金沢 Spy  the Desk 

金沢はまた雪になってしまいました。 けっこー寒いですっ!。

バレンタインデーの前後は、金沢の食のイベント <フードピア> の開催中で、 近江町市場で無料鍋大会があるやら、中央公園でテント村屋台が出るやらで、 ちょっと賑やかです。

金沢の冬でオイシイものは、まずブリとカニなんですけど、 もしかしてこの季節、「金沢へウマイもの食いに行こう!」 なんて方があるかもしれませんので、 近江町市場(おうみちょういちば−− 金沢市民の台所と呼ばれている大きな市場です)でのお買い物のポイントなどを一発・・・



<ブリさん系>
ブリはデカイです!
1匹が7−8千円から一万円以上するので、 家族でもてあましそうな人は、 半身などのブロックを買った方がいいです。  横腹の黄色いスジが鮮やかなものが脂ののったもの、 全体がよりまん丸で、弾力のありそうなのが、鮮度のいいヤツです。
(ちなみに、ブリは時間がたつにつれて、 脂の部分が酸化して生臭くなってきます。  すごく鮮度がいいと、ほとんど脂の臭みがないです)
刺身の他に照り焼きやブリ大根などがよく知られていますが、 もし鮮度がいいのなら、照り焼きよりも、きつめに塩をして塩焼きにし、 さっとしょうゆをかけて白いご飯で食べると、 ナミダもののうまさになります。 (鮮度が落ちてきた場合は、照り焼きにすると臭みが消えてこうばしい!)

私のお薦めは 「ふくらぎ」 です。
ブリは出世魚で、金沢では「こぞくら」>「ふくらぎ」>「ブリ」 などと呼ばれて行きますが、ブリよりひとまわり小さい「ふくらぎ」が、 実に「狙い目」なんです。
ブリは脂がのっているのが取り柄ですが、 別の言い方をすると「脂ばっかり」でちょっとしつこいですし、 脂が多いせいで、鮮度の落ち方がかなり激しいです。

「ふくらぎ」は、脂はのってるんですがブリほどしつこくなく、 もう少しアッサリしてて、非常に魚らしいうま味が強い魚です。
中型の魚なので鮮度が落ちにくく、丸ごと発送すればブリ並みのお刺身OKですし、 下ろして、切り身にしてみりんと醤油で煮付けると大変おいしい魚で、 金沢の人の大好物です。
で、一番イイのは 「ブリに較べてめちゃくちゃに安い!!」
かなり大きいものでも二千円程度で買えます。 (これで40センチくらいはあります!)

という訳で、安いわうまいわの「イチオシ商品」なんですが、 近江町の一部の魚屋で、あきらかに「ふくらぎ」と思えるサイズのものを、 「ブリ」と表示して高い値段で売ってる店がありました。

−−−という訳で、
ブリを買うなら、デカイもの(ふくらぎと混同しようのないもの/ただし高いです)を買うこと。
ふくらぎを買うなら、安いものを買うこと。(一匹三千円以上は、不自然なのでヤメた方がいいです)

なお冬場の金沢では、ブリの他に「タラ」と「アンコウ」のいいものが入ります。
鮮度のいい肝類に目がない人は、自分の眼で確認して、いいものを買ってください。
(「タラ」と「アンコウ」は、自己責任選択のジャンルです。  商品がよくても悪くてもかなり高価ですが、 運がいいと 「ホントにこのネダンでこんなもの売っていいのか?!」  というくらい、ピカイチの商品が入荷してる場合があります。  幸運を祈ります。)






<カニさん系>

金沢のカニは「香箱ガニ(こうばこがに)」と呼ばれる、 ずわいの雌ガニ(普通に売っているズワイガニに較べると、 サイズがものすごく小さいので、同じ種類には見えません)で、 脚を折りたたんで売ってると15センチくらいなので、 食べるときは、茹でてひとり1匹くらいの見当になります。

大きなサイズのズワイガニ(越前ガニ/富山でも捕れますが・・・)も ちゃんと売ってますが、金沢の人はどちらかというと「香箱」を買っていきます。
香箱のおいしいところはタマゴとカニミソ。
もちろん肉もおいしいんですが、 「外子(出子)」と呼ばれる褐色でプチプチの子と、 「内子」という鮮やかな朱色のムチムチクチクチした口当たりの子、 こってりまったりした蟹ミソ・・・ がないと、蟹を食べた気がしない。  −−−というのが金沢人です。

