MEMO vol.7
   
3■ 梨木香歩 「西の魔女が死んだ」 新潮文庫

 まいのおばあちゃんは、ほんとうの魔女だった。中学に進んでまもなく学校へ行かなくなったまいは、ひと月あまりをおばあちゃんと一緒に過ごして、魔女の修行に励む。
 ほんとうの魔女って、どういうものか。そういう価値観が、わたしが思ってるのとほとんどぴったり一緒だった。
 とても繊細で素敵な物語。

「人は死んだらどうなるの」
「分かりません。実を言うと、死んだことがないので」
 おばあちゃんは、まいの疑問にいつも誠実に答える。そして導かれる世界観や価値観は、ゆるぎなくしっかりとおばあちゃんの生活に根ざしている。現代的な生活や価値観の中では、正しいのかわからない、あてはめられるのかわからない、そういった心の視野を確かなものとして感じさせてくれる。

「おばあちゃんが死んだら、まいに知らせてあげますよ」
 これはファンタジーかもしれないけれど、現実を支える力になるファンタジーなのだ。こういう物語のあり方は、わたしが書きたいと思う小説のあり方と一緒なので、とても尊敬するとともに、言うに言われぬ畏怖やうとましさも感じたりするのでした。

2■ 恩田陸 「ネバーランド」 集英社

 この人の青春モノってほんっとうまいなあ。今まで読んだのはファンタジーやホラーの要素を含んでいたものだったけど、この作品はミステリ味で、また趣が違う。いずれにしても学校という空間を描かせたら右に出るものはいない。

 冬休みに入った寮に居残った少年たちの七日間を描いていたもので、彼らにはそれぞれ家に帰らない理由があり、人に踏みこまれたくない領域を心に持っている。彼らは共同生活で徐々に打ち解け、お互いのことを知るようになる。彼らの暮らす寮は、まるで世界のはしっこで誰からも忘れ去られたような場所、子供だけの世界だ。

 なんていうのかなー、まだ大人とは認められない無力な時期。もう一人前にものを見る目は備わっているにもかかわらず、子供という領域にいて大人になにかを求められるばかりの時代。半人前扱いをされながら、それでも一人前に苦渋を味わうことだってある。その歯がゆさとか悔しさ憤りって、すごくよくわかる。けれどそれとひきかえに、素晴らしく無駄で楽しい子供の時間がある。その明暗を抱えた危うい時間と空間が、この物語の寮生活七日間につまっている。
(01/08/09)

1■ 原田宗典 「人の短編集」 角川文庫

 様々な職業の人間がテーマになっている短編集。働くってなんだろうね。就職活動中に読む本としては、良くも悪くも感慨深いです。

 全体的に哀しさや空しさが漂う物語が多かったでしょうか。無常観ってやつですね。しかし無常であることは絶望することではないのです。無常の中にこそ美しい瞬間があるというのが日本文学の真髄でありまして…。つまり、読み終わった後はいっそ清々しいというか、不快感がないですね。この人の文章は。
(01/07/24)

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