MEMO vol.1
   
10■澁澤龍彦 「フローラ逍遥」 平凡社

 花にまつわるエッセイ集。美しい挿画と様々な逸話。渋澤のエッセイは、とにかく彼と趣味があってしまえばツボだらけです。つまりわたしがそうです。この本は特に、色々な文学や映画、神話などからエピソードを盛り込んでいて、楽しい雑談というかんじ。花に思いをはせてみたい時に読みます。

9■ 村上春樹 「国境の南 太陽の西」 講談社

 春樹はいくつか読みましたが、現在そのなかで特にお気に入り。鬱なときに読むと妙におさまりがいい感じがする。
 この本を読んでから、綺麗に煙草をすう女性にあこがれる。でもわたしは、セイラムは苦手。
 ナット・キングコールの「国境の南」も聴きなおした。でもわたしは、パティ・ペイジが歌っているのが好き。CDで聴いたけれど、作中ではレコード。アナログっていうのがまた、情緒があっていいんだろうなあ。

8■ 長野まゆみ 「天体議会」 河出文庫

 絵を見たり、音楽を聴いたりするのと同じ感覚で読む本だと思う。長野まゆみの本は、これに限らずだいたいそうだ。そういう読書のありかたも、たまにはいい。とにかく描写が研ぎ澄まされて美しい。魅惑的な小物がたくさん出てくるのも、そそられる。物語の筋はこの際どうでもよく、雰囲気に浸ってトリップできれば万歳。

7■ 小川洋子 「妊娠カレンダー」 文春文庫

 芥川賞をとった作品。妊娠している姉を持つ主人公の日記形式の作品。農薬づけのグレープフルーツで作ったジャムを、何気なく姉に食べさせている主人公。そのもの憂げな悪意らしきものが、とても繊細で複雑で、気持ち悪くて最高です(笑)。姉のマタニティ・ブルーな様子の描写も、女性ならではの生理的嫌悪に訴える鋭さ。すごい。

 小川洋子の作品の中では、この「妊娠カレンダー」と同時収録されていた「ドミトリイ」あたりが一番線の太い作品だと思う。これ以降の作品は、どんどん研ぎ澄まされていってるが線が細く、その点わたしの趣味だと、この本を越える作品はなかなか登場しそうにない。

6■ 新井素子 「くますけと一緒に」 新潮文庫

 ぬいぐるみ心理ホラー。幼い頃とても大事にしていたぬいぐるみがある、という人。未だにぬいぐるみに思い入れの強い人。必読の書。おもしろいぞ。人形になにかする力があるなんて「少女の思い込み」。…では、すまされないものを感じます
 少女の一人称と三人称が絶妙。

5■ 山田詠美 「ぼくは勉強ができない」 新潮文庫

 わたしが読んだ山田詠美の作品の中で、一番好き。現代的青春もの、かな?
 成績は悪いが、魅力的。マイペースな高校生、秀美くんの一人称で書かれた小説。学校の居心地の悪さなんかが、すごくよくわかる。わたしにとって山田詠美の作品は、そういう部分が不快になってしまう場合もあるが、この作品はお気楽で小気味いい。

4■ 吉本ばなな 「キッチン」 福武文庫

 吉本ばなな、たくさん読んでもいないのだが、わたしはあんまり好きではないかなと思っていた。しかし、これは心地よく読めた。
 台所という場所が本当に素敵な場所に描かれている。また、さりげなくて、でも力強い恋愛もあり。はたして「恋愛」、と呼ぶのかどうかは意見が分かれるところだと思うが、とにかく魅力的な人間関係を描いている。
 最後の「カツ丼」を食べるシーンが印象的だった。ロマンチックというよりも人間味があるあたりがいいなあ。

3■ 安部公房 「砂の女」 新潮文庫

罰がなければ、逃げるたのしみもない

 冒頭にこんなことが書いてあって、これだけでもう「ぐはっ」。
 砂丘にでかけた男が、砂穴に埋もれていく一軒家に閉じ込められるという、奇抜な設定。幻想的でもあるが、人間の描きようが生々しく、現実味がある。そこが背筋が凍りつくような気分にさせられるところ。
 さて、このような設定で、男は一軒家から逃れようと色々努力するわけだが、結末や如何に?わたしは、安易な考えを見事に裏切られて、呆然とした。衝撃的な作品だった。

2■ オマル・ハイヤーム 「ルバイヤート」 岩波文庫

 四行詩。吟遊詩人のうた。
 ちょっと倦怠的でなげやりな気がする。けれど表現が美しくて力強い。かっこいい。四行という簡潔な流れも大好き。わたしの将来の夢(妄想)は吟遊詩人だった。ちょっと本気で。わたしにとってはとにかく魅惑。以下引用。

愚かしい者ども知恵の結晶をもとめては
大空のめぐる中でくさぐさの論を立てた
だが、ついに宇宙の謎には達せず、
しばしたわごとしてやがてねむりこけた!

1■ マルキ・ド・サド 澁澤龍彦 訳 「悪徳の栄え」 河出文庫

 ジュリエットという女が、色々な悪人に逢って、悪女へと成長していく物語。と言うと平たすぎるが、色々な形の悪の哲学が満載。(ていう言い方も安っぽいか。)
 ともかく恐ろしいのだけど、魅力的だなあと心から思ってしまったわたし。危ないなあ。人には言えない愛読書です。

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