ふつうは生で買って来て、家の鍋で茹でます。 (何分くらい塩ゆでしろと、魚屋のオジサンが教えてくれます)  持つとズシっと重みのあるヤツが身が入ってますが、 カニの身が甘いかどうかまで見分けるのは、ちょっと難しいです。
カニは、信用の出来そうな店で買うか、 脚折れで安くなったのをかまわず買って”安くてたくさん食べる”のがナイス!  慣れてない人は、茹でたのを買うのもお手軽です。
(注> 生まれて初めて香箱を見る人は、 どこをどう食べるのかが「??」だと思うので、 市場内にある近江町食堂−−ここ最近ちょっと高いんですけど、 食べ方を教えてくれたりしてわりと親切ですので−−で注文して、 その場で食べながら覚える方がラクかも・・・)
他に、ズワイガニ、毛ガニ、花咲ガニなんかも売られています。 どれもわりといいものが入るので、好きな方はお楽しみください。

カニ以外に、金沢では、おいしい「甘エビ」を売っています。
冷凍(解凍)でないものを買った方が、もちろんおいしいです。 (特に表示してないと思いますが、安いものが解凍、 高いのがナマ・・・という感じみたいです)
おなかにブルーのタマゴを持った「子持ち甘エビ」も売られています。(この方が高い)
お刺身の時は、お腹のタマゴをこそげ取っていっしょに皿に盛ります(もちろんナマですよ)
ちょっとお醤油つけて食べると、このタマゴもオイシイです。
あと、これは冷凍品の解凍の大特売品でいいんですが、 甘辛く煮立てたおつゆの中に殻ごとざっと入れ、 ゴトゴトと煮てそのまま冷まします。
タッパに入れて冷蔵庫などに入れ、 次の日あたりが食べ頃。殻を手でむきながら食べてください。
これをタマゴのついた子付き甘エビで作ると、 タマゴもおいしく煮えてて楽しいです。 (ちなみにブルーのタマゴは、火が通ると普通の白っぽい色に変わります)




<近江町でお店を見つけるポイント>
まず・・・入り口付近の店は割高です。
中はちょっと複雑な通路になっているので、 ガイドマップなんかがあると便利かもしれません。
市場の中に四つ辻がありますが、鮮魚や刺身、 焼き魚などを置いてる店がかたまってる四つ辻が「魚屋さんのコーナー」、 野菜や果物などを売ってる店が集中してる四つ辻が「八百屋さんコーナー」です。
八百屋さんコーナーから出口にかけて、カニだけを置いている小さい店舗がありますが、 これはもともと八百屋さん系だったお店が、観光客用に「カニ売り場」に 替わったものです。(買ったことがないので商品はわからないのですが、 カニや魚類は魚屋さんで買う方が安心かもしれません)

魚屋さんによっては、種類やさばき方によって(二枚に下ろしてあったり、 すでに刺身だったりすると)「この状態では到着までの鮮度が保証できないので、 その商品は発送できません」 と、発送を断られる場合があります。  魚屋はガンコなので、通常は、断ったものは発送扱いしてくれません。
専門家の意見には従った方がいいと思いますが、自信があってどうでも家まで発送したい場合は、 その場で買って、見つからないように別の場所でトロ箱などに詰め込み(!)、 自分でクール宅急便発送してください。




<魚を見慣れている人、魚を買い慣れている人 の穴場>

魚屋辻付近の個人店(小さい店舗)を捜すと、とびきり鮮度のいい品や、 お買い得なものが見つかります。(魚を自分でさばける方は、 丸ごと発送してもらうと鮮度がいいまま届くのでオススメです。 私は、気の張る人へのおつかいものなどは、こういう店で発送しています。)
どの店も日によって仕入れにかなりムラがあるので、 大手の会社店舗(**水産 というような店、 魚屋辻のすぐ近くです)ものぞいてみてください。  ものすごくいいものが安く出る場合があります。  特に、高級魚以外の「庶民的な魚」は、 大手の方が、安くていいものがたくさん出ます。




<魚にあんまり慣れてない人 の穴場>

小さい個人店は、「うんといい品物で高い店」「かなりいい品物で安い店」 「悪い品物で高い店」 などバラバラで、 慣れてないとヘンなものを高い値段で買っちゃって、悲しいことになります。
一番の安全圏は「大口水産」や「ヤマカ水産」などの、 かなり大手の業者の売り場で買うことです。

