなく、人類の欲とか、 人類という種そのものの存在の罪をテーマにしてて、 ここまで抽象的なモチーフを、 実感のある渾身のRPGに仕上げた力は称賛に値します。

「カタストロフ」があり「結末」があって、 「これ以上どーすればいいんですか・・・?」 とうなりながら、 それでもしょうがないので、 これまで「旅の記録」をとり続けてくれたヘルメスにセーブを頼もうと話しかけると、 「そんな姿になって、今さら保存してどうしようというのだ」  と言われるあたりの追いつめ方はものすごい!

なお、この作品のエンディング・・・というか結末のつけかたについては、 作品のテーマを考えると”甘い”という見方があると思うんですが、 プレイできるゲームの結末として、 この処理はギリギリの選択だったんじゃないかと思います。  
(それに、人類の「種」としての未来に、 このくらいの希望を残しても許されるんじゃないでしょうか・・・?)


<欠点>

「ヘラクレスの栄光3」には、 残念ながらゲームとしての欠点が一つだけあって、足をひっぱってます。

レベルアップ時にステイタスがランダムアップするのですが、 「すばやさ」の数値が普通程度だと、中盤戦が始まったあたりで、 少しカタイ敵が出てきた時、相手に先手をとられてものすごい数の攻撃を受けてからこちらのターンになり、しかもこちらのターンの最中も向こうから先手で攻撃が入るので、 なんて事ない1回のカンタンな戦闘に、延々と時間がかかってしまうのです。

マップ上をほんのちょっと移動するだけなのに、 そのあたりをウロウロしてるチョイ役のワンダリングモンスターと遭遇しただけで、 1回の戦闘に3分も5分もかかってしまうんで、 よっぽど根気のある人でないとこのただただ長い戦闘にはつきあってられません。 (特に貝がカタイ)

ワタシは途中で 「こののろさでは先に進めない!」 とあわててリセットして、 一番最初のオープニングからそこまで高速でプレイしなおして、 「すばやさ」の数値だけ徹底して上げ直しました。
(要するに、あと1回か2回の戦闘でレベルアップ・・・になったら保存して、 レベルアップ時に「すばやさ」が上がってなかったらリセットしてやり直すわけです。  「すばやさ」が上がったらそこで保存して先へ進むわけですね、 一度プレイしてきてるので、 やり直して元の位置まで戻るのはわりと早いです。)

「すばやさ」の数値さえ上げれば先攻がとれるので、 瞬時に戦闘が終了してサクサク進むんですが、 戦闘が長びくせいで進むのがメンドーになって、 プレイをやめちゃった人がけっこういるんじゃないかと思います。  ゲームバランス上の簡単な設定ミスですが、 後半部分が異色の展開だっただけに、 この調整ミスは惜しかったです。


<おまけ>

「ヘラクレスの栄光3」では、 この当時、描画の新機能として追加された「拡大/縮小アニメーション」を ドラマの中の演出部分に非常にうまいアイデアで生かしていたり、 「友達の日記を読む」というひねりのあるアイデアなど、 細かい演出の創意工夫や、ギャグと会話のすばらしいセンス
(特にトボケたやりとりや脇のキャラクター性は出色!)、 独特のキレの良さがあって、 スタッフの熱意とレベルの高さを想像するには十分なんですけど。
このデータイーストという会社、ほかにも 「メタルマックス2」  というすばらしい佳品を出しています。

「メタルマックス2」は、「ヘラクレスの栄光3」のように、 全力でぶつかってくるタイプの重い作品ではありませんが、 「珠玉の名品」とでも呼びたいような、デリケートですばらしい超娯楽SF作品で、 これも他社ではマネのできない、飛び抜けたオリジナリティを発揮しています。 (特に近未来の崩壊した世界と、 ゴミ溜め天国みたいな主人公の設定がすばらしい!  
(< カネのかかるオンナを愛人にしたり、 金食い虫のマックちゃん(ちなみにこいつむちゃくちゃ役立たずなんですけど、 何かマックに恨みでもあるのかすごいファンなのかどっちなんだ?!)を 買ったりお楽しみがあるのもナイス!)

このゲームは「戦車」をチューンナップしたり、 シミュレーションゲームに使われそうな、 マニアックで細かい武器設定などのお楽しみもあって、 一般のRPGファン以外にもかなり人気があったようです。

もちろんワタシはしょっちゅうポチを洗っていました・・・  (やっぱり犬はピカピカじゃないと!)


お詫び
いつもと同じく、再プレイ確認をしていません。
記憶で書いてるので、覚え違いとか「それは違うぞロッキー!」てな
ミスを見つけた時は、笑って許して頂けるとありがたいのであります。


2003.1.18.

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