いま名前を挙げたこの2カ所はわりと安全圏、 金沢の人も気楽に買い物をするタイプのお店でして、 私もよくここで買います。
極端に安いわけでも、とんでもなく高級な上物売り場でもありませんが、 ふつうのスーパーよりもうんと安いし、鮮度もいいし、 だいたいは平均点以上のものを入れていて、 時々、おトクな超目玉商品(なんなんだよこのネダンは?!)もあります。
観光客に高い値札でいまひとつな物を売る、 というような事も、私が見た限りではないようです。

大口水産のお向かいは、同じく大手の魚屋さんなんですが、 商品的に私はあんまりピンときません。
それから店の中ではなく、通路で客を呼び止めて、 手に持った物を立ち売りしてる人の商品は、 買わない方が安全だと思います。




<近江町でお食事>

現在の近江町市場のお食事は、「観光客向け」に営業するお店
(ガイドブックに紹介されていて行列のできるお店・・・ 行列をしてるのはガイドブックを見た観光客の方たちで、 地元の人ではありません。お値段と味も観光客向けになってます) が増えて、地元の人はあまり市場の中で食べなくなりました。

そんな中で、近江町の中にある まわるお寿司屋さん は、 今でも地元の人がおなかが空いたときに入る、気楽で安いお店です。  普通の回転寿司なんですけどわりとオイシイし、 ちょっとつまむにはラクなお店で、ガイドブックに載らないため味が落ちていません。  地元の人がもっぱら愛好してる休憩スポットです。  行列の店より味も値段もおトクなので、歩き疲れた方はどうぞ!

オマケ>>金沢の回転寿司>>
金沢近郊の回転寿司は全体に鮮度がいいので、  「豪華な雰囲気でないとイヤ!」 という人以外は、オススメの穴場です。  黒板に「本日のオススメ」みたいなものを手書きしてある店は、 その中から選んで注文するとおいしいものにぶつかる事があります。  
(客がものすごく混んでて店の人が忙しい時以外は、 直接注文して握ってもらうとおいしくておトクです。  回転寿司で個人注文しても別にイヤがられません。)  みそ汁の注文をして「魚のアラ」や「甘エビの頭」のみそ汁が出る店は、 店で直接魚をさばいてるので、みそ汁のほか、寿司のネタそのものもいい事が多いです。
なお、近江町ではないですが、現在の回転寿司の人気スポットは、 金沢駅からちょっと離れた郊外にある、 御経塚(おきょうづか)の「きときと寿司」。  有名な大きいお店で、 穴場タイプではありませんが地元で非常に人気のある回転寿司の1つ、 品物がよくて安くておいしく、なかなかいいお店です。
時間と曜日によっては混むことがあります。



<ローカルネーム>

魚類は土地によって呼び名が違う事が多いですね。

金沢でよく売られている魚で、他の地域と違う名前で表示されるのは 「フクラギ」「コゾクラ」「ガンド」
(どれもブリの小さい系の皆さんの名前。 ブリだけはそのまま「ブリ」です)

「メバル」という名前で本に載ってる魚の名前は、 金沢では「はちめ」といいます。
人気のあるのは、煮魚にするととてもオイシイ「あから(赤らばちめ)」という、 タイのように赤いタイプの魚。  他にも黒っぽいのとかグレーのとか色がいろいろあって、 「茶ばちめ」「ソイばちめ」「柳ばちめ」など、名前もいろいろです。
塩焼きにするととてもおいしい 「ノドグロ(のど黒ばちめ)」 は高級魚で、 かなり値段が張ります。  だいたい甘鯛とか、それよりちょっと高めの値段設定になっています。
なお「あから」は極端に鮮度の把握しにくい魚で、 普通の魚ならちょっと店頭では買いたくない、 ハラのあたりが切れてるように見えるものや、 体にあまりハリがなくちょっとペタンとなったものでも、 思ったほどには古くなくて、わりと鮮度があったりします。
ですから多少ヘタってるように見えても思いのほか安心なんですが、 やはり、ハラも崩れてなくて、体全体にハリがあるものは鮮度がよく、 丸ごと買って来て内臓を出したとき、浮き袋が膨らんだまま出てくるようなものは、 煮た時もとび抜けてうま味ジューシィでオイシイです。

<ゆでガニについて>
北海道では浜ゆでのカニが一番おいしくて、 みんなゆでてあるカニを買ってきて食べる・・・ というのを聞いたことがあります。  金沢の場合だと、今度は生で売ってるカニ(家でゆでる)がおいしいので、 メンドウでない人は、金沢で買った場合は生のを自宅でゆでてください。


<コケ類>
秋に金沢に来ると、近江町市場で「コケ」を売ってるのが見られます。
「コケ」は「キノコ」類のことで、近江町にはマツタケなどの他に、 地元の山採りで、いろんな色や形のキノコが出回ります。  特にダイエー側の入り口から入ったところにある「高級食材店」には、 名前も知らないような珍しい茸類が並んでて、なかなか見物です。

ただしこの店は割烹や料理屋さん向けの高級食材を主に扱うので、 値段もとても高いですし、名前も知らないような珍しいキノコの場合、 その扱いに慣れてないと、せっかく買ってももったいないだけなので、 自分の好物を見つけたという場合以外、ここでのキノコの購入はあまりオススメしません。
店の商売のジャマにならないよう、売り場をこっそりのぞき込んで季節を堪能してください。

<*> 「コケ」類はもろくて砕けやすく、傷みやすい物が多いので、 見る時は売り場の茸類に手を触れないよう注意してください。 枯れ葉やシダがついててもあなたが指で取り除いたりしない方がいいと思います。  もちろん、ただ見るだけなのに、キノコを指で持ち上げたりしちゃうのは論外です。




<魚の鮮度について>

魚は当然鮮度がいいとオイシイのですが、鮮度を見るのは慣れと興味です。
食い意地がはっていて、「安いネダンでおいしい魚が食べたいっ!」 という人は、 売り場に通う内に、あっとゆー間に鮮度が見抜けるようになります。

そこまで食いしん坊でもないけど極端にハズシたくない方や、 今から食いしん坊にチャレンジしようという方の、 だいたいのめやすは次のような感じです。
(地域によって売り方も少し違うので、 ここに書いたのは、金沢で魚を買う場合の一般的な方法です)

まず、ブリやタラのような巨大魚以外は、できればまださばいてなくて、 丸ごと1匹で内臓も頭もつけて売ってる物を買います。  鮮度の一番ハッキリ出る部分は内臓とエラ、そして目玉です。
(タラの鮮度のいい丸一匹売りだと、 エラをわざわざ外向きにひっくり返してお客に見せてるくらいです。)  これをすでに落として売ってるという事は、 あまりお客さんに鮮度を確かめられたくないのかもしれません。
丸ごとの物でも、店の人がいれば「お腹だして」とか「2枚に下ろして」 などと頼んでその場でやってもらえますから、丸ごとで買って、 その場で処理してもらえばいいわけです。 当然、処理したりさばいた物よりも、 丸ごと一匹売りの値段の方が高いです。(完品で鮮度も上等という事ですね)

もし家に出刃包丁を持っているのなら、できれば家で自分で処理をした方が、 ウロコや内臓もきれいにとれるし、鮮度もずっといいのでオススメします。
(魚・・・特に一匹売りしている小さい魚は、 包丁を入れた時点で鮮度が加速度がかかって鮮度が落ちていきます。  売り場で包丁入れるより、調理するときに包丁入れた方が、 鮮度保持にはうんと有利です。  包丁さえ入れてなければ、翌日に処理して食べても、 最近の冷蔵庫はけっこう鮮度がキープされていたりします。  もちろん最初に、”鮮度のいい魚を買ってきた” というのが大前提ですが)

魚の体がハリがあってピンとはっているようなのは、いかにもおいしそうな感じ。
切り身(特に刺身)は、切った角が鋭角的に立ってるような感じの物がオイシイです。
丸一匹でハラのあたりが崩れて内臓が出てるような魚は、赤らバチメ以外は論外です!
(アカラに限っては、少し腸が出てても平均的なレベルの場合があります)

なお、まったく余計な事なんですけど、お寿司屋さんや割烹などで、 鮮度を売りにした 「活け海老」「活けイカ」 などを出す店があって、 海老なんかは筋肉がぴくぴくしてたりして、 ネダンがとても高い場合があるんですが、このタイプを、 私はあんまりオススメしません。 (・・・というか、個人的にこの調理法にそれほど魅力を感じません)
エビもイカも死んだトタンはめちゃくちゃカタイだけで、 まだうまみも出てきてないみたいで、 「直前まで生きててまだ半死半生」という値打ち以外には、 そんなおいしい感じがしないんです。
活け作りモノに高い値段を出すくらいなら、さばいてからほんの少し熟成の時間を見て、 じゅうぶんおいしさの出てきたところをぴったりのタイミングで出してくれるお店の方が、 エビもイカも人間がオイシイと思う弾力で食べやすいし、 そういうお店は値段のつけ方も良心的でオイシイみたいです。





SpyTheDesk/2002.2.